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迷貨のご利用は計画的に! ~幼女投資家の現代ダンジョン収益記~  作者: 旅籠文楽
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67. [浮遊]

 


     [3]



 ダンジョンを出て自宅に帰って来ると、時刻は午後2時半になっていた。

 フミと約束しているのは夕方の6時なので、まだあと3時間半ある。

 自宅で何もせずに過ごすには長い時間だけれど。かといって、それほど遠出ができるほどの時間でもない。

 リビングのソファに身体を埋めながら、どう過ごしたものかな――と、スミカはしばし考え込んだ。


 またスーパーへ買い出しに行ってもいいんだけれど……。

 正直、集落人口50人分もの食料を自分で買い込むのは、なかなか大変だから。今後はネット通販で用意するほうが良いかな、とも思っている。

 通販でならインスタント食品などを、遠慮なく何ケースでも纏めて購入できるからね。


(……誰も居ないのかな?)


 耳を澄ましてみるけれど、自宅の中に他の誰かが居そうな気配はない。

 けれどスミカが帰宅したとき、玄関にリゼたちの靴はあったように思う。


(ってことは、みんな地下室(シアタールーム)に居るのかな)


 バンド演奏の練習中なら、邪魔はしないほうが良いだろう。

 最近は居間(リビング)に居ると、大抵は他にも誰かが居て、話相手には事欠かなかったから。こうして一人きりの時間があるのは、なんだか久しぶりのように思えた。


 とりあえず電気ポットでお湯を沸かし、ティーバッグで温かい緑茶だけ淹れて、再びソファに座り直してからスマホを手に取る。

 掃討者ギルドの公式サイトにある掲示板を開き、スレッドの一覧を眺めながら、興味がありそうなものをざっと流し読みすることにした。


 ダンジョンや掃討者の話題はテレビで扱っていることも多いけれど、そういう番組で扱っているのは大衆向けの情報が殆ど。

 なので、実際にダンジョンに入って活動する本免許持ちの掃討者にとって有益な情報は、当事者の口コミ――つまり、公式サイトの掲示板を見るのが一番だ。

 ……と、掃討者としての先輩であるリゼから聞いていた。


 まず、タイトルが目に入った『お金稼ぎにオススメのダンジョン』のスレッドをチェックしてみると。以前にリゼとミサキから話を聞いた、日本銀行ダンジョンが真っ先に候補として挙がっていた。

 やはり現金が直接ドロップするダンジョンというのは大きいんだろう。

 加えて換金性が高い迷宮貨幣もドロップすることもあり、金銭面での利益は話に聞いている以上に大きいようだ。


 ただしスレッドに掲載されている情報によると、日本銀行は国にとって重要な場所ということもあり、ダンジョンに入退場する際の手続きが少し面倒らしい。

 なんでも――施設に入るときにも出るときにも、『石碑の間』まで必ず自衛隊の人が同行して、行動を監視されるんだとか。


 気軽に出入りできないというのは、それだけで抵抗感を覚える理由になる。

 とはいえ、お金を稼ぎやすいという明確な魅力があるから、面倒を差し引いても充分に人気があるダンジョンみたいだけれどね。


 次にスミカが閲覧したのは『スキルジェム取引スレ』というスレッド。

 せっかく〈再生〉のスキルジェムを獲得したので、やはりそれが幾らぐらいの価値を持つアイテムなのかは気になるところだ。


 スレッドによると、スキルジェムの取引相場はその種類によってだいぶ異なり、高価なものだと3000万円とかするらしい。

 特に近接戦闘で役立つスキルは総じて高くなる傾向があって、例えば〈剣術〉や〈盾術〉、〈武器習熟〉や〈回避〉といったものには、2000~3000万円の値がついているようだ。

 他にも〈気配察知〉や〈地図記憶〉、〈罠発見〉のように、ダンジョンの探索を快適にしてくれるスキルにも、けっこう高めの値がついている。

 あとは〈病気耐性〉や〈持久力〉、〈暗視〉、〈嘘看破〉といった、実生活面で利益がありそうなスキルにも、500~2000万円程度の値段がついていた。


 逆に戦闘でも探索でも、そして実生活でも殆ど生きる機会がないスキル――。

 〈採取〉、〈薬品調合〉、〈ゴブリン語〉、〈罠作成〉、〈登攀〉などのスキルはかなり安く、物によっては10万円を切るものさえあった。


 個人的には、ダンジョン内に配置されている採取オーブを利用できる回数が増える〈採取〉スキルなんかは、結構良いと思うんだけれど――。

 たぶん普通の人は、魔物がドロップするアイテムだけですぐにリュックサックや背嚢が一杯になっちゃうから。採取回数が増えても荷物を持ちきれないので、採取をあまり重視していないんだろう。


 また、ジェムの中にはスキルではなく『魔法』や『魔術』を修得できるものもあるようなんだけれど。こちらは【火礫】や【突風】、【暗闇】のように結構実用的に思えるものでも、総じて取引相場は安くなっていた。

 やっぱり、魔法や魔術を使用するためには魔力を消費する――つまり、経験値を消費してしまうっていうのがネックなんだろう。


 ただし一部には例外もあって、怪我を治すことができる【軽傷治療】の魔術や、毒状態を治療する【解毒】の魔法などは、4桁万円の値がついていた。

 緊急時に有益なものなら、経験値の消費を受け入れてでも使う価値があるから、そういう魔術や魔法なら大歓迎ってことなのかな。


 なお、過去のスレッドを含めて検索してみても、スミカが手に入れた『再生』のスキルジェムの情報は全く見当たらなかった。

 まあ……ドロップする魔物が、よりにもよってゾンビだからね。

 好んで狩る掃討者が居ないから、ジェムを発見する人もほぼ居ないんだろう。


「……おっと。調べ物はこのぐらいにしとこ」


 他にも興味があるスレッドは沢山あるけれど、あまりスマホをいじってばかりで時間を消費するものじゃない。

 とりあえず、せっかく暇なんだから掃除でもしようと思い、まずはハタキを手に持ち、棚などの家具に溜まった埃を落としてまわった。


 祝福のレベルアップを経験して以降、幼い児童並みに身長が低くなってしまったスミカにとっては、本来なら棚の高いところには手が届かないんだけれど――。

 実は最近になって、少しだけ浮く(・・)ことができるようになったことで、この問題は解決した。




+----+

[浮遊]/種族異能


 種族が『吸血姫(カルミラ)』の者が一定量の『血晶(ブラディア)』を得ることで

 新たに取得する種族異能。


 翼をはためかせて中空に浮遊し、徒歩と同程度の速さで移動できる。

 一度に浮遊できる時間は『血晶(ブラディア)』の保持量に応じて変化する。


 また、落下する際にも翼がはためき、ゆっくり降下するようになる。


+----+




 現在のスミカが浮いていられるのは、せいぜい10秒間ぐらいだけれど。棚から埃を落とすぐらいの作業なら、何の問題もなくできる。

 能力を使用した後は、地面に足を着けて一息つけば再び浮くことができるようになるので、一度に浮いていられる時間が短くても特に支障は感じない。


 ただ、ちょっと残念なのは――この能力を、あまり普段は活用できないことだ。

 階段や上り坂なんかを移動する時には、間違いなく便利なんだろうけれど……。

 どうしても『浮く』っていうのは、人目を引くからね。


 しかも説明文にはまったく記載がないのに、この能力を活用している間、つまり浮いている間は、スミカの身体全体がぼんやりと光のオーラみたいなものに包まれたような状態になる。

 これがまた、とっても目立つのだ。特に夜間は尋常じゃないぐらい目立つので、なかなか活用することもできない。


 ……小さな女の子が翼をパタパタと動かしながら浮いている場面を見られれば、スマホを向けられて、勝手に撮影されてしまうのが今のご時世だ。

 面倒はなるべく回避したいこともあり、スミカがこの能力を使うのは、せいぜい自宅の中だけに限られていた。


 ちなみに、やってみると自宅の屋根ぐらいなら簡単に登れた。

 屋根から降りる時には『浮く』必要さえない。飛び降りれば自動的に落下速度がゆっくりになるので、そのまま数秒間掛けて安全に着地できる。


 落下で怪我をする危険性がなくなるので、なかなか便利だけれど。残念なのは、この『落下速度がゆっくりになる』効果が発揮している間にも、スミカの身体が光のオーラに包まれてしまうこと。

 チカに手伝って貰いながら検証してみたところ、どうやら40cm程度の高さから落ちるだけでも、発動してしまうことが判った。

 階段を一段とばしに下りるだけでも発動しかねないので、うっかり人前でやらかしてしまわないように、普段から結構気をつけている。


(今の私がバンジージャンプとかやったら、どうなるんだろう……?)


 浮遊能力を活用して棚から埃を落としながら、スミカはそんなことを考える。

 ゆっくりとしか落ちられないから……当然、殆どゴムも伸びないわけで。

 きっと、凄くつまらないアクティビティになるんだろうなと思った。


 埃を落とし終わったら、次に掃除機を掛けていく。

 こちらでも浮遊は積極的に活用する。掃除機のサイズがスミカの身体にとっては大きくて扱いにくいので、ちょっと浮いたほうが楽だからだ。


 自室と共有スペース全部に、軽くだけ掃除機を掛けて終了。

 あまり念入りにはやらない。リゼたちも普段から結構掃除してくれているから、それほど汚れてもいないしね。





 

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