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迷貨のご利用は計画的に! ~幼女投資家の現代ダンジョン収益記~  作者: 旅籠文楽
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62. 重量限界

 


     [1]



〔――スミカ姉様。いま大丈夫でしょうか?〕

〔おっと、大丈夫だよ。どうしたの?〕


 フミから念話が来たのは、ある日の午前中に買い物をしている最中。

 錦糸公園ダンジョンの第4階層に設置した『下位吸血鬼ナイトヴァルプ』の集落、そこに提供する食料を買い込んでいるタイミングでのことだった。


 ここ何日か連続で食料を持ち込んで、集落には既に充分な量の食料が貯蔵されているから、別に今日も買い込む必要は無いんだけれど……。

 意外なことに、住人である下位吸血鬼ナイトヴァルプの人達が、初めて食べたカップ麺やインスタント麺の味に感動して、凄く気に入っちゃったみたいなんだよね。

 なので今後、備蓄食料が結構なスピードで消費されそうな気がするから。日持ちもすることだし、今のうちに大量に買いだめしておこうと思ったのだ。


 ――というわけで今日スミカが来ているのは、業務用のスーパー。

 この手のスーパーは個人で利用できる店も多く、そういう店なら通常のスーパーとは違って、遠慮せず商品を大量購入できる。

 というわけで、店員さんにお願いして裏からカップメンやインスタント麺をダンボール箱ごと幾つか出して貰い、ショッピングカートに積み込んでいる。

 商品単価が安めに設定されているから、箱単位で購入してもそれほど負担にならないのも嬉しいところだ。


〔修行には一定の目処がつきましたし、学校の先生にお願いして期末試験も早めに受けることができました。なので、本日中にそちらへ戻ろうと思うのですが――〕

〔うん、もちろん大歓迎。いつこっちに来て貰っても大丈夫だよ?〕


 スミカの自宅には、今では同居人となったリゼたち4人だけに限らず、フミのための部屋も用意されている。

 なのでいつこちらへ来ても問題なく受け入れ可能だ。もともと部屋は余っているわけだしね。

 リゼたちとは違い、フミからは家賃を受け取っていないけれど。フミとは一緒にダンジョンに潜って頼る機会が多いし、探索で得た迷宮貨幣を優先的に貰ったりしているので、別に良いかなと思っている。


〔ありがとうございます。それで……ですね。スミカ姉様にひとつお願いが〕

〔お? 了解、何をすればいいかな?〕


 内容を聞く前に、スミカは承諾の意を返す。

 珍しくフミからのおねだりなのだ。内容に拘らず、拒否する選択肢など最初から有り得ない。


〔祖父が一度、スミカ姉様に直接会って話したいと言っていまして〕

〔――お、それは是非。私も一度は会っておきたかったんだ〕


 フミのご家族とは、過去に電話で何度もやり取りをしている。

 自宅に娘さんを預かるわけだから、これは当然のことだ。

 滞在先を把握していないと、あちらも不安だろうからね。なのでフミを泊まらせる際には、毎回欠かさず電話で連絡を入れるようにしている。


 その際には先方の自宅電話へ連絡を入れているので、フミのご家族の誰が応対に出るかは毎回異なるんだけれど。

 過去に一度だけフミのお祖父(じい)さんが電話に出て、話したことがあるから。スミカにとって全く知らない相手というわけでもない。


 フミに剣を教えた『師』であるお祖父さんには、多少の興味もある。

 実際に会って話せる機会は、スミカにとっても願ってもないものだ。


〔よろしければ今日、祖父と一緒にそちらへ伺おうと思うのですが。スミカ姉様のご都合はいかがでしょう?〕

〔今日は何の予定も無いから、いつでも大丈夫だよ〕

〔承知しました。祖父に伝えますので、ちょっと待ってくださいね〕


 フミの祖父は『念話』を始めとしたスミカの能力について、既に知っている。

 以前フミから祖父に話しても良いかと訊ねられ、快諾したことがあるからだ。

 そうしないと『投資』の効果でフミの能力が大幅に向上している理由なども、説明ができないからね。

 なので今、スマホも使わずに遠方の相手と話している孫娘の姿を見ても、フミの祖父はそれほど驚いていない筈だ。


〔夕方の6時ぐらいから、一緒に外で飯でもどうか、とのことですが〕

〔私はその時間に、どこに向かえば良いかな?〕

〔えっと……車で迎えに行くそうですので、ご自宅に居てくだされば〕

〔ん、了解。じゃあ18時には家に居るようにするね〕


 それから店内の商品を物色しつつ、フミと久々の雑談を交わす。

 レベルアップによって[知恵]が上がったことで、スミカは複数のことを同時にこなす『マルチタスク』の能力が、以前よりも明らかに向上している。

 そのため、商品の在庫について店員さんに訊ねる会話と並行して、同時にフミと念話で話すようなことも、今では問題なくできるようになっていた。


〔そういえば――そちらに戻り次第、掃討者ギルドで『日本刀』を一振(ひとふり)購入したい考えていますので、よろしければ買い物に付き合って頂けますか〕

〔お、了解。片手剣だと満足できなくなった?〕

〔満足……と言うよりも、単に私の実力不足ですね。祖父や兄は何種類もの武具を当然のように使いこなすのですが、未熟な私ではせいぜい刀ぐらいしか上手く扱うことができなくて……。直剣ですと、スミカ姉様からの『投資』で増やして頂いた能力値を、活かせずに持て余してしまうんです。

 ――っと、すみません。そろそろ念話は切らせて頂きますね。自宅に居る間に、祖父からの指導を1時間でも多く受けておきたいと思います〕

〔頑張ってね。またフミと一緒にダンジョンに潜れるのを楽しみにしてる〕

〔はい。スミカ姉様の敵は全て、私が斬り伏せてみせます〕


 なんとも頼もしい言葉と共に、念話が切れる。

 フミが頑張ってくれているのだから、スミカもちゃんと頑張らないといけない。

 とはいえ、今のスミカにできることは――。


(……うーん。とりあえず、まず私が向き合うべきことは、自分が作った集落の責任をちゃんと取ることだろうなあ)


 聡明なコニーが村長として管理しているのだから、下位吸血鬼ナイトヴァルプの集落は多分、スミカが何も手を出さずとも上手くやるだろう。

 とはいえ作っただけで放置するほど、スミカは薄情な性格をしていない。ましてコニーのように可愛らしい女の子が治める集落なら尚更だ。


 手伝える範囲で、ちゃんと彼らを支援したいと思う。

 まずは――今から購入するこの食料を、今日も持ち込むことからだね。


 レジで会計を済ませて、カートに乗せた商品をサッカー台に移動。

 台の上に積み上げられた、全部で8つもある段ボール箱が一瞬で消滅したのを見て、すぐ近くに居た客がぎょっと目を()いた。

 まあ、驚くのも無理はないよね、とは思う。


 話しかけられても面倒なので、そそくさと店を退散。

 それから更に、ハシゴするように別のスーパーへも立ち寄り、やはり日持ちのするインスタント食品を中心に購入する。

 他にはジュースや冷凍食品なども、幾らか購入したんだけれど――ここで少々、困った事態が起きたりもした。


(……ヤッバい、入らない)


 途中で魔法の鞄の中身が一杯になり、それ以上は物が入らなくなったのだ。

 そういえば、鞄に収納できる荷物の『重量』には制限があったな――と、今更ながらにスミカはそのことを思い出す。




+----+

魔法の鞄/装身具


  永続付与:〔劣化防止〕


 頭の中で収納しようと考えるだけで

 近くにある物品を中に収納することができる魔法の鞄。


 容積は無制限だが、重量は1000kgが上限。

 収納品の重さは鞄自体の重量に影響しない。

 鞄の中に手を入れると収納品の全容を把握できる。


 〔劣化防止〕の永続付与が施されており

 収納されている物品は時間経過の影響を受けない。


+----+




 魔法の鞄に収納すれば重さを感じなくなるし、中に入れている限りは賞味期限を気にする必要もない。

 あまりに便利なので、魔法の鞄にはダンジョンで獲得したアイテムだけでなく、普段の買い物で購入した品々もよく突っ込んだままにしていたんだけれど――。

 それに加えて、集落のために大量購入した品も収納したことで、とうとう重量制限の『1000kg』に達してしまったようだ。


 いま収納されている物品の全容は、鞄の中に手を入れれば感覚的に理解できる。

 一体何がそんなに重量を取っているんだ――と疑問に思いつつ、実際に鞄の中へ右手を突っ込んでみると。頭の中に収納品の一覧が思い浮かんだ。


(……石?)


 スミカが持つ魔法の鞄で、最も重量を圧迫しているアイテムは『石』らしい。

 1個あたり300~500グラム程度の重さの石が、鞄に全部で900個近くも収納されていて。

 つまり――この石だけで実に『360kg』分もの重量枠を消費していた。


(石なんて、鞄に入れてたっけなあ……?)


 思わずスミカは、その場で暫し首を傾げてしまうが。

 たっぷり1分ほど沈思黙考して――ハッと、ようやく思い当たる記憶があった。


(ああ――。もしかしてコレ、ゴブリンが投げてきてた『石』かあ……)


 以前、フミと一緒に新宿の東京都庁第一本庁舎ダンジョンに潜った際に、そこに棲息していたゴブリンの一部が投石攻撃を仕掛けてきたのを覚えている。

 その投石を防ぐのに、魔法の鞄はとても役立ったんだけれど――。

 そういえば……確かに、あの時に回収した『石』を処分していない気がする。


(ここが河原とかなら、この場で石を捨てて、重量に空きを作れるけれど……)


 生憎と今はスーパーマーケットの店内。

 それも、会計を済ませたあとに利用するサッカー台のところだ。

 不要な石を処分したいとはいえ、まさかこの場所に捨て置くわけにもいかない。


(とりあえずレジ袋を買って、それに入れようかな……?)


 幸い、こちらのスーパーではそれほど大量買いしたわけではないので、魔法の鞄に入り切らなかった荷物はスミカが両手で持てる程度の量。

 荷台のないクロスバイクで運ぶには、ちょっとつらい量だけれど。まあ、両腕から吊り下げるとかすれば、運べなくはなさそうだ。


 そこまで考えて――スミカは思わず、ハッとする。

 少し前に、新しい『投資』の能力を得ていたことを思い出したからだ。




+----+

《個物投資》/異能


 自身が所有する、またはまだ誰にも所有されていない

 物体を『投資対象』として登録可能になる。


 『迷貨』を投資して対象物の性能を強化すると共に

 ランダムな効果から1つ選択して永続付与する。


 あなたは当該物体の永続的な所有権を獲得して

 望めばいつでも手元に呼び出すことが可能となる。


+----+




 ――その能力の名前は《個物投資》。

 物体を対象に投資を行い、その性能を強化するというものだ。


 魔法の鞄に対して《個物投資》を行えば、その性能を強化することができる筈。

 即ち、鞄に収納できる容量も増やすことができるんじゃないかと――そうスミカは考えたわけだ。


(ま、ダメ元でやってみよう)


 まだ使ったことがない能力なので、その詳細はスミカも把握していない。

 だったら、ここは試しにやってみるべきだろう。





 

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― 新着の感想 ―
待ってた。 あと、お身体を壊していないか心配でした…
わーい!おかえりなさい! 凄く好きな作品だったので続きが読めるのが楽しみです…!!
おかえりなさい エタらなくてよかったです
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