カーテン
カーテンを閉める。シャッと音を立てて勢いよく閉めるのが好きだ。私がいる部屋以外の世界を自分から捨て去った気になって優越感にしたれるからだ。
私は友人、知人、赤の他人が当たり前のように生活しているこの世界が、どうにも好きになれない。
だからといって、誰とも関わらずに生きていくことは出来ない。
このカーテンを閉める音は唯一私が、世界を捨てれる音なのだ。
「疲れた」
場の空気を読み、笑顔を振り撒く仮面を捨て、声に出た一言めの本音がこれだ。
ソファーに独裁者のごとく腰を降ろし、足を組んで鍵をかけたドアを見る。
この私しか出入りしないドアの先には一体どんな未来がまっているのだろう。などと、無駄な哲学じみた事を考えてしまう。
やめよう時間の無駄だ。生産的な事をしよう。時間は有限だ。
恋愛ドラマのように運命的な出会い、復讐映画のような凄惨なことなど私の身には起こらないのだから。