科学捜査に頼らないシンデレラ
シンデレラが居ました。
継母と意地悪な姉達が居ました。
そして舞踏会の日になりました。
「私も舞踏会に行きたいわー(棒)」
すると、魔法使いが現れました。
「なんと可哀想なシンデレラ。私の魔法で舞踏会へ連れて行ってあげよう」
シルクのドレスに眩い宝石、そして頭はペガサス昇天盛り。ガラスの靴を履いたらフィニッシュです。
レンタルのカボチャの馬車でお城へと向かうとシンデレラは、ばちこーんと衛兵にアイコンタクトをかましました。
「ここへ御名前を」
「シンデ……おっと、適当にヘレンにしておきましょう」
騒ぎを避けたいシンデレラは偽名で舞踏会へと参加しました。
「酒が旨い!」
「肉が柔らかい!」
恥も外聞も前世から引き継げなかったシンデレラは、周囲からの視線も気にせずひたすらに食べまくりました。
「踊ってプリーズ」
そこへ、白ストッキングの王子が現れました。シンデレラのペガサス昇天盛りが功を奏したのです。
「是非もなし」
シンデレラはサーターアンダギーを口に頬張ったまま、王子と踊りました。
しかし、時が過ぎるのはあっと言う間で、十二時を告げる金が鳴り始めると、シンデレラは慌てて走り出しました。
「レンタル馬車の延滞金を取られてしまうわ!」
「待ってプリーズ!」
王子が引き留めるも、シンデレラは逃げの一手。ガラスの靴だけを残して颯爽と消えてしまいました。
「爺!」
白ストッキングが傍に控えていた召使いを呼びました。
「捜査一課に連絡。このガラスの靴から指紋とDNAを採取してあの女性が誰かを突き止めよ」
「それには及びませぬ」
召使いが嬉しそうに笑いました。
「むむ? 何故だ?」
「ほら、こちらに……」
召使いがガラスの靴のかかとを指差しました。
「ハハハ、これはありがたい」
かかと部分には、油性のマジックで『一年三組 しんでれら』と書かれておりました。
翌日、シンデレラの家にサーターアンダギーを馬車一杯に詰めた王子が現れ、二人は幸せに暮らしましたとさ。