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3話 ピアノのレッスン

 「まずは、先生がお手本を見せるから、それを真似してみてね。」


 そう言って、先生はド・レ・ミ・ファ・ソ・ラ・シ・ド とゆっくり右手で弾いた。


 俺も真似て、親指をドの位置にセットして弾き始めた。

 そうしたら、ソの音を鳴らしたときに次の音を弾く指がなくなってしまった。


 どうしたものかと考えていると、先生が教えてれた。

「そういう時は、ミの音を弾いた後に親指をファの位置に移動させると上手くいくよ。」


 俺は先生に言われた通りやってみたら、今度は全ての音を弾くことが出来た。


「そうよ。いい感じ。」


 そう先生に褒めてもらいながら、何度か同じことを繰り返している時だった。

 突然頭の中に無機質な声が響いた。


【スキル<超絶技巧>を取得しました。】

【また、職業<ピアニスト>を取得、それに伴い基礎能力のDEX、 INTが上がり易くなります。】


 おおーー!ついにステータスに変化があった!


 俺は心の中で歓喜した。


 今、ピアノをやっていたから、それに関するスキルと職業を取得できた様だが、まだピアノを弾き始めて5分ほどしか経っていなかった。


「俺のステータス規格外すぎだろ......」


「ん?どうかした?」


「いえ、なんでもないです。」


「そう、それじゃ、今度は今やっているのを少し早く弾いてみましょう。」


 そう言って先生はお手本として少し早い速度で弾いた。

 正直、スキルを得る前だったら、結構苦労しただろう。

 しかし、今では<超絶技巧>があるので全く苦にならなかった。

 しかも、音もさっきまでとは比べものにならない程綺麗に鳴っているし、その音量も全て均等になった。


 先生は目を見開いて驚いていた。


「蒼くんすごいよ!急に別人みたいに上手くなっているよ!もしかして、ピアノやってた?」


「いえ、今日初めてピアノに触りました。」


 先生はその返答を受けて、更に驚いていた。


「うそっ!じゃあとんでもない才能だよ。だいたい、ピアノをやった事もない人で更に小学生一年生ともなれば、指の筋肉が発達していないから一音一音をハッキリ出すことはすごく難しい事なんだよ。」


「そうなんですか...... でも出来ちゃいましたし、他にもいろんなことやってみたいです。」


「そうだね、本来だったら今日はここまでの予定だったんだけど、蒼くんはあまりにもあっさり出来ちゃったから時間は余ってるしやろうか。」


 そう言って先生は楽譜がびっしり入ってる棚から一冊の本を取り出して、ピアノの譜面台にひろげた。


「これは本来中学生ぐらいの人が指の練習に使うんだけど、蒼くんだったら出来そうだしやっちゃおう!」


 いや、無理だろー! 

 俺は内心そう思ったが、挑戦する前に諦めるのはまた前世みたいになってしまいそうで、嫌だったので、頑張ってやることにした。


 しかし、先生のお手本をみて今更ながら気づいてしまった。

 それはさっきは片手だったけど、今度は両手だということだ。

 しかも、楽譜を見たところで読めない。

 完全に詰んだ......

 しかし、なんとか先生が弾いてるところを見て覚えようと頑張った、あと少しで何か掴めそうなところで先生のお手本は終わってしまった。

「こんな感じだけど、ちょっとやってみて。」


 そう先生に言われてしまえば、やるしかない。


 仕方なく、俺は弾き始めたが、やっぱり覚えきれておらず、途中で止まってしまった。

 俺は少しがっかりして、先生にもう一度弾いてもらおうと思っていると、先生が驚きに満ちた表情で聞いてきた。


「蒼くんはさっきの私の弾いているところを見ただけで、そんなに弾けてしまったの?」


「はい、全部は覚えてられませんでしたけど...... けど、もう一度お手本をみせもらえばできるようになると思います。」


 先生は本当に驚いた顔をしてまた弾いてくれた。


 俺はそれを一音も漏らさないよう、集中して見ているとまた、頭の中に無機質な声が響いた。


【スキル<耳コピ>を習得しました。】

 よっし!

 俺は内心ガッツポーズをした。


 そして、先生が弾き終わると俺は先生が弾いたのと全く同じように弾いて見せた。


「本当に出来ちゃうなんて...... 天才だわ......」


 先生はそう言って、しばらく動かなくなってしまった。



 ****


 私は今の目の前の状況を理解できず、思考がフリーズしてしまった。


 私は家の一室、約二十畳程の広さの場所にピアノを置きピアノ教室をしている。


 そんな私にピアノを習いたいと言う小学一年生の美少年の蒼くんとそのお母さんが今日やって来た。


 そして、あらかたの説明をし終え、早速ピアノのレッスンを始めた。

 レッスンといっても、小学一年生の初心者なので、少しピアノに触ってもらって、ピアノに慣れてもらうことが目的だった。


 だから、私は最初、ドレミファソラシド、とゆっくり弾いて真似てもらう事をした。


 蒼くんは最初、指の切り替えが上手く出来ず止まってしまい、私が教えてやっと弾き終えることが出来た。


 それは、あまりに弱々しく、リズムもつっかえつっかえで初心者相応のものだった、


 しかし、それは、僅か5分間のうちに劇的に変化した。


 急激に上手くなったのだ。


 それは上手くなったなんて、生やさしいものではなく、まるで別人が弾いてるようであった。


 音はさっきとは、比べ物にならないくらい、クリアになり、指づかいも完璧であった。


 ほんの数分前初めてピアノに触った者が、ピアノを10年ぐらいやっている者の様な音を出すのだ。


 それは本当に驚愕の一言だった。


 しかし、彼はそれだけではなく、私が試しに中学生レベルの指の運動の楽譜を出して弾いてみると、たった二回私の演奏を聴いただけで、私と全く同じように弾いてしまった。


 彼の言葉を信じれば、今日初めてピアノを弾いたはずだから、楽譜はもちろん読めないはずだ。

 と言うことは、私の指の動きを見て覚えたか、耳でコピーしたかのどちらかしかない。


 どちらも、今日初めてピアノを始めた人がすることではない。


「はぁ......」

 私は大きなため息を吐いた。


 彼には私の常識は通用しない。


「居るんだなぁ、本当の天才って」


 そんな一人言を言って、今日のレッスンはお終いと彼に伝えた。



 こんなことはまだ序の口だと言うことを彼女、清水久美子はまだ知らなっかた。

 こうして、蒼のピアニスト?としての6年間が幕を上げた。


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― 新着の感想 ―
[良い点] ばんのう [一言] ステータスボードによる改善のテストケースであるならば、 顔面補正はないほうが良かったかな。と思いました。
[一言] ステータス関連の表記は「」ではなく【】など別表記の方が良いかと。
[一言] 才能の差に絶望した主人公が、今度は自分が才能の差を見せつけて他人を絶望させて、絶望した人が自殺して、その自殺した人に女神がスキルをあたえて、別の人がまた絶望する悪循環になりそう
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