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夏休み。


7月半ば。

私はこの日を待っていた。

私は今日から夏休みに突入するのだ。


涼しい部屋で好きなだけ寝て、漫画にテレビ、美味しいおやつ。

出された課題を消化して、勉強も何となくやれば良い。去年はオープンキャンパスに行ったけど、今年は行かない。


大学にしても、専門学校にしても行けるところに行けばいい。ちょっとでも興味が持てるところを受験して入学しちゃえばいい話なんだ。世の中本当に少子化で重宝されている。中には受験して入学を決めればテーマパークチケットプレゼントなんて学校もある。世の中チョロい。


就職先だって若さで何とかなる。定年が増えれば補充しないわけにはいかないんだから。そこそこの企業に就職して、そこそこの彼氏を見つけて結婚して、子供を産んで家庭を作る。型にはまったような生活だけど、結局それが1番幸せなんだ。


高2の夏休みに気が付いて高3の夏休みはだらけようと心に決めていた。



パパもママも大好きで充分愛情を貰ってる。おじいちゃん、おばあちゃんも元気で家はぬくぬくの愛情に満ちていてこんな幸せな場所に1ヶ月ちょっとも籠もれるなんて最高。


暑さでダラダラと家で過ごし、時間になれば食事が出て片付けもやってもらえて、テレビもエアコンもおじいちゃん、おばあちゃんの部屋で使い放題、見放題。おやつ付きなセレブリティな夏休みを謳歌している私の元にチラシを持ってママがやって来た。


「結衣ったらいつもここにいるのね。まぁ、涼しくて快適だけど。せっかくのお休みなんだしママとちょっと出掛けない?すぐ近くにステキな雑貨屋さん見付けたのよ。アンティーク雑貨を扱うお店なんだけどね、とても可愛いの。ずっと営業してたみたいなんだけど、ママ全然知らなかったのよ。お散歩していて偶然見つけたの。あんまり可愛いから結衣に見せようと思ってチラシ貰って来ちゃった。」


「へぇっ。」


「へえっじゃなくて。これ見て。チラシ。」


ママが持ってきたA4サイズのチラシには、白い洋風の建物にセンス良くアンティーク雑貨が並んでいるお洒落なお店がプリントされていた。ガリガリとスティックアイスを齧りながらチラシをチェックする。端っこに小さく写っていたスタッフ写真に目を奪われる。栗色のサラサラとしたショートヘアの女性が丸々とした猫を抱いた写真。凜とした佇まいが素敵だった。お店も素敵だと思ったけど、写真の女性を生で見てみたい衝動に駆られた。


「行きたいかも。」


気付いたらひとつ返事で答えていた。


「じゃぁ、今から行こうか?ちょうどママも暇だし、結衣もここでゴロゴロしてるのもいい加減飽きたでしょう?」


「いや、全然。むしろ今日は嫌だなぁ。夏休み初日だしどこにも行きたくない。歩く心の準備も出来てないし明日にしよう。」


「もう、全くこの子は。だらけすぎよ。ちょっとシャンとして頂戴。明日行かないならもうママは一緒に行かないからね。」


「はいはい。明日ね、ママ。」


適当にあしらってママを部屋から追い出した。ゴロリと転がるとおばあちゃんと目が合って「結衣ちゃん、お饅頭食べる?」と声を掛けてくれる。傍らにはニコニコとしたおじいちゃんの笑顔。癒やされる。もうっ、夏休み最高。


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