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もやして  作者: 七伏祇園
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記憶

今のところの投稿作品全て15禁たから、15禁にならないホラーを書こうと思った。





――15禁になった。

 5月19日。


 悪いことをした覚えは無いけど、お母さんに首を絞められた。私は良い子にしてたつもりなのに、お母さんは泣きながら、何かをきゃんきゃんと叫んでいた。


 ねぇ、やめてよお母さん。苦しいよ。死んじゃうよ。


 どうしたのお母さん。いつもはあんな優しいのに。最近、お父さんが全然帰ってこないのが理由なの?




 5月20日。


 朝目が覚めたら、私はどうしてかゴミ捨て場で寝ちゃってたみたい。なんでこんなところで寝てたのか覚えてないけど、お外はすごく寒い。知ってる場所だから、歩いてお家に帰った。


 夕方。スーパーのお仕事からお母さんが戻ってきたから、私はいつも通り「おかえりなさい」をした。ちゃんと挨拶出来たと思うんだけど、お母さんはすごく怒った。


 なんで、どうして、どうしてあなたが、どうして、なんで。そんな感じのことを呟きなから、怖い目で私をぶった。何回もぶった。


 痛い。痛いよ。でもきっと、お仕事でイライラしてたんだ。この間もそうだ。だから私が我慢しないと。お母さんのために我慢しないと。お母さんには私が必要だ。




 5月25日。


 気が着いたら、山の中で寝転がっていた。遊びに来て疲れて寝ちゃったのかもしれないけど、遊び過ぎたからか、遊んだ記憶が無い。


 でも、こんなところで寝てたらお母さんに怒られちゃう。お洋服もボロボロになっちゃった。変なところで寝たからか身体中が痛いけど、急いで帰らないと。


 家に着いたのは夕方になっちゃった。お母さんに怒られちゃう。


 やっぱり怒られた。お母さんは泣きながら私をぶった。色んなものを使って殴った。何回も何回も何回もぶった。やめて、やめてよ、痛いよ。痛いよ。


 危ないところに出掛けてたからか、お母さんは最後に、私の手足をヒモで縛った。




 5月29日。


 海に居た。


 最近お母さんが私を苛めるから、嫌になって逃げたのかもしれない。わかんない。覚えてない。でも帰らなきゃと思った。寒かった。風邪曳いちゃう。助けてお母さん。助けて。たすけて。


 助けてくれなかった。寒いのに。風邪曳きそうなのに。


 帰ると夜になってて、お家に着いたらお母さんがお家でお手紙を書いてて、私を見たら急に高い声を出して、とても怖い目をして、私に「来ないで」と言った。


 でも私、お薬が欲しいの。抱きしめて温めて欲しいの。助けて欲しいの。だから何回も助けてって言いながらお母さんに近付いたら、お母さんは私を切った。


 近くにあったハサミで私を刺して、リンゴとか切ってるナイフで私を切って、最後にお肉の包丁で何回も私を刺した。


 痛い。痛いよ。死んじゃうよ。やめて、助けて。




 7月10日。


 どこに居るのかわかんなかった。目を開けてもなにも見えなくて、自分が色んなところに居るみたいな気がした。


 だけど、お家に帰らなきゃと思った。身体中が痛いけど、なんも見えないけど、すごく寒いけど、お母さんの声がすごく遠くから聞こえたから。お母さんの匂いがとても遠くからしたから。お母さんのところに行かなきゃと思った。


 お家に着いた時にはお外は真っ暗で、お母さんはお布団も敷かずに眠っていた。寒そうに自分の身体を抱きしめて。


 暖めなきゃと思った。


 私は火を焚いて、お母さんを暖めた。私も暖まった。


 すごく暖かかった。


 私はその火に囲まれて、とても久しぶりに、ほんとうに久しぶりに眠った。




 次は、お母さん視点です。

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