表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
文学少女と数学少年は交じり合わない  作者: 狗尾草
第3章 数学少年は嘆息する
17/40

第17話

 火曜日の放課後、部室にはジャージ姿にマスクをつけた俺と江戸原琉歌の姿があった。昨日の放課後石谷先生に言い渡された部室の掃除をするためである。埃などで制服が汚れたり、口から吸い込んだりするのを防ぐのが目的である。

 

 それにしても、学校のジャージというのは何故こんなにも格好悪いのだろうか。その色が余計に格好悪さを引き立たせている。八咫高校では、学年ごとにカラーが決まられている。紺、赤、緑の三色があり、ネクタイや校章、シューズの色で学年が判断できる。

 3年間そのカラーで過ごし、卒業生のカラーが次の新入生に引き継がれるシステムである。3年が紺、2年が赤、1年が緑であった翌年は、3年と2年は前年のまま赤と緑、1年が紺のカラーになるという具合である。


 俺たちの学年は見事に一番不人気の緑の学年にあたった。全身緑色のジャージは、どんな美男美女が身に付けたとしても、お世辞にも格好良いと言えない可哀そうな奴である。ジャージが可哀そうなのか、それを着せられる生徒が可哀そうなのか。

 そんな不格好なジャージを全身にまとい、その上マスクをしているものだから、傍目には不審者にしか見えないであろう出で立ちである。隣には眼鏡なしバージョンの江戸原琉歌が立っている。あの不気味な口角の笑みが見えない分、怖さが半減している気もする。


「そろそろ始めるか」

「そうですね」

 声をかけると、江戸原琉歌は心底嫌だと言わんばかりの雰囲気を隠そうともせずに答えた。本が好きなら進んで取り組んでもらいたいものだ。掃除と言っても、おそらく大半が本の整頓になるだろうから。


 本棚から溢れた本を片付けるため、空き教室に放置されていた本棚を2台運んできた。1人で運べる大きさではなかったため、運ぶのは斉藤先生に手伝ってもらった。運び終わったら、職員会議があるからと斉藤先生はすぐにいなくなってしまった。

 これ以上本棚が増えるのには抵抗もあったが、他に置いておく教室もなければ、あったとしても運ぶ気など起きるはずもないため、部室が圧迫されるのは我慢することにした。どうせ2人しか部員もいないため、広いスペースは必要ないだろう。


 俺と江戸原琉歌は会話を交わすこともなく、黙々と本を棚へと運んでいく。本1冊ならば何でもないのだが、何百冊となると結構重労働であることに気付く。しかも、江戸原琉歌は気になった本をその場で読んだりするため、その結果俺の作業量が増えてしまっている。おい、仕事しろよ。後で読め、後で。


「江戸原さん、先に運んでもらえ――」

「読書中」

 掃除を促そうとすると、江戸原琉歌はその言葉を遮り、俺のことをきっと睨みつけ短く言った。そして、また手元の本に視線を戻したのだった。読書を邪魔すると普段の5割増し程で威圧するらしい。何この人、超怖いわ。


 働かない江戸原琉歌に内心で文句を言いながら、せっせと掃除を続ける。優しいから読書させてあげているのだ。決して江戸原琉歌が怖くて注意できない訳ではない。あ、あんな睨み全く怖くないし。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ