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 流れる曲を真似て鼻歌交じりに口遊む。

 街中を歩く足取りは軽い。

 浮かれすぎて時々足を縺れさせながら踏むスキップを揶揄われつつ、グラスの酒を零さないように渡り歩く。

 キラキラと輝くあちらこちらに装飾された灯りは、眩しいばかりでなく目を楽しませる。

 すれ違うやつらと挨拶代りに杯を交わした。

 あー、ホント楽しいな。

 ぐいっとグラスの中身を空にすれば、すかさず誰かが新しい酒で満たしてくれる。

 もちろんこちらも相手のカップを持参の酒でなみなみと注ぎ返し、幾度目かもわからない乾杯をした。

 当然美味い方が嬉しいが、当たり外れも関係無しに振る舞われるのに文句は付けても怒りはない。

 笑顔と笑い声の絶えない国。

 気のいい奴らと気前よく出される酒やつまみに舌鼓を打ち、曲に合わせて手拍子を打った。

 会話という会話はない。

 どちらかと言えば掛け声のような掛け合い。

 単語になるのは何で造られた酒だとか、そういうのだけ。

「最近どうだ?」なんてちゃんとしたように見せかけて「イイのができたよ」だとか「失敗したけどキライじゃない」だとか、やっぱり酒の話で。

 たまに「キレイなのできたよ」なんて言われて覗きこめば、これでもかと細かな彩色装飾の織物を次々見せられた。

 心のままに褒めれば持って帰れよとばかりに放り投げてくる。

 そりゃあ、もらえるもんはもらうさ。

 返せるもんは酒しかないが、そこはどれも俺の自信作だ。

 使い魔に一声かければ、それに見合った瓶を一本倉庫から取ってきてくれるしな。

 騒がしいとは違う優しい賑わい。

 何処か空っぽの頭で、浮き立つ心のままに酒が好きな奴らと酒を飲み、酒の話をする。

 そう言えば最近、酒の話をする相手が増えたように思う。

 酒盛り仲間の奴らとはしないわけではないが、突っ込んだ話はあまりしない。

 そこから言えば、紫紺の魔王さまは世界中の酒や造詣に詳しい。

 古今東西の、それも何処からどうやって手に入れたんだと驚愕するばかりの代物をとりそろえていた。

 まー、教えてもらったところで真似なんかできっこないだろうから、聞く気はないんだけどさ。

 俺が自作の酒に使い魔の印を付ける前から彼は俺の酒を知っていたし。

 そうだな。情報収集も趣味なんだろうな。

 でも仲間内以外で知ってる、知られてるってのは嬉しい。

 話が合って、この間は助言までして貰えた。

 これはアレだ。得難い友人ってヤツだ。……あー、魔王様を「友人」扱いしても大丈夫かな? 良いよな? 多分。

 っていうか、この星の眷属たちの国のヤツらと同じく良いヒト運に恵まれたよな。ホント、ツイてる。

 しみじみそんなことを考えながらグラスを傾けようとして、通の向こうからやってきた奴に片手をひらひらさせたら親し気に肩をポンと叩かれた。

 こう言っては何だが、此処の奴らは見分けがつかないほどに通っていて、実はどれが誰だかさっぱりだ。

 今のところ例外はりょーしゅ様と、蜜酒のお(ひぃ)さんくらいか。

 名乗っても来ない。

 彼らはそんなことすら気にしない大らかな種族なのだろう。

 気安い雰囲気でへらりと笑いながら彼が口を開く。

「何そんなニヤニヤしてんのー? ダラシない顔してるよー」

 慌てて顔を触って確かめれば、頭の上の黒い相棒がいつものことだというような態度で鼻をふんっと鳴らしてきた。

 お前もうちょっと俺に優しくしろよ。

 不貞腐れつつ差し出された小さなカップに酒を注いでやっていれば、何故だかさらに周りに笑われた。

 嫌な笑い方ではなかったから、まぁ、いいか。


「ここのヤツらって良いヤツらだよなー」


 なんてぽろりと当たり前すぎる台詞を吐いてしまったせいか、相手にキョトンとされてしまった。

 小っ恥ずかしくなって「なんでもない」と誤魔化せば、またさらに笑われ。

 まー、もうホント。いいや。

 頭をガリガリ掻きまわして一緒に笑った。

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