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 地下。保存庫の規則性もへったくれもなく置かれた荷物の間を抜け奥の棚へ進む。

 中に灯りはない。

 おかしなモノやヤバいモノを置いているつもりはないが、軽微に危険物がないわけじゃない。

 開いた扉から入る光だけでは薄暗く、使い魔に声をかければその本体と同じくらいの大きさの光を吐き出し主の手元を照らした。

 魔法で時を止められた部屋に埃が積もることはない。

 掃除をしなくていいのは便利だと思う。

 そう言えば空気はどうなるのだろうか。淀んだりしないのだろうか。

 大きく息を吸ってみる。匂いはなかった。

 ……最近こういった事が気になるのは知りたがりの友人ができたからだろうか。

 思わず漏れた笑いに付いて来た子供が首を傾げるのに何でもないと軽く手を横に振った。

「あー、これこれ」

 手に取った何の変哲もない箱の真ん中にある留め金をかちりと外し、パカリと蓋を開ける。

 蝶番でつながったそれは手を放しても下に落ちることはない。

「お嬢、触るなよ」

 横から箱の中を覗きこむ子供に声をかける。

 中には拳ほどの石ころが一つ。赤く光ってはいるが眩しいほどではない。

 が、思ったより暗い。

 手を翳せば温かさに触れたような気がする。

 んー、まだ一回くらいは使えそうか?

 完全に魔力が抜けていれば真っ黒なになるそのごつごつした石は火炎石と呼ばれるもので、魔石の一つだ。

 火山口に行けばごろごろ転がっていて簡単に拾えるから比較的に一般的で冒険者なら大体持っている。

 一番最初は普通に拾って来たものだったが、手ごろで使いやすい大きさだったせいか本来なら使い捨てるところを何度も魔力を継ぎ足してもらいながら使い続けている。

 今回が終ったらトリスか、それとも火山の主にでも頼むか。

 ……いや。やっぱり先に魔力を込め直してもらう方が良いだろう。

 途中で切れられたら面倒だし。

 この前の酒盛りの時にでも新しいのをもらっておけばよかったなんて、これも後の祭りってやつだな。

 トリスに魔力を込めてもらうのはいささか危険である。

 必要以上に入れられると石が壊れたり、発する熱が高くなりすぎる。

 あれに使うのに温度が高くなりすぎるのは困る。

 実際のところはそんなことはないのかもしれないが、彼の使ういつもの過度な威力の魔法を見ているとどうしてもそういう疑念が拭えない。

 火炎石を眺めながら無意識にがりがりと頭を掻き回し、箱の蓋をぱたんと閉じた。

「フォシャンに頼んできてくれ」

 確実な方が良いかと火山の主に託すことに決めた。

 留め金を嵌め、目の前に掲げてみせると黒い毛玉が棒のような足でガシリと掴んで扉に向かって飛んでいく。

 ふらり、ふらりと気だるげに飛ぶその姿は何を持たせても変わらない。

 箱の表面はつるりとしているのに危なげなく運ぶ。中身の詰まった大樽でも同じと来れば。

 アイツ、持てないものはないよな。俺のことだって浮かせられるわけだし。

 この間の首が締まりかけたのを思い出してふるりと首を振った。

 あれはないよな。せめて、もっとこう。

 と、そこまで考えて閃いた。

 そうだ。今度海を越える時はあいつに運んでもらうってのはどうだろう。

 流石に襟首やらベルトやら捕まえられて運ばれるのはどうにもつらい。

 何かいい方法はないかな。

 頤を右手で撫でつつ部屋を出た。

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