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「お前のもそろそろ新調した方が良いぞ」

 寝室で今あるベッドをちらっと見て家具職人が言った。


 星の眷属たちの街を後に職人カップルの住居を尋ねた。

 ベッドを注文した家具職人が最初、寝台が欲しいのだと言うと買い替えと勘違いされたのは。まー。仕方のない話だよな。

 同居人の話してなかったし。

 冬の間は一緒に寝てもいいんだけどと話をすると、細工職人に雷を落とされそうになった。

 何故だろう。小さな黒い相棒にも微妙なオーラで羽根を竦められた。

 相手が女の子であることが問題らしい。効率的ってやつだと思ったんだけどなぁ。

 よくわからないが、こういうのは逆らわない方が良い。

 頭をガリガリと掻きまわして溜息を吐けば、家具職人の男に同意するような苦笑いを寄越された。

 もちろん奴も言葉に出すような愚は犯さない。

 その子供の為に寝室に二台目を入れるのだと言えば、部屋の広さを確認するというので俺が家に帰るのに合わせてついて来た。小さな簡易ベッドを持参で。

 白虎の背に揺られて思ったより早く帰り着いたころ、雪がちらほらと降り始めていた。

 今年の冬は早いようだ。

 家具職人を温かい部屋に引き入れ、ほっと一息吐いた。



 ベッドの大きさを量っている最中に、今一番の最新地図だというものを片手に天空の島がどの方角からどう行くのか教えてほしいと訪れたのは、自称魔法使いの男。

 暑かろうが寒かろうが、気になることにはまっすぐな奴だなと、頭にうっすら積もった雪を眺める。

 いやホント、すげーなぁ。二、三十年の範囲なら十分新しいって言えるのに、つい最近のものを態々手に入れてくるとか。

 それもものすごく精巧そうなもの(海岸線や街道が妙に曲がって見えるのがリアルな証拠らしい)でリビングのテーブルの上に広げても場所が足りないとか、ちょっと大きすぎるだろ。

 おかげでどこが何処にあるのか逆にわかりにくい。

 世界地図って言うのは初めて見るし。

 それにどの方角かと聞かれても普段から上空を地図と照らし合わせるような真似をしないから、正直さっぱりわからん。

 大体の位置を指を天井に向け指示して軌道を描く。と、その指先を使い魔に掴まれ修正された。

 それを見た自称魔法使いがスケールを使い地図にラインを引いた。

 おー、もしかしてそこが俺の森か。

「天空人か。それだけ高いところに住んでいるから、神として崇めている奴らもいるらしいな」

 壁に凭れかかって立つ家具職人ことラウレスが組んだ腕を片方だけ解き、自身の頤に手を触れさせながら言った。

「神様ねぇ。そんなもん居るもんかな」

「どうだろうな。実際に信仰の果てに使える魔法があることを思えば、何かしら大いなる意志みたいなものが居る可能性はある」

 特に返事を期待せずに発した言葉に魔法使いが律儀に返してくる。

「精霊じゃなく?」

「別次元の魔法でなければ神とは言えないだろう。魔法陣や契約が交わせれば使えるものなら、普通に誰にでもできるのだから。……そうだな。ドラゴンの、竜王クラスなら多少は。いや。どうだろう。……もしかすると」

 口籠るようにぶつぶつと言い出したことでいつものスイッチが入ったことに気付く。

「そう言えばヒドラもドラゴンらしいな」

 周りが見えなくなるのは職人にはありがちなことだが、とりあえず気を逸らそうと口を開いたのだが。

「……人によって幻獣は一纏めにドラゴンと呼ぶことがある。そもそも幻獣の定義も未知の生物を十把一からげにしているようなものだからあまり当てにはならない」

 あー、やばい。今度は説明好きのスイッチが入ったなこりゃ。

 自分で話を振っておいてなんだが、こんなつもりじゃなかった。

 これは何を言っても何かしら突いてしまいそうだと面倒くさくなって、ソファーに深く腰をかけ聞き流す体勢に入った。

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