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その日は朝から快晴で、薄い水色の空には薄い雲の欠片すらなかった。
まずは街道を南下し、海岸線に向かう。
鼻歌を奏でながら進む足取りは軽い。
自分で言うのもなんだが、あまり鬱屈とした気分が長続きするような性格じゃない。
悩むのも苦手。
おかげで。まぁ、時々。
「子供みたいですね」
彼女のように笑われてしまうわけだが。からかうような笑みではないから、気にはならない。
ジャケットのポケットに手を入れたまま、水溜りを飛び越えるように跳ね歩いていれば、上から使い魔がふわりと頭の上に乗ってきた。それも、たしたしと片足で軽く蹴るようにしてくる。
これはアレだ、はしゃぎ過ぎるなって合図だな。
「あー、はいはい」
適当に返事をして振り返れば彼女との距離が離れていた。さっきのはこちらがメインだったようだ。
頭の上に腕を伸ばし、奴の上に手を乗せようとしたが察知したのか、それとも気付いたことに満足したのか。サッサと飛び上がって捕まえることができなかった。
こんにゃろ。と見上げれば、今気付いたと言わんばかりにきょとんと目を見開きふらり、ひらり目の前を飛ぶ。
それから片足を軸にくるりくるりまわるところをみると、こいつ分かってて飛んだな。
「っと、アシェイリー」
追いついてきた彼女に一言詫びを入れ、今度はちゃんと並んで歩き始めた。
翌日に出ることなった為に砂の娘を客間兼リビングに泊めることにした。
とにかく、飲み会に出かけるのは構わないんだが、さて、どうするかな。
二つ返事で了承したけれど、そういや、今うちには同居人がいるんだった。
あんまり外に出たがらない節はあるが、人見知りなわけじゃない。氷たちや砂んとこ娘にだってちゃんと物おじせずに挨拶してたしな。
問題は酒盛りってことだよな。
……さすがに子供をそういう場に連れて行くのは、ちょっとなぁ。
星の眷属たちの祭りだってその場のノリでからんでくることがあるから、子供には良いとは言い難い。そもそも、あの国に子供はいるのか? そう言えば見たこと無いな。生まれた時から「大人」という種族なのか、それとも期間が物凄く短いのか。今度行ったら聞いてみよう。
まー、酒に負けたり、悪酔いとかはしそうにないよな。そういう意味で危険はない。
朝になればとりあえず一旦は終るし。
どっちかって言うと、そういう意味では俺らの集まりは、喧騒といった雰囲気で。
荒くれっていうか、普通にぶつかり合いだったり。安全ではないよな。
まぁ今回は先生の館でやるから模擬戦みたいなのは起こらないだろう。小競り合いくらいかな。
何か壊れるようなことがあれば、先生の命によるヨークからの締め上げがあるからなぁ。
ここのところずっとリビングは専用の部屋にしていたが、今日は子供と一緒に二階の寝室に引き上げ本人の意思を確認する。
「……荒っぽいのは、ちょっと。いつもみたいにここに居てはダメ?」
そうだ。いつもなら留守番させてる。
どうして今回は違うのかと言えば、先生とこの飲み会には明確な終わりがない。タイミングを逃せば一週間とかざらに過ぎている。
さすがにいつ帰ってこれるかわからないってのは、どうだろう。なんて思っていれば。
「一人で大丈夫。それに呼べば使い魔が来てくれるよ」
って。
な ん だ と。
お前、俺の知らん間にあっちこっちウロウロして世話してたってのか!?
驚愕する事実に唖然と口を開ける俺をしり目に、「お前の主人は心配性だな」と子供が使い魔にそうもらした。




