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双子のような雷と氷のコンビが帰った。
奴らは実際には双子ではないし見た目もさっぱり違うが、同じ空気を纏っているように見えるせいかまるで兄弟のようだ。
実のところ同時期のタマゴ同士でも性格が完全に似ることはあまりないらしい。
同時期生まれで、色は違うが顔の造りは全く同じの砂と森を見れば納得の話だ。
ヒトから生まれる双子でも、お互いを補うように育つらしいと遠い昔聞いた話を当の森にしてみたが、「知ってるけど、砂を補うとか、それ以前にあんな筋肉バカに補われるとか、ナイナイ。だいたい俺の方が首多いし」と、かなり嫌そうな顔をした。
……そうか、ヒドラってのは首が多い方がステータス的に良いんだ。なんて特に必要のない知識を手に入れたっけ。
「よぉ。おじょーちゃん」
殆ど入れ違うように隊長こと砂の娘がやってきた。
「ええ、お久しぶりですわ」
風が冷たく、あっという間に夕闇が迫るようになってきたこともあってか、薄手ではあるがストールを首元に巻き、しっかりとフードを被っていた。
森の中は日陰と風通りのある分、こういう季節になると夜はぐっと冷える。
もう少しすれば暖炉に火を入れることも考えていた方が良いな。
リビングに案内すれば使い魔が彼女の脱いだローブをハンガーに掛け、壁のでっぱりに引っかけた。
そのままキッチンに飛んでいくのを眺めながら、酒の瓶を開ける。
「もしかして、あれか? また護衛ってやつか?」
この間までいた雷と氷が忠告していったことを思い出すまでもなく。
前に彼女が来た時もそういう名目だったし。というか、多分父親に頼まれたんだろうけど、なんていうかあいつ等ホントに最近ちょっと俺に過保護なとこあるよな。自分じゃなくて娘寄越すのはなんでだろうとは思うけどさ。
魔華に関していうなら、あの後すぐに小さな黒い相棒に確認させ済み。
結果だけ言うなら、なかった。というところ。
自分用にグラスに注いだ後、使い魔の準備した香茶の入ったカップにも湯が跳ねないようにそっと流し入れた。
この酒は甘みがあるし、香りもフルーティだから香茶の風味を損なうことはない。
「今回は飲み会のお誘いですわ」
冷えていたのだろう指先をカップで温めるようにしながら彼女が言う。
「シー先生のところで復活祭をするそうですの。一緒に行きませんか?」
……予想外の返答に自意識過剰だったかと、誤魔化しついでに頭をガリガリと一掻きした。
まー、そうだよな。この石化の森には凶悪な魔物が棲んでいる。ニセ勇者なんて紛い物が通るには難関だよなー。
それにしても、久しぶりだな。
この間聞いた時は海の底に沈んだとか言っていたが、引き上げたらしい。
一応先生はシーサーペントだと名乗っているし、海が側なのが良いのだろうがまたもや海岸線に立て直したっていうことは、またいつ沈んでもおかしくないということだ。
先生のとこの客といえばだいたい、ヒトではないからそのくらいの障害はなんともないのだろう。
実際のところ、沈んでいた最中であっても酒盛りは行われていたようだし。
まー、俺は無理だけど。っていうか、行かない。
いくら建物の中は空気で満たされていた(そうでないと瓶の口を開けたとたんに酒が海水に流れ出てしまうからだ)と言っても、その場所に行くまでの方法が問題だ。
海中に潜ることもさることながら、なんていったってもう絶対、船には乗らないからな!
「って、復活祭?」
「はい。陸に上がってから初めての飲み会だからだそうです」
誰がそう言い始めたのかは分からないが、先生でないのだけは確かだな。
そういった事には拘らないというか、逆に、復活なんて言われるようなことはしていない。とか言いそうだ。
それどころか、復活に相応しいように暫く雲隠れでもするか。なんて言いだしたりして。
断る理由は何処にもなく、今日はもう遅いからと翌日出ることにした。




