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「んー? 今頃勇者が来るっていうのか?」

 この間来たばっかりのくせに、久しぶりと乗り込んできた二個一の二人はすっかりくつろいだ様子でリビングに居た。

「今だからこそだよ」

 魔王城は壊滅し、そのまま魔王も倒されて廃墟しか残ってないと聞くのに。と、首を傾げる俺に雷が揺り椅子にふんぞり返る使い魔に小さな水晶玉を翳しながら言った。

 魔法でその姿を鏡のように写し取るらしい。絵よりリアルでまるでそこに本物がいるみたいだ。

 ちょっとした動きとか音を残したりもできるらしい。

 初めて見た時にはそれはもうびっくりしたもんだが、今ではありふれた魔法グッズだってちゃんとわかってる。

「ほとぼりが冷めたころの潰された魔王城を漁りに来るのさ」

 ソファーに座る氷はテーブルに転がした、使い終わった魔法球を覗きこんで何かを確認しながら言葉の後を引き受けるように続けた。

「あー、あれだ。火事場泥棒みたいなもん? ……つーか俺、愛好会とか入らねぇって言ったよな?」

「まぁまぁ、ちゃんと取り分は渡すからさ」

 というか、これがメーンの活動資金なんだぜ。

 なんてニヤリと笑って見せようとした氷に被さるように雷が叫んだ。

「あっ! 待てって! ちょっおい、酒造! 良いよな⁈ 会員になるって言ってくれ!」

 見れば使い魔がこっちに飛んでくるところで、そのままテーブルの上の魔法球をその棒のような足でかっさらっていく。

 って、どこに消えてってんだろうな。いつも思うけど。

 まー、なんていうか。写させておいてから奪う手口、なかなかあくどいな。

 とりあえず相棒に向けて親指を立てておく。奴は悠々と大きく旋回すると、自分の揺り椅子に着地した。

 面白いほどにがっくりと手をつき、膝をついて打ち拉がれる二人にふんと笑い飛ばしてみせるところまで見て、その大袈裟な演技に堪え切れずに、ぶふりと笑いが漏れる。

「……火事場泥棒って言うのは、まぁ似たようなものだな。それより気をつけろよ。ここいらは通り道になるだろうから」

「実際のところ、勇者って言っても『ニセ勇者』だしな」

 そう居ながらあっさり立ち直り膝を払って立ち上がってくるのを「ニセってどういうことだよ?」ともう一度首を傾げる俺に、二人は一度顔を見合わせてから交互に口を開いた。


「そう言えば、こっちにはニセ勇者とか勇者狩りの話来てないよな。


 向こうの大陸では魔王が量産されて大変らしい。

 おかげで勇者も量産されているとか。

 そこら辺から名乗りを上げるものから、異世界から呼び出されるものまで多種多様。

 国としては自分のところから出たものや眼をかけたものが活躍すれば、他の国々に幅を利かせることができるが、そのすべてが功績を挙げられるわけではない。

 よくあるサーガのように騎士や王宮魔導士を連れて行かせるほど余裕も人員もない。

 だからほんの少しの支度金や簡易な武具を与えて放り出すわけだ。

 いくら一番安いものだとしても、仮にも王宮で使われていた代物なら質は悪くないし、支度金だって金貨であることが多い。

 となれば、狙われるのも当然。勇者狩りが始まった。

 最初から強い奴ばかりでもないし、実際に実力がある奴なんてそうそういないしな。……まぁ、その中に本物の勇者様がいたんだけどな。

 年若い、少年でありながら三人の魔王を倒したらしい。

 ただ、そのあと消息がなくて、噂では他の国や大陸の魔王を倒しながら旅をしているとか。

 ここでニセ勇者が出てくるわけだ。

 勇者を騙って、あっちこっち荒らしてる……あとは、わかるだろ?」

 んー、まぁ。詐欺師のすることなら似通っちゃいるだろうけど。

 どっちにしろ元魔王城が荒らされるってことは。

「あー、それは困るかなぁ」

 強大な魔力の使われた土地では希に、その力を凝縮させた花が咲くことがある。

 花は花でもマジックフラワーと呼ばれる。そのまんまと言えばそのままだけど。

 ゆるゆると集まり光る様は魔力がなくても見つけられるほど。夜であれば猶更美しい。

 魔王軍に襲われた村跡では毒の花が咲いたりする。

 流石にこれは酒には使えないが、その場合は先生のところに持って行く。

 彼ならその毒を薬に変えることができるだろうし。

 ……あの場所はトリスが魔法で流星を落としたから、少なくとも風と大地の魔力が注いだはず。

 もしそうならなくとも魔力を帯びた大地は肥沃になる。

 俺んとこで酒盛りを開く理由の一つでもある。

 友人ども(あいつら)も喜ぶし。先生のとこは建物内だからそこまで魔力合戦的な余興は無理だ。

 いつでも集まれる場所があるのは楽だけどな。

 さてと。どーすっかなぁ。

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