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 ちょうど昼時を迎えた(いち)は、晴れて暖かい陽気もあってか賑わっていた。


 やっぱ、新しい服がいるな。と、考えながら覗いた気に入りの串焼き屋は、こんな時間帯のせいか混んでいるようだった。

 席に座りたいわけでもなし、店先の窓から忙しそうに串を焼く店員にとりあえず二本ほど注文する。

 声で存在に気付いたのか顔を出したいつも優先してくれる店の主人に、小さめのボトルを賄賂で渡した。

 あまり多めにすると相棒に怒られてしまう。

 程々の量とタイミングが難しい。

 今日は繁盛してるな。と声をかければ、

「お前んとこの使い魔が来てただろ」

 と返された。いやほんと、マジ人気者だな。アイツ。

 返事と共に差し出された焼きたての串焼き肉を一口頬張る。

 ……あー。やっぱ美味ぇな。この塩加減が堪らんわー。

「それより、珍しいな。こないだ来たばっかだろ」

「んー。まぁなー」

 どう答えるかと曖昧に濁す間に客に呼ばれた店主は、勝手に判断したのか適当に頷くと店の中に戻っていった。

 足元に降ろしていた荷物袋からもう一つボトルを取り出し、呷るように飲んだ。

 市の様子を眺めながら、図らずも増えた同居人のことを思い浮かべる。

 大人しく無口なその子供は、出掛けるかと誘ってみたが首を横に振って留守番係になった。

 まぁ、子供というには微妙な年の頃に見えるが。

 種族は人間のようなのでほぼ見た目通りだと思って構わないだろう。

 今日はその子供の為の買物だった。

 朝の内に蒼枇杷の酒をいつものように使い魔に売らせておいたので、財布の中身は潤沢なはずだ。

 成長し切っていなさそうな線の細さを思い、これは肉も食わせてやらにゃと持ち帰りの串を多めに注文する。

 森のところから帰る途中で出会った子供は薄汚れて、ぼんやりと座っていた。

 まだ昼も半ばで明るいとはいえ雨の中、荷物もなく疲れ果てた様子を見て迷子なのか家出人なのか悩んだが、後者だと憶測する。

 近くを人が通ったことに気付いたのに反応が薄かったせいだ。

 これがもし野盗なんかに襲われた後だったなら怯えて逃げ出すか、逆に縋り付いて来るだろう。

 異世界からの迷子という線も無きにしも非ずだが、それにしたって何かアクションがあるはずだし。

 ……滅多にあるわけじゃないけれど、遠い昔に一人拾ったことがある。

 そいつは大人の男で落ち着いていたし、すぐに馴染んで今では世界のあちらこちらを旅したりで、たまに戻ってきて土産話をしていく。

 そう言えば最近会ってないな。今度手紙でも出してみるか。

 頭の端に留め置いて、二本目の串焼き肉に噛り付いた。

 まぁ。見つけてしまったのが運のつきというやつだろう。

『行く当てがないなら、俺んち来るか?』

 そう言えば、躊躇いながらついてきた子供に、濡れた服の着替え代わりに自分の服を差し出したのだが。

 そこそこ自分は身長はある方だからか、子供にとってそれは大きく袖もズボンの裾も捲り上げているし、入るブーツがないからと渡した踵に支えのないサンダルですら脱げそうにさせていた。

 ぶかぶかでは動きずらいだろうしな。

 とにかく靴だな。慣れない場所の、それも森の中とあっては足元が覚束ないのは致命的だ。

 元々履いていたものは少し変わった形をしていて、お世辞にもこういった場所や旅をするのには向いていなさそうだった。

 今は部屋の中で過ごすことが多いし、家の周りに出る程度なら大丈夫だが。

 使い魔に頼めば適当に見繕ってくれるから本当は酒造自身が買出しに来る必要はない。

 せっかく晴れたことだしと、気分転換に声を掛けて振られたのをそのまま出て来た。

 もしかしたらまだ落ち着いていないのかもしれないし、もう少し様子見するかなぁ。


 それにつけても。と、思い出し苦い顔になる。

 少年だと思って『坊主』と呼びかけた、その時の使い魔の態度ときたら。

 前髪は目元より長く耳に掛けれそうなほどだが、後ろは襟にかかるかどうかくらい短かったし。

 服だって動きやすそうなズボン姿だった。

 見た目で判断するしか俺にはできないっての。

 不貞腐れながら口に入れた残りの串肉は、冷めかけていたがそれでもやっぱり美味かった。

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