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『ぃよぉ。酒造』

 開口一番。ほぼ同時に言い放った二人の顔かたちはあまり似ていないのに、その醸し出す空気、纏うオーラがまるきり同じでまるで双子のような奴らだ。

「見たぞ。聞いたぞ」

「使い魔への愛がさらに深まったようだな」

「というわけでな。勧誘に来たわけだよ」

「いざ来たれ! 使い魔を愛でる会会員募集中!!」

 予め決めてあったのだろう流れるような動きに芝居がかった口調で交互に口を開く。

「可愛い花嫁さんも募集中!」

「いえーい!!」

 さらにテンション高く喋った挙句にハイタッチ。

 とりあえず一通り終わるところまで待ったことだし、と今度は俺が口を開いた。

「……あー。お前ら暇だろ。手伝え」



「元」とはいえ魔王だろうと身構えていたのが本当に馬鹿らしいくらい、和やかな会食だった。

 美丈夫というやつで身長も高く、一筋縄ではいかなさそうな気配はひしひしと伝わっては来たが、それがこちらに向かってこないなら自分には関係ない。

 すぐに気が緩んで普段通りタメ口になる。

 前に気になった何故魔王になるのかという問いにも、本人の理由は濁されたが快く答えてくれた。

 魔王の数だけ理由もなり方も違う。なろうと思えば俺でも魔王になれるのだと聞かされ素直に感心する。

 彼の作った美味い料理に舌鼓を打ち、冗談は言わなさそうなのにもし魔王になることになったらマネージメントは任せてくれと言われ思わず吹き出しそうになった。

 出されたワインは喉越しも香りも良く大層美味かったので、張り合うように料理に合う酒を取り寄せた。

 そのおかげか、果樹園の葡萄も好きなだけもらって良いという大盤振る舞いを受けることができた。

 暇をしているというので次に酒盛りを開く際には料理人として呼ぶことを約束し、翌朝『元』魔王城を後にした。

 帰りも船だとげんなりしたが、よく気の付く『元』魔王様は空路で帰れるように手配済みだった。

 そういったわけで機嫌よく帰宅したわけだが元々出かけるはずのなかった予定に、一旦戻ることもなく船に乗り足を延ばしてしまったせいで仕事が目白押しに押している。

 これはしばらく徹夜かもな。などと思ったところでやってきた友人どもに、良心の呵責もなく体力仕事を押し付けた。

 オレンジがかった黄色の髪をした方が(かみなり)、突き抜けるような夏の空の色の髪をした方が氷と言う。

 その通り名のとおりその能力が長けている。

 今はそんな力ちっとも必要としてないけどな。

「これはもうちょっと回してくれ」

 氷にそう言って、大きな樽を傾けさせ縁に沿うようにぐるりぐるりと回させる。

 時々止めさせては触れてちゃんと中が交ぜられているか振動を確認する。

 駄目なら上下で回転させようと思っていたが、この感じなら大丈夫そうだ。一緒に並んでいる三つを同じようにしてくれと頼んだ。

 雷には樽から樽への入れ替えをさせる。

 虹影の実で作る酒の場合はそのまま熟成に寝かせるとえぐ味が出るため、間には布をかけ沈殿物を取り除くのだ。

 倉庫に並ぶ大きさがまちまちの樽を順に、出来具合を確かめながら二人に声をかける。

「てか、嫁探ししてんのは知ってたけど。何、その愛好会みたいなのは」

 こいつらには会う度に、可愛いヒドラ見かけたら教えてくれと言ってきていた。

 最初に知り合った人外が森で、あいつがヒドラだったせいかそっちの知り合いは多い。だとしても。

 ヒトに化けてたら俺が分かるわけないだろー。見分けられねーよ。とぼやけば、

「メスは研究者気質が多くてほとんど籠ってるから外出てこないよ」

 だと。お前ら無茶言ってんじゃねー。呆れつつ思い出す。……あ。隊長のとこ、子沢山じゃん。奴もヒドラだったはず。

 時々此処に遊びに来る、母親そっくりのあの子以外なら大丈夫だろうと言えば。

「砂んとこか」

 揃って微妙そうな顔をするから、気が向かないのかと思えばすでに粉をかけに行った後らしい。

 色よい返事がなかったというところだろう。

 こいつらのことだからそれでも気にせず、のこのこ出かけるのだろうけど。

「ともかく今回は使い魔友の会の顧問に抜擢しに来たわけよ」

 おいおい。さっきと名前変わってんじゃねぇかよ。

「前から使い魔の愛の伝道師だった俺たちだけどさ」

「もっと広めるべきだと思ってな。前に作ったんだ」

「そうそう、そこそこ前にな」

 何言ってんだこいつら。とか思ったが、そう言えばすごい可愛がっていたっけ。可愛がり過ぎて、えさのやり過ぎで連れて行けないほどデカくしてたよな。それはもう、半端ない大きさで。俺のこのログハウスに出入りできないほどの。

 多少は大丈夫だが、食わせれば食わせるだけ際限なくデカくなるとか。俺には到底無理だな。

「もちろん使い魔を連れているお前には普通会員なんて言わないさ」

「プレミアム会員のさらに上、名誉会員さ」

 どうしても会員を増やしたいのか、そう言い募る奴らを。

「えー。あー。いや、別にいらねーし」

 バッサリ切って捨てた。

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