幕間
モブによるモブへの鉄則の口伝。
ん? おい、お前この辺じゃ見ねぇ顔だな。
新入りか?
とりあえずこっち来いよ。
あん? 俺か? 俺はここの用心棒よ。
つっても必要無い奴もいるけどな。……ああ、気にすんな。
とにかくよ、この市に来るやつにゃぁ、ここの掟ってのを教えてやるのも俺の役目さ。
いいから来いって。
ここの串焼き屋は結構いけるんだぜ。
とりあえず一杯はおごってやるからよ。
兄ちゃん。串焼き二人前とジョッキ二杯な。
とりあえず先に酒くれ。酒。
かぁーっ、やっぱ昼間っから飲む酒はうめぇな。お前も遠慮せず飲めよ。
んで、この辺りには何しに来たんだ?
……なんでそんなこと聞くんだって?
そら決まってっだろ。ただふらって来ただけの奴と、わざわざ来た奴じゃあ教えることが違うんだよ。
なに? 用があって来たんだと?
しょうがねぇな。ここじゃぁ、よそんとこと違ってなぁ。しっかり覚えてもらわにゃぁなんねぇことがあんだよ。
一回しか言わねぇから、耳かっぽじってよく聞きやがれ。
ってか、おい串焼きまだかよ?
……なんだ、今焼けたのかよ。たっぷりタレ付けてくれ。いいじゃねぇか減るもんじゃなし。
あん? 減るってのかよ。いいじゃねぇか、けちけちすんなって。
おお、これよこれ。悪いな、兄ちゃん。
んで、なんだっけ。
……ああ、そうそう、ここの掟な。
忘れてねぇよ。ちぃっとばかしド忘れしただけだって。
忘れてんじゃないかって? ああもう、うるせぇうるせぇ。とりあえず聞けって。
いいか? ここの市にゃぁ決して手ぇ出しちゃあなんねぇ奴が三人いんのよ。
まずは、あれだ。
あれっつったら、使い魔に決まってんだろぅがよ。
ああん? 使い魔ってなんだだと?
お前そんなんも知らねぇのかよ。……これだから今どきの若い奴はよぉ。
使い魔っつったら魔法使える奴が連れてる奴に決まってんだろぉ?
……猫じゃねぇよ。使い魔っつったら使い魔だろうがよ。
わっかんねぇのかよ。めんどくせえなぁ。
とにかくよ、ここのはこんくらいの、そうだな、拳ぐらいだな。黒くてよ、ふわふわ飛んでんだよ。
三人っつったのに人じゃないだと?
んなこまけぇことは良いんだよ。
とにかくあいつの機嫌だけは損ねんなってことなんだよ。
ここからつまみ出すだけじゃ済まなくなるからよ。いいか? あいつの機嫌だけは損ねんなよ?
ああん? 使い魔だけじゃねぇ三人だって言っただろぅがよ。何聞いてんだお前。
いいか? もう一人はよ、この森のラスボスでな、コカトリスって知ってっか?
……おお。それよそれ。目ぇ合ったら石んなる奴な。
あいつが暴れたらシャレになんねぇからよ。ぜったい手ぇ出すんじゃねぇぞ。
ああん? そんな化けもん手ぇ出すわけねぇだろってか? 出す奴がいるから言ってんだろうがよ。
お前ほんと頭悪いなぁ。
おい兄ちゃん! 酒もう一杯な。ジョッキ大でな。なみなみ溢れるぐらいで頼むぜ。
……おお。さすが早いな。いやいや、待てよ。もうちょっと入るだろうがよ。
いいからいいから。けちけちすんなって。
……そうそう! それでいいんだよ。悪いな、兄ちゃん。ありがとよ。
んで、なんだっけ。
ああ、そうそう、三人目な。忘れてねぇって言ってんだろ?
ちょっと、なんだ。こぅ、ポッと抜けただけじゃねぇか。
それを忘れたって言うんだと? 一々うるせぇ奴だなぁ。とにかく黙って聞けって。
三人目がな、ヨークっつぅんだけどな。
こいつがまた先生の雑用係でよ。
ああ? 先生っつったら先生のことだろうがよ。わっかんねぇ奴だな。
シーサーペントのお医者先生だろ?
……知ってんじゃねぇか。やっぱ先生は有名だよな! ってか、知ってんなら一発で分かれって。
ああん? 先生だけで分かるわけないだろって?
知ってんならわかるだろうがよ。……めんどくせぇなぁ。
とにかくよ、ヨークに目ぇつけられたら、一発で先生にちくられっからよ。
ああ? 何言ってんだ。ヨークは良い奴に決まってんだろうがよ。
なんかあったらすぐ来てくれてよ、手伝ってくれんだぜ。ひでぇ奴なわけねぇだろうがよ。
ムジュンなんかしてねぇって、いいから聞けよ。
んなことよりな、先生に目ぇつけられてみろよ。ここいらどころじゃねぇ、裏側まで行かねぇと暮らせなくなるからよ。
まぁなんだ。そっちは俺らには関係ないっつうかな、どうでもいいけどよ。
忠告だけしといてやるってことよ。
いいな? ちゃんと教えてやったんだからな。忘れんじゃねぇぞ。
ああん? 俺じゃねぇから忘れねぇだと? 俺だって忘れてねぇよ。ちゃんと教えてやったじゃねぇか。
しつけぇ奴だな。
それより、お前何の用でここに来たんだ?
なになに? 此処の市で幻の酒が手に入るって聞いただと?
……ちっ。どこのどいつだ、んなの広めたやつぁ。また余計なのが増えちまうじゃねぇか。
ライバル増やしてんじゃねぇってんだよ。
あん? 何でもねえよ。気にすんな。
おい兄ちゃん。もう一杯頼むぜ。
……おお! わかってんじゃねぇか。サンキュー。あんた良い奴だな!
ついでに串焼きも頼むぜ。タレたっぷりでな!
……つぅことでよ。お前に最後の掟を教えてやるぜ。
ああん? さっきので終わったんじゃねぇのかってか?
終ってねぇから続けてんじゃねぇかよ。お前、ほんと大丈夫か?
……なんだよ、ため息なんか吐きやがってよ。
話しすすまねぇから続けろってか。
おいおい、俺のセリフだろうがよ。
まぁ、いいや。
とにかくこれがな、一番危険なんだぜ。
ああん? 危ねぇのは三人じゃねえのかってか?
一番危ねぇのは一人なんだよ。わっかんねぇヤツだな。
酒造って言うんだけどよ。
……酒造は酒造りだろ? 名前なんか知らねぇよ、つぅか、酒造って名前だろ?
とにかくな、こいつに手ぇ出したらよ。
さっきの三人が全部いっぺんに動くんだぜ?
そうなったらよ、何が起こるかわかんねぇんだぜ?
こえぇだろ?
わかんねぇのにこえぇなんかわかるかって?
わかるだろうがよ。絶対やべぇって。だからな、絶対言わんこっちゃねぇからよ。
つぅか、そん時は俺らも敵だからよ。
わかりやすくていいだろ? まわり全部敵なんだからよ。
別の世界まで行かねぇと暮らせなくなるんだぜ。な、すげぇだろ?
そんな目に遭いたくねぇならな、俺の言うことをよっく覚えとけよ。
俺ぁ、ちゃんと言ったからな!




