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 機嫌が良いと歌を口遊む。が、うろ覚えの為鼻歌交じりになる。


 作業場の端に小さな台のカバーを外して真ん中にある穴に上から一枚、二枚。

 んー、どうすっかな。

 少し悩んでからもう一枚、夜の都で手に入れた薄布を重ねて乗せる。

 その肌触りはどれも柔らかく滑らかだ。

 本当に織り目すら見えないモノになれば木の葉のように液体を通さないこともあるらしい。

「私たちが織るものとは種類が違うんです」

 隊長こと砂んとこの娘が自身の着る薄いベールのようなレースのストールを摘まむ。

 その透けるような布も柔らかそうだなと言えば、彼女はにこりと笑って。

「ええ、でも普段用にするにはあまり向いてないんです」

 母方の民族は一風変わった戦闘民族なんだと思っていたが、自分たちの衣装を作ることもするらしい。

 他にも金属を織り込んだ厚布だとか。

 確かに何に使うんだと思わなくもないが、これはこれで面白い。

 隊長が(つがい)相手に興味を持ったのはその辺もあるんだろうか。

 あいつの種族に民族性なんかないもんな。……多分だけど。

 後でもうちょっと話を聞くのもいいかもしれない。

 よっ。掛け声をかけ後ろに置いておいた樽から氷果を取り出す。

 今回は本当に運が良かった。止めようと思わないまま顔がにやける。

 両手で抱えるどころか、両腕で抱えなければいけないほどの大きさの果実が見つかったのだから。

 結構重いのが玉に瑕だが、まー、こればっかりは仕方ないよな。

 少し前に時間を止める袋から出してあったせいで表面が溶け始めている果実を、重ねた布の上に乗せた。

 俺自身は魔法は使えないがそのための道具は持っている。

 ホントに魔法ってのは便利だよな。

 重みで沈んでいくそれが、穴の途中にある網で留まる。

 穴は地下室へと繋がり、その下に用意した別の樽に布で濾された果汁が流れ落ちるようになっていた。

 氷果はほぼ液体で出来た果実だが、大きく固まるにつれ細かい筋みたいなものや年輪のように薄い薄い膜ができる。

 それを取り除くのだ。

 徐々に溶ける果実が、ゆっくり濾されていくのには丁度よい厚みになっているかはもう少し眺めている方が良さそうだ。

 上手くいかなければもう一度しなければいけない。

 たわみを直すように重ねた布の端を引き上げていると、それを見ていた彼女が口を開いた。

「パパがママの為にそろえる布はすべて星の精霊達の国(ここ)のなんですよ」

 ……んん? てことは。

「あいつでも知ってるくらい有名なんだな」

 言ってから、今頃おかしなことに気付く。

 そーいえば、何処で手に入れたかなんて一言も言ってないってことに。

「見た目で分かるのか?」

「織り目で。ここのは複雑で、どのような次元の織機を使っているのかわからないのですけど」

 それほどまでに複雑なんです。

 でもだからこそこの国のものだとわかるのですわ。

 至極真面目な顔で畳みかけるように言う彼女に。

「へぇ~」

 良くわからないが、とにかく感心して「すごいんだな」と言えば、「すごいんです」と心持ちキリリとした表情で返された。

 そうしてそのあと二人して噴き出した。

 俺たちの上では呆れたようなオーラの使い魔がふわふわ飛んでいたが、なんだかいつも通りのそれすら可笑しくて。暫く、そうやって笑っていたのだった。

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