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 彼の周りの似た者たち。


「おーい! 酒造(さけづくり)

 呼ばれて窓を開ければ、荷物を背負った白虎がこちらに向かって唸り声をあげていた。

「ラウレス?」

 珍しいこともあるもんだ。

 家具職人がここに来ることは殆どない。酒盛りの時くらいだな。

 普段はこっちから行くか、使い魔を通して連絡をしてくるような奴がわざわざ来るなんて。

 ってことは。

「あー、今行く」

 待ってろと声をかけ部屋を出た。


 ドアを開けれれば入口に続く階段に鋭爪を掛ける獣。

 ミシリ。木材で出来たそれが軋む音がしたが、まぁたいしたことはないだろう。

 改めて挨拶をかわす。

「待たせたな」

 言われて思っていたことが合っていたのだと安堵した。

 確かにこの前の酒宴の時からだから時間がかかったと言えるが、頼んだのは拘りの品である(でなければわざわざ家具職人に頼むことはない)から手間がかかって当然だし、実のところいろいろあって忘れていたからそんなに待った気もない。

「あぁ。出来たのか?」

 中に引き入れるために扉を大きく開きつつ、そうだと思いだしたことを口にする。

「そのままで入るなよ。毛が落ちるって使い魔が怒るからな」

 と言えば、分かってるとばかりにむくりと起きあがりながら緩やかにヒト型に変化していく。

 体毛はそのまま髪に出るらしい。白髪に所々黒のメッシュが入った短髪、色黒の大男がタンクトップに袖のないジャケットを羽織っただけの姿で立っていた。

 そろそろ寒さが浸みるようになった来たこの頃に見たい姿ではない。

「ちょっと! 一言掛けてよね」

 奴の背中から少し甲高い声がする。

 首にかかっていた白く細い腕は彼女のものだったようだ。

 するりと荷物とともに降りて来て、あ、やばい。

 そのままがくりと膝が曲がって尻餅をつきそうなところをかろうじて男が引き上げる。

 現れたのは藤色の髪を両方で横結びにしたツインテールの、美少女。

「大丈夫か? サイアリーズ」

 一応声だけかけておく。

 苦笑しながらこちらに頷いた彼女だったが、そのあとのラウレスの言葉に牙を向いた。

「呑気にいつまでも寝てるからだ」

「起きてたわよ! しゃがんでくれなかったら降りれるわけないわ! どっちになってもデカブツなんだからそのくらい気付いてほしいわ」

 背中にぶら下がっていたのは妖精族の女で、いつまでたっても大人にならない外見をしている。

 もちろん大人だけどな。

 妖精族と言えばひらひらふわふわしたベールを幾重にも重ねたような服をリボンや花飾りで飾っているイメージがあるが、彼女は動きやすさを重視しているのか丈の短いズボンを身に着け、しっかりと鋲の付いた革靴を履いていた。

「なんで一緒なんだ?」

「うむ。今回の頼みの品をな、少し手伝ってもらったんだ」

 珍しいことがあるもんだと思っていれば、さらに珍しいことになっていた。

 職人同士で協力して作ることはあるが、彼はあまりそういうことをしなかったからだ。


 彼女は細工師だ。

 普段は火の山の主に間借りをして、手に入れた鉱石でアミュレットやタリスマンなどの装飾品を作ることを生業にしている。

「子供の可愛がりっぷりがウザくて大変よ。面倒なのはそれを見せつけてくるのがホント困る」

 荷物を受け取り客間に案内してから最近どうだと水を傾ければ山の主への愚痴がポンポン飛び出してきた。

 そう言えば確かに、この間会った時も子供を普通に連れて甘やかしていたような。

 自分から振っておいてなんだが、これは長くなりそうだ。

 連れの男をちらりと見ればすでに聞いていた話なのか、何処か遠くを見て聞き流す体勢を取っている。

「あー。とにかく、報酬を渡さないとな」

 あからさまに話を変えたが、あっさりと二人とも食いついてきた。みんな酒好きで助かるよな。

 中身は見なくていいのかと聞かれたが二人の腕は信用しているので問題はない。

 二人が力を合わせてくれたならなおさらだ。

 此処にはあいつもいるしな。

 少しでも見えない方がサプライズになるだろう。

 楽しみは後に回すことにして二人の為の酒を使い魔に取りに行かせた。


 ラウレスにはこの間出来たばかりの地中花の蜜酒。煌めく琥珀色のまだ淡い酒。

 サイアリーズには永く寝かせたミズイチゴの酒。搾らずそのまま潰してつくった緑色のドロリと濃い酒。

「またそんな浅いのを飲んでるの?」

「これはこの時期でしか飲めない繊細さがあるのだ。お前こそ、そんな甘ったるいものばかり選んでいるではないか!」

「この深みのある濃厚さがわからないなんて!」

 おっと。そーいや、こいつらの好きな酒はある意味対極だったっけ。

「そんな喧嘩をしにわざわざ来たのかよ?」

 しばらく眺めていたが留まる事を知らぬ応酬にそろそろいいかと声をかけた。

 その一言で二人の言い合いは示し合わせたようにぴたりと止まる。

 止まったのだからそれでよかったのだが、二人は顔を赤らめちらちらとお互いに視線を合わせながらもじもじとし始めた。

「あ~、なんというか、な。今回の依頼の為にちょっと細工が気になってだな」

「いろいろ意見交換したりして意気投合したっていうか」

「その、なんだ。こういつもと違う発想が良いなと思ってだな」

「掛け値無しに言い合えるとこもすごく良いわよね」


『だからな(ね)。あたしたち、お付き合いすることにした(んだ)のよ』


 さっきまでのは何だったんだと、思わなくはないもののそこは言わないでおく。

 俺だって空気を読める時には読むのだ。

「あー、まぁ。おめでとさん。じゃあ、お祝いにもう一本つけるよ」

 そう言えば、二人から嬌声が上がった。

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