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 彼は時々、周りがびっくりするような勘違いをする。


 右手を目の上に翳し(いち)の賑わいを見渡す。

 まだ明るいが夕暮れが迫ってきているからか一番混む時間よりはまばらで、もしかしたらそろそろ店じまいが始まるのかもしれない。

 とにかく買い物を済ませようと、頭の上をふわりふらり浮かぶ使い魔に視線を送れば奴はこっくりと身体ごと頷く。

 欲しい物のリストはすでに渡してある。

 財布のひもをにぎっているのはあいつだし、足りなければ物納として酒瓶も渡してあった。

 足りなくなってきていたガラスの瓶やら、そろそろ必要な冬用のブーツにリネン類。

 後は新しいカーテン。

 これは手に入ればいいなという程度のものだが、相棒に任せておけば大丈夫だろう。

 コートなどの類はまだ使えるから省いたし、思いつかない分は適当に何とかするだろうしな。

 実りの季節だが果実を手に入れるのには時間が遅い。

 まー、今んとこ作りたいものは手元にあるしな。

 本当に欲しければ朝早くから来るか、先に声をかけるようにしている。

 やはり良いものの為にはひと手間を惜しんではいけないよな。

 有難いことに最近では珍しいものがあれば取って置いてくれていることもある。

 パタリパタリと羽根を閃かせ姿を見せつけるようにゆったりと市の中心に向かう小さな黒い背を見送り、馴染みの串焼き屋の暖簾を潜った。

 片手を上げいつものように挨拶する。

「おお~。ひさしぶりだな」

 と返事が返ってきた。

 そうだっけ? と首を傾げたがそう言えばここのところ相棒にばかり頼んでいたかもしれない。

 後で何本か持ち帰り用に包んでもらうことにして、まずは気に入りの串焼きを一本。

 立ち食い仕様になっている店内でカウンターに寄りかかり肉に齧り付く。

 強火で焼くからなのか外側はカリカリ香ばしい。

 舌鼓を打ちながら、そう言えばと海底都市で味わった包み焼きの話をする。

 この辺りでは海馬肉は手に入らないらしい。が、塩だれなら負けないともう一本寄越してきたのでありがたくいただく。

 とはいえ家にいる森のことを考えるとこれ以上はまずい。

 惜しみながらそこまでで我慢する。

 と、そこで外からひときわ賑やかな声が聞こえ、ようやく始まったことに気付いた。

 入り口からその騒ぎを覗き見る。

「おーおー。やってるな」

「すっかり名物だよな、あれ」

 ここで買い物する楽しみと言えば、これだよな。

 あちらこちらの雑貨屋から店主たちがあれやこれや商品を持って、わらわら一か所に固まって居るのが見える。

 中心にいるのは俺の相棒で、たぶんいつものようにふんぞり返ってふわふわ浮いているに違いない。

 店主たちはあいつの眼鏡に適うものをとっかえひっかえ持ってきては品定めを受けているのだ。

「ホント、あいつ。ここのアイドルだよなー」

 その姿は貢物をされる王様のようで。

 って、みたこと無いけど。強ち間違ってもないんじゃないかと思う。

 面と向かっては言わないが自分の相棒が人気者な姿を見るのはとても楽しい。

「あー、あーあーあーあぁ。そーかもーしれねぇーなぁ?」

 なんか微妙な。感情があまり籠ってなさそうな声だが賛同されたことに満足しておいた。



 必要なものはすべて手に入れて、ほくほくと帰り着けば中から空腹を刺激する良い匂いが流れ出していた。

 思っていた通り夕食の準備をしてくれているようだ。

 流石は本職料理人。奴は板前と呼ばれる方が好きだっけか?

 どちらでも構わないとは思うが本人の拘りは尊重してやらないとな。

 そうしていれば彼は機嫌よく美味い料理を提供してくれるのだから。

 緩む口元を抑えもせず、ただいま。と声をかけた。

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