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 使い魔との付き合いは長い。


 縄張りと決めたこの森で暮らし始めて暫く、一人っきりでいた時のことだった。

 それまでの自分はと言えば、心配性で世話焼きが性分の者と居て過保護な扱いを受けていたためか、少しぐうたらになったような気がする。

 それもそこでは世話焼き人は複数いて機材(とはいっても本当に必要とするものはたいしてない)はすぐ揃えられるし、材料の果実も最高のものが目の前に運ばれてきた。

 寝床完備。食事、昼寝付。

 ただ、酒を造っているだけでよかった。

 思うところがあってそこを出たわけだが。

 当然、一人で出来る事には限りがある。

 世話焼きな彼らに任せっきりであった重労働などは特に大変だ。

 だけれどもそういった一つ一つが新鮮で楽しかったのも事実だ。

 体力が追いつくかはともかく。

 うろ覚えの流行歌を口遊む。

 鼓舞の意味も込めて。

 人には歩きにくい足元がおぼつないような獣道しかないなか、自分のものとなった森を探索しさまよっていたところで、それに出会った。


 片手の平に乗るくらい位の大きさ。

 黒く小さな毛玉のような身体にに蝙蝠のような羽。

 くるりと回るたびにちらりと見えるウサギのような小さな丸いしっぽ。

 黒い大きな瞳をパチリパチリとさせる様はあどけなく可愛らしい。

 ふわり、ふらりと目の前でゆったりと羽根を閃かせ漂うように、そこに浮かんでいた。

 使い魔と呼ばれるそれ。

 見たのは初めてではなかった。

 大きさが全然違ったために驚きはしたが、それだけだった。

 詳しい生態は知らない。

 ただ魔力持ちのところに契約を迫りに来るのだという。

 その代り。なのだろうか? 使い魔の名に恥じぬとおりに何でもしてくれるのだという。

 自分がただの人であることを知っているから、そのためにここに来たわけじゃないと思っていた。

 こてり。首を傾げれば奴も同じように身体ごと横に傾き。そのままくるりと一回転した。

 迷子なのかと聞けば違うと首を振られ。

 羽根の動きで交互に差すようにされてようやく、一応確認してみれば。

「俺、魔力ないけど」

 それから背負っていた荷物袋に入れていた酒瓶を手にし目の前に掲げて、

「やれるとしたらこれぐらいしかないぜ」

 ぺたり。

 言うが早いかそいつはチャポチャポと音を鳴らすそれに張り付いてくる。

 現金な奴だなぁ。

 思わず吹き出した。

「じゃあこれで契約成立な?」


 ……今ではすっかり力仕事は使い魔に任せている。

 なんでかって? もちろんヒトには向き不向きってもんがあるからさ。

 俺よりずっと力持ちだし。

 ちらりと当の本人見てみればくるり、くるりと前に倒れるようにして回転しているのが見えた。

 その前にあるのは俺の腰元で揺れる錫色の小さなカンテラ。

 時々カタカタと揺れ、ポ、ポ、ポ、と光る様を見ていると会話をしているように思える。

 いや。光に合わせて相棒が偶にニヤリとしているところを見ると、確実に意思相通しているのだ。

 喋れない者同士どんなコミュニケ―ショーンをしているのやらさっぱりだが。

 というか、こいつら本当に何喋ってんだろう?

 実際のところ、いくら仲良くなったとしてももうすぐお別れだ。

 専属でカンテラ契約するには俺の森は危険すぎる。そこまで頻繁に出かけるわけでもないしな。

 心配は杞憂だったようで、拍子抜けするほどあっさり、後ろ髪引かれることもなく二匹は別れた。


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