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彼は話すより聞く側の方が多い。
出発日はあっさりとやってきた。
思ったより早くやんだ雨はもしかすると、ただの切れ目に入っただけなのかもしれないが森を出て半日ほど歩けば海岸に出る。それまで持てばいい。
曇りの空の合間にちらりと見える青に、そこから光の帯が揺らめくのが見えた。
ヒヤリとした空気がコートの端をはためかせる。
あまり舗装されていなくても長雨でぬかるんだ森の中よりはずっと歩きやすい街道をのんびり進む。
水溜りを避けることも無く踏んではバシャリと周りに散る泥水に、同行者が眉間に皺を寄せて嫌そうな顔をした。
これを見越してお互いブーツは撥水加工物だから気にする必要はないはずなのだが。
どこか偏屈なのか。それともこれが潔癖と言うやつなのか。
いや。それとも何か違うような気持ちがする。
大雑把な仲間内の奴等とは少し違う反応に首を傾げつつ、そう言えばと問いかける。
魔法使いとは火やら雷やら使ってドンパチやったり、空間を歪ませてすごいだろうとドヤ顔をしてくるものだと思っていたのだと。
それから比べれば少々変ってはいるものの、大人しいものだと思ってのことだったのだが。
「確かにそういう輩もいる。……大まかに分けて魔法使いは二種類に分かれる。あんたが言うように魔法を発現させることが得意なものと、物や薬を作るもの。これは塔や住処に籠ってするから周りから見れば怪しげに見えるが……」
滔々と流れおちだす言葉に何かスイッチを押してしまったらしいと気付く。
「だけど両方とも魔法自体を研究するって意味で根っこは同じなんだ。魔法をそのものとして発動させるということは理解しなければ無理だし、新しい呪法を編んだり、組み合わせを変えることによってその威力を変えたりする事もそう」
「薬、……魔法薬のことだけど、これはアンタの作っている薬酒のようなもので、ただアンタのと違うのはその素材の魔力レベルで配合する事で、一番いい効果を引き出す」
「特に巨大な魔力持ちは長寿の傾向にある。若い頃ならともかく、ただ見た目だけのために魔法を使うのじゃなく、魔法、魔力自体に興味を持って、その秘められた無限性に目を向けるようになるのはある意味必然だろう」
「強いて言えば見せびらかすのも成果として当然評価を得たくなるものだし。
それに俺も、長生きしている方だし、気持ちはわかる」
つらつらと語られる言葉を黙って半分くらい聞き流す。
……長生きねぇ。そう言うセリフだけ聞くとなんて言うかこう、子供が背伸びしているような感が抜けないよな。
外見が青年に入ったばかりといった外見のせいもあるだろう。それだけで判断するのは危険だが、実際のところ俺よりは下だろう。
精神年齢的な意味合いで。それ以外は説教臭いけど。
知らずの内に緩む顔を見られて、
「何笑ってるんだよ。ちゃんと聞いてるのか?」
などと言ってくるものだから余計にこみ上げるものを堪え切れずに、ぷふりと吹き出す。
ふくれっ面を披露しているのだが、気付いているのだろうか?
「まー、とにかく。アンタが魔法好きなのは良ぉくわかったよ」
あれだ。魔法使いっていうか、魔法職人なんだな、こいつ。
面白い奴だなと気持ちを込めてニヤリと笑った。




