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彼の興味範疇は狭い。
探しているものがあるのだ、と言うその魔法使いは虱潰しに世界中を回っているという。
名立たる都市を巡り、さらには遺跡の探索も行い『それ』を見つけるのだと。
今はまだ半分も行っていないようだが、それでもすごいものだと感心する。
何を探しているのかわからないが、ある意味酔狂の域だろう。
ここに来たのも今まだ発掘されていない遺跡がないか調査しに来たのだとか。
残念なのはこの辺りにかけた魔力探査の魔法に引っかかったのが、俺の酒だったという結果だろうか。
魔力の元を辿って地下に下りてみればそれしかないわけだから物凄くがっかりされたが、それに関してはちょっと納得がいかない。
そりゃーそーだろー。俺の自信作を見てあからさまに溜息なんぞ吐かれてみろよ。わかってはいても不機嫌になるってもんよ。しょーがねぇけど。
ホント、しょーがねぇってわかってるから文句もつけずに流してやった俺を誰か褒めてほしいぜ。
言葉には出さなかったが顔に出ていたのか、雰囲気で読み取ったのか。小さな黒い相棒が鼻で笑うようなしぐさでこちら見下ろす。
そこは慰めるところだろうとも思うが、これが奴の通常運転だ。傷ついたりはしない。
それにしても、確かに作る酒は魔力が宿るものが多いとはいえ、そんなものすら感知できるものなんだなと思う。
いや、待てよ。
地下室は何らかの特殊な方法で加工されていたことを思い出す。
もちろんそんな知識のない自身が建てることができるはずもなく、他の者に任せっきりにしてあとで説明を受けただけだ。
それは温湿度の為であり、またその部屋の存在を周りから遮断するためのものだったはず。
劣化してる可能性があるなら直してもらわなくてはいけない。
それとも、部屋に施されているのが魔法でそれが探知に引っかかったのか?
あー、今度あいつ呼ばねーとな。
どちらにしてもメンテナンスは必要だろうと独り言ちる。
忘れないように頭の端に留め置いた。
まだ昼間だというのに窓の外は暗い。
さらに言えば長雨の季節に入った為に、しとしとと降るそれのせいで視界も悪い。
暫くなら雨宿りに泊めてもいい。そういった代わりの暇つぶしに話を聞くうちに、一つ興味が湧いた。
―――海底都市。
妖精の街や精霊都市などと同じにふらりと立ち入れる場所でないこと。
ヒトの街すら数えるほどしか出掛けたことはない。酒やその素材にしか関心のない自分の行き先は大体決まっていて、ウロウロすることもあまりないし、大きな都市であれば確かに入り難いところもあるが。
そういった都市は「都市」とは名ばかりで「国」と等しい。その領地内は未知の世界だ。
自分の知らない果実やネタがあるに違いない。
興味深そうにしていたのを見て取ったのか、
「じゃあ行ってみるか?」
と言われれば速攻で頷いていしまうのも仕方がないに違いない。
海であれば何処からでも行けると言われ、すぐ近くの海岸を上げた。
「空飛んでった方が速いけど、どうする?」
などと言われて、こいつヒトじゃなかったんだっけ? 思う。
孤島に住むあいつのように何処かに仕舞うことができるとか。
そーいやー、同じ魔法使いだしな。
「へぇ。 アンタ羽根生えてんの?」
「そうじゃなくって飛翔魔法でだけど。羽根なんか生えてないよ」
「んー。ほら、魔法で生やせんのかと思ってさー」
軽く言った言葉に奴は目を見開いて、
「そりゃあ見た目だけなら幻影系のでできないこともないけど。実際にってなると変幻を応用すれば。いや、もう一人分抱えて飛ぶからにはただ生やすだけでは、……大きさや強度もそれなりに、となると……それとも」
途中から視線を明後日の方角へ向け、ブツブツと何やら自分の世界に飛び立とうとする男に。
「あー、じゃあいいや。そんな急いでるわけでもないしな」
とりあえず引き止めておいた。




