第七話
最初の運命の分岐点と、オレが想定している三歳になった。
……いや、まさか三歳の誕生日になってすぐに食事抜きとは、思わないじゃん。
準備を前倒しに進めておいてよかった。
どうもこのタイミングには意味があったらしい。
オレの誕生日は、三月三十一日、姉の魔子の誕生日は四月二日。
要は、魔子の幼稚園入園に伴う寮生活開始で、子供用の食事作る必要性がなくなって余りがでなくなったから、オレの食事がなくなったようだ。
三年コースじゃなくて、二年コースにしろよ、なんて言っても始まらない。
事前に想定していた通り、秩父の山奥付近の山中などのポイントで、採集生活を始めるオレ。
さすがに人里離れたと言っても、テレポートで移動できる範囲しか無理だからね。
三歳で電車やバスに乗ったら、どこかで警察沙汰になるリスクが高すぎる。
騒ぎになって、関わったために破滅するって人を出すのは避けたい。
せめて、扇谷家が警察も遠慮する名家なんて、むちゃくちゃな設定がなければ。
「お嬢ちゃん」
ある程度食材を確保して、家に戻ろうとしていたところに声をかけられた。
たぶん、今までがうまくいきすぎて、油断していたのだろう。
人に会うなんて、全く想定していなかった。
気づかないふりしてスルーすることも考えたけど、逃げ切れないと面倒が増えそうと言うことの方が、先にたった。
振り向いて相手を見る。
和服を着たおっさ……お兄さんがいた。
「おんみょうじ?」
呆気にとられて思わず呟くも、すぐに現実に戻る。
オレの前世は、ホモの陰陽師に終わらされたわけだからな。
危険と思わざるを得なかった。
「そこで陰陽師が出てくるとは。やっぱり、お嬢ちゃんは見かけで判断しちゃいけないね。ま、こんな山奥に幼女がいる時点でありえないんだけどね」
わかっちゃいた。
こんな山奥は、どこかの酔狂なオブローダや登山家でもない限り、一般人が来るわけないことは。
でもこの山奥で、おんみょうじスタイルが来るのは想像を越えていた。
せめて修験者だろう。
「君は気づいていなかったかもしれないが、以前から君のことは監視していた」
な、なんだって。
全く気づいていなかった。
「と、かまをかけてみた甲斐はあったな。安心したまえ。今日がはじめてだ」
思わず膝をつく。
や、やられた。
反応を見るためだったとは。
前世含めて、人生経験は豊富とは言えないから、簡単に騙されちゃうのか、オレ。
こんなんじゃ、この先生きのこれないぞ、オレ。
「それはともかくとして、何をしていたか、お兄さんに教えてくれないかね?事情によっては、密漁で通報するのはやめてあげよう」「密漁?」
想定外のことを言われた。人里離れた山奥なら、勝手にやっていいと思っていたけど、日本の利権に隙はなかったか。
「そう、君が手にしている魚は入漁料を払わないと採ってはいけないものでね。君は立派な犯罪者な訳だ。現行犯であるからには、警官ではない私にも逮捕する権利があるのだよ」
まずいな。
正体ばれてない今なら、逃げればなんとかなるだろうけど、家にばれて揉み消しとなったら、目の前お兄さんが不幸なことになりかねない。
オレへの食事供給再開と言う意味じゃ悪くないのかもだけど……
「黙っていても、なにも解決しないよ、お嬢ちゃん」
どうするか。
ううん、でもいいか。
正義感溢れる警官と違って、この人なら、人生チェックメイトから、ステイルメイトに持っていきそうな気がする。
それに、憎き陰陽師が一人抹殺されるなら、それはそれで悪い話じゃない。
「姉が全寮制の幼稚園に行ってしまってから、親が食べ物をくれないんです」
事実をいってみた。
「……」
相手は何も言ってこない。
おっかしいな、この件については、オレ嘘をついてないぜ?
「お腹が減って食べ物がないかな、と探しに来たんです」
「……」
あれえ?
なんか、顔が赤くなっているような。
「だから、見逃してください」
「お嬢ちゃん、冗談はいい加減にしたまえ。君のやっていることは、そんなことじゃ説明がつかない。
幼稚園に進んだばかりの姉がいる年齢で、この山奥で魔法を使って漁?
嘘をつくにしても、もう少しマシな嘘をつきなさい」
空腹云々はともかく、嘘はついてないんだけどな。
さて、どうしよう。




