第五話
side:里美
連日の報道の中であのことが報道されて流れが変わった。
そう、オレが3歳の時に食事を与えられなくなり、山奥でサバイバルしていたことがマスコミにばれたことだった。
扇谷家の元メイドで魔子に辞めさせられて恨みに思っていた人がばらしたらしい。
もっとも、山奥の話は彼女は知るはずもないからばれてはいない。
それでも、芦屋に養女になった経緯でもあるので、探られることにはなった。
それまでのオレは、魔子に対する加害者扱いだった。
妹に虐められ尽くされて暴走した姉という扱いをマスコミはしていた。
だが、三歳の時のことが表に出たことで、一気に扇谷が加害者でオレ達姉妹は被害者だって扱いになった。
いや、魔子は加害者側だと思うんだけど、マスコミは魔子を一度悲劇の被害者として扱った以上、扱いを変える気はないらしい。
学校や空港を破壊しつくして、電波ジャックした魔子を悲劇のヒロイン扱い自体おかしいと思うんだけどね。
もっとも、オレが名門芦屋の養女になっていることへのやっかみもあったようだ。
扇谷で虐待されていたのを見かねて、芦屋が養女にしたという憶測も出ていたけど、オレ自身が陰陽術の使い手となっていることをつかんでいるマスコミたちは、芦屋は芦屋で魔法目当てだったなんて言って非難している。
ま、晴明はもともとはそうだと言っていたけどね。
でも、オレ自身は晴明に引き取ってもらえたことで幸せになれたし、能明の妻にはなりたいと思っているしで、魔法目当ての何が悪いんだ? とも思うけどね。
こういったマスコミ世論の流れで、魔子は犯罪者としてではなく、被害者として本土に送られることになった。
警察の取り調べをやろうものなら、国家は被害者を攻撃しているなんて報道されかねない状態。
政治的判断が働いたようだ。
でもいいのか? 無差別殺人未遂犯を野放し状態にして。
扇谷家がボロボロになることについての感慨は、特にないけどさ。
オレにとっては、恩しかない芦屋家が攻撃されるのには、納得がいかないけどね。
その送られた飛行機が羽田に着いた直後にそれは起きた。
side:魔子
フフフ、私の実力をみんな思い知ったわね。
世論も私の味方。
でも、どうでもいいわ。
私は、私の世界に帰るのだもの。
空港から出たら、トラックに轢かれればそれでOKね。
魔子は死ぬかもしれないし、何か問題が起きるかもしれないけど、私の知ったことじゃないわ。
私は帰るだけ。
このひどい世界ともお別れね。
キキーーーーー
「バイバイ」
side:里美
「魔子がトラックに飛び込んで自殺を図ったわ」
「なんだって? なんでまたそんな馬鹿なことを」
「馬鹿でもないわよ。今でこそ、魔子は悲劇のヒロイン扱いだけど、化けの皮が剥がれ出していたしね。魔習院に問題なく通っていた貴女を強制的に淑美林に通わせていた話も表面化していたしね。京都の本邸から直接南海の孤島である淑美林まで、転移の魔方陣で通っている話の方に関心は向いているようだけど」
そういえば、そんなことになっていたな。
まあもっとも、芦屋天気の株主総会で体験コーナーを設けるなどしているから、知っている人は知っていたはずだけどね。
それでも、この長距離をとなると、驚異の存在となるようだ。
一瞬で、飛行機出移動レベルの距離を移動できるわけだしね。
「ま、命だけは助かったみたいよ。記憶のほうは飛んじゃって精神状態は、5歳に戻っていると判定されたようだけど」
「5歳? また幼くなったな。でも、自分の起こしたことを拒否するには、そのぐらいが良いのかな?」
「そうかもしれないわね。……そういえば、気づいている?」
「気づいているとは、何を?」
木南さんは、クスッと笑う。
なんだろうと思っていたら、
「しゃべり方が素になっているわよ。普段、ですます調を何があっても崩さない貴女がその口調は、新鮮だわ。私的には、そっちのほうが親しみやすくて良いけど」
「あ……」
まずい、気づいてなかった。
一応気をつけているつもりだったけど、魔子が自殺を図ったと聞いて、冷静さを失っていたかな。
でもまあ、魔子が生き残ったのは、魔子にとって幸せなんだろうか。
精神が退化したというのは、自分を受け入れたくないということなんだろうけど、5歳児にあの太った状態はかわいそうすぎる。
流石に、その状態の魔子を扇谷は放置しない(しようものなら、さらなる非難を世間から浴びる)だろうから、少なくとも何とかはなるのかもしれない。
精神が成長しなおした後に、自分がやったことを知りその後どうするか。
流石に気の毒と思わなくもない。
でも、自分でやったことだから自分で始末をつけるしかないだろうな。
「それで、貴女はこれからどうするの?」
「どうとは?」
「魔子に強制されてこの学校に通っていて、魔習院一本にすることもできる立場でしょう?」
「ああ、そういうことですか。少なくとも高校卒業までは、両方通うつもりですよ。魔習院よりもこっちの授業がメインになってますし、何より木南さん達との生活は楽しいですからね」
「口調がですます調に戻っているわね。まあ、いいわ、これからもよろしくね」
「口調には気をつけますよ。よろしくお願いします」
魔子の騒動は終わったけど、オレの里美としての人生はまだ続く。
淑美林学園の生活だってまだ続けるつもりでいる。
区切りはついたけど、終わりじゃない。
不幸にはならなかったが、幸せになれるかは、これからだな。
良い仲間達と一緒に頑張っていこう。
次のエピローグで、最終話となります。
今まで読んでいただき、ありがとうございました。




