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淑美林学園の騒動  作者: 三浦安針
第五章
38/40

第四話

side:魔子


 とうとう、この時が来たわ。

失敗しても失うモノのない私に怖いものなんて、何もないわ。

破滅したところで、破滅するのは私じゃなくて、本来の魔子。

彼女が路頭に迷ったところで、私はどうでもいいわ。


 そう、私は元に戻る手段を見つけたの。

きっかけは、ネットに強制接続してネットサーフィンをしていたことだった。

同人ゲーム紹介サイトで、淑美学園の騒動っていうゲームを見つけたのよね。

ナニコレ、と思ってダウンロード購入してみて驚いたわ。

淑美林学園が舞台の百合ゲームみたいなんだけど、主人公が魔子なのよね。

そして、私をさんざん邪魔してくれている里美は、私の出来そこないの妹として出てくる存在。

3歳の時に餓死しかけたなんて話を見ると、ちょっとは同情してしまうけど、その後を見るとただの無能デブね。


 でも、実際の里美は全然違うのはなんでかしら?

そう思っていたら答えが見えたのよ。

私と同じで、別の存在が里美を乗っ取っているんじゃないかって。


 そう考えたら、後は簡単だったわ。

ネットで、界渡りの秘法について検索したの。

実体が界渡りする方法は見つからなかったけど、魂だけを飛ばす方法は見つけたわ。


 すべてを失って失意のどん底になっている状態で、トラックに轢かれることよ。


 わかったからには、話が早いわ。

何か騒動を起こして、学園を追放されることが大事ってことね。

扇谷からも勘当されて、着の身着のままで漂って、トラックに轢かれる。

完璧な作戦よ。


 でも、どうせ騒ぎを起こすなら、派手なものにしたいわね。

可能なら憎っき里美も破滅させてやりたいわ。


 フフフフフフ。




side:里美


 なんか、最近寒気を感じることが多いんだよな。

学園祭が始まろうとしているのに、体調管理がしっかりしてないなんて、警備もやらないといけないのに駄目じゃないか、オレ。


「里美さん、魔子の結界の状態はどう?」

「ううん、何度か破られた跡がありますね。もっとも、本人が移動したわけではなく、電波が突破したって感じでしょうか。おそらくは、中からネット接続を行っていると思われます」

「ああやっぱり。でも、その同時刻に学園の別の結界には影響出てないし、魔子がクラッカーであるという話はないから、学園のシステムには影響なさそうなのが救いかしら。でも逆に何をやっているのかというのが不気味ね」

「そうですね。結界を破っている以上、何かをやらかそうとしているのは間違いありませんし。でも、結界を意図的に破っていることを理由に処罰はできないんですか?」

「ごめんなさいね。それは学園の警備システムが不備だということを公言することだから、できないのよ。だって、生徒1人の魔法すらも防げない結界しか張れないなんて、とても表には出せないわ」

「魔子が規格外すぎるだけなんですけどね」

「もっと、規格外のあなたがそれを言うの?」

「いえ、私の場合は、ただの魔法馬鹿ですから」

「そのセリフは、成績学年二位以下になってから言ってほしいな。先生、割と自信なくすこと多いんだよ」

「ははははは」


 魔子のことは、学校側からもフリーハンドで扱っていいと言われている。

まあ、姉妹喧嘩という形にしたいのはよくわかるけど、オレ自身が魔子のことを姉と思ってない状態でそれもなあとは思う。

それでも、魔子が何かをやらかすと傷つくオレと親しい人達がいると思うと、理屈とか抜きで魔子の暴挙を抑えたいとは思うけどね。


「学園祭を始めるにあたって・・・・・」


ドッガーン


「きゃあああああ」


 開会式を行っていた講堂のガラスがすべて割れて天井が落ち始めた。

洒落になってない。


「神籬発動!」


 なんとか結界を張って天井の落下を防ぐ。

もっとも、ガラスの破片でけがをした生徒達が大勢でているために、暴挙を防げたとはとても言えない。

運よく首を切るなどして即死した人はいないようなので、治療魔法が飛ぶことで死者は出さないで済んでいるようだ。

でもここまで行くと、完全に無差別殺人だ。

学校側に自分の立場を改善させるならば、逆効果もいいところ。

何をやりたいのかがわからない。


 せいぜい仕掛けるにしても、待遇改善せざるを得ない状況を作り出す程度の話だと思っていたんだよな。

前回みたいに塔に籠って、交渉するぐらいならまだ話としてわかるんだ。

やり方に問題はあったけど、自分の状況改善が目的とわかるから。


 でも今回は明らかに違う。

殺すつもりで来ている。

こんなことをやっても、状況改善どころか、刑務所行きになったらもっとひどい状況になるはずなのに。

夏はクーラーなし、冬は暖房なしの刑務所に閉じ込められるとか、今の魔子がやりたいとも思えないんだけど。


講堂を出た時には、もっと大騒動が起きていた。

島の空港が破壊され、管制塔が崩れ果てていた。

電気は生きているけど、これはわざと生かしているとみたほうが正しいようだ。


”淑美林学園の反社会行為”

なる番組がテレビの全チャンネルをジャックして流れていた。

魔子が悲劇のヒロインとして、不当に閉じ込められていると、全世界に対して訴えていた。

もっとも、本人が言ってることも支離滅裂で、日本語でしか言ってないから理解できる人はそこまで多くなさそうだけどね。


 淑美林学園が閉鎖されたとの宣言を粉々に破壊された空港の管制塔とともに流して、その番組は終わりとなった。

それを合図に、魔子の炎の攻撃が学園中を襲う。

本当、ここまで強い力持っているなら、有効に活かしていれば、こんな状況にはなりえなかったはずなのに。

何とか神術の結界で被害を減らしはするけど、無傷とは言えない。


 それに学園自体、今回の騒動で大ダメージだろう。

通っている学生にも悪影響が及ぶかもしれない。

復讐ができて、魔子は満足なのかな。


 魔子自身は、魔力を使いきったらしく満足そうな笑みを浮かべて気絶していた。


 学園祭はもちろん中止、抑えきれなかったことについては、姉妹喧嘩のレベルはとっくの昔に超えていると判断されてオレへの責任追及はなし。

むしろ、被害を抑制させてくれたことへの感謝をされた。


 魔子は即退学処分になったものの、本人が空港を破壊したせいで島を離れられないでいる。

いっそのことうち(芦屋家)の転移の魔方陣で送還しようとしたものの、本人が拒否っている以上出来ないまま。

扇谷も勘当を宣言して、本土に帰るにも、空港が復活してもチケット代を持っていないようだけどね。


 学園の授業再開にも一週間がかかり、テレビの取材攻勢に晒される状態。

ヘリの着陸を空港破壊を理由に拒否したから、飛び続けるヘリからの取材のみで済みはしたんだけどね。

それでも、一日中昼夜を問わずにヘリが島の上を飛び続けるわけだからたまったものじゃない。

騒音の酷さに、耳がおかしくなっている人も結構出ていたよ。


 余りにも過密に飛んでいたせいで、空中衝突しかけることが多発して、なんで管制しないんだと非難していたところもあったね。

管制塔が壊れているから、管制したくてもできないことわかってて言うんだから、始末に負えない。

校庭に強行着陸して取材してくる局については、不法侵入で訴えて警察に頑張ってもらいはしたけど、不当弾圧って報道された時には、もう何も言えなかった。


 第一、学園側の警備云々と言ってるけど、自分の局の電波をジャックされた脆弱な警備しかできない人達に言われたくないよな。


 自主退学しようとした生徒も出たから、その人達は、うちの転移の魔方陣で送ってあげた。

東京玄関や京都の本邸・各地の別邸にも取材陣が集まっている(やった魔子の妹であるオレの家だし)から、最終手段で皇居の中に設置してある魔方陣で脱出してもらう。

宮内庁も流石に今の状況はひどすぎると、快くOKを出してくれたけどね。


 完全に敗北状態なものの、事後処理に忙殺されることで気を紛らわせていた。

魔子は自衛隊の監視の下に置かれているけど、いつ暴発するかと冷や冷やしているようだ。

最悪米軍を応援に呼ぶみたいだけど、そのレベル相手に守りきれると思っていたオレを殴ってやりたい。

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