第三話
side:里美
最近はすべてが順調にいっている。
成績という話だと、木南さんたちの猛追をかわすのに四苦八苦というところではあるんだけどね。
一度なんかは同じ点数まで並ばれたし。
オレ、3問しか間違ってなかったんだけど。
前回の魔子の立てこもり騒動のこともあって、学校施設の結界強化工事が行われている。
魔子の魔力に対抗することはできないかもしれないけど、不測の事態を少しでも防ぐことが必要だと痛感したんだってさ。
魔子への警戒は強化されている。
もっとも、今の魔子では仲間と語らってとか事前準備をしてとかは、ほぼ無理なのはわかっているから、突発的衝動をどう抑えるかという状況だしね。
とうとうインターネット回線も魔子の部屋からは切断して、事前に外部の情報検索もできないようにしたとのこと。
無線LANただ乗りまでは防げないし、やろうと思えば、魔法で衛星に接続してネットということはできなくもないけど、外部との接続を禁止しているということを示すことが優先されたそうだ。
被害がオレだけで済むならともかく、他の生徒への脅威にもなっているしね。
ネットの検索を禁止したところで、魔法封じ結界すら破ってくる魔子のことだから、探査魔法などで情報収集はしてくるだろうけど、できることはやってますよアピールが重要なんだろう。
学校だって質の良い教育・環境を商品に授業料を徴収しているんだからね。
教育はともかく、環境がボロボロなんてなれば、来年の入学希望者に影響が出る。
その意味じゃ、オレがほかの人たちに勉強教えたことで成績が上がった分は、御金もらってもいいんじゃない?
別に授業料は扇谷が払っているし、晴明からは十分なおこずかいもらえているからお金には困ってないけどさ。
木南さん達に教えることで、オレの理解が深まっている面はかなり大きいんだけどね。
学園祭の季節が来た。
中学の時も学園祭はあったんだけど、そこまで熱心には参加してこなかった。
でも今回は、木南さんが学園祭実行委員になっていろいろ相談されることもあって、なし崩しに本格参加だ。
まあ、魔子が学園祭を狙ってテロ活動をするかもしれないっていうことで、警備のためにかかわらざるを得なくなったというのも大きいんだけどね。
無関係とするには、実の妹というのが枷になるし、何よりオレの陰陽術が大きな抑止力になると学校側から看做されてしまっている。
おそらく木南さんの学園祭実行委員就任も、オレにお願いするわけにはいかないからオレと親しい木南さんをというところもあるんだろう。
まあ、木南さん自身とても顔が広いから、学園祭の人手を動員するのにとっても便利だというのも大きいだろうけどさ。
実際、一年の参加率は中三の時と比較して、比べるべくもないほど高まっている。
このままいくと、木南さんが来年の生徒会役員就任は固そうだ。
ここまで人を動かせるとなるとさすがに壮観だし。
オレにも今年の段階で就任の打診来てたけど謹んで辞退させてもらった。
二つの学校通うために役員や部活やる余裕はありませんって言ったら、強くは言ってこなかったよ。
それに、オレの場合、実姉の問題もありますからと言って断れるしね。
その意味では、魔子の存在が役に立っていると言えるかも。
魔子もどうするんだろうな。
この状況で嫌がらせを仕掛けたところで、ますます自分の立場が悪くなることはわかると思うんだけどな。
中学のある時期までは、成績優秀で派閥のボスになっていたんだから。
それにゲームの主人公になっていたはずなんだから、頭は悪くないはず。
オレはゲームプレイしてないからどんな主人公だったのかは分からないけど、里美が起こす騒動を鎮圧してまわっていたようだから、状況判断能力もそれなりにはあるはず。
いくらゲームと現実が違うとはいえ、少なくとも人格そのものはそこまで変わらないと思うんだ。
まあ、オレがゲームでは高校で呼ばれる筈なのに中学で呼ばれるなど変化があったから、その辺も変わっているのかもしれないけどね。
それにしたって、もう後がないというのはわかっているはずだ。
この学校卒業したって魔子もオレも人生は続くんだ。
それを考えれば、今はおとなしくしておいたほうがいいとわかると思うんだけど。
その判断力も失われているんだと正直……ゲームの魔子も里美に対しては、同情しつつも幕引きをしてやろうと思っていたのかな?
今までお嬢様で来た魔子に勘当されて生きていけるとはあまり思えない。
強すぎる魔力を使って、なんとかできるかもしれないけど、生活レベルはどうしたって落ちる。
オレなら落ちたところで前世に戻るだけだからいいけど、魔子にはつらすぎるだろうし。
オレが心配する事じゃないのはわかっているけど、改心してほしいな。
それができるようなら前回の騒動は起きてないだろうし、難しいのはわかっている。
でもなあ。
まあ今は、学園祭の準備だ。
オレ自身は、陰陽術に詳しいということで、日本の魔術の歴史についての監修を頼まれている。
伝説の神術の存在についても知らない? と言われてドキッとしたけど、伝説は伝説、わからないよと返しておいた。
実際には、普段から使っているけどね。
忙しい日々を過ごすうちに、魔子の存在は、認識の外に消えていった。
side:魔子
今度こそ、今度こそは私の勝利よ。
私を冷遇したことを地獄で後悔しなさい。




