第一話
「私に妹がいるの?」
「そうです。公式にはいなかったものとされていますが、あなたと同じ学年になる里美という妹様が存在します」
なんだ、ちゃんと駒になる妹がいたんじゃない。
でも、公式にはいなかったものって、どういうことかしら?
「未熟児として生まれたため、奥方様が自分の子供であることを拒否されたのです。
三歳の時に、他家に養子に出され、公式にはいなかったことにされております」
ふうん、それなら、私が拾ってあげれば泣いて喜ぶに違いないわね。
一生の忠誠を誓わせるのも難しくなさそう。
「そんな妹がいるなら、ぜひこの学校に呼ばなければ。
そんな捨てたみたいなことやってるのがばれたら、スキャンダルよ」
「いえ、それが……」
あれ?いつもはイエスマンの執事が言葉を濁すとは珍しいわね。
「何かあるの?私の命令に従うのは嫌になったのかしら?」
「いえ、そういうわけではありませんが……」
「ならば、中学から妹を淑美林学園に通わせること。
これは命令だから、撤回はしないわよ」
力関係を再認識させないとダメだったようね。
執事の顔が真っ青になってるけど、どうしたのかしら。
「え?」
「いや、扇谷家の方がどうしてもと言って来ているんだ。何を今さら実家面をするんだと思うし、里美は私の子供だと思っている。
だが、養子縁組解除をちらつかされると、どうしても弱いんだ。法的には、無効にすることはできないんだが、扇谷家が実家の権利として、
離縁を宣言した場合、芦屋家の一員として扱うことが出来なくなってしまう。悔しいけれど、里美が芦屋家の一員でいる為には今回のことを受けるしかない」
このまま、魔習院の中学に通うことになると思っていたのに、急に実家の横槍で淑美林学園に通わないといけないと言う。
淑美林学園ともなると、全寮制で絶海の孤島だけにそこに住み込むことになる。
そんなことになったら、能明にも会えなくなるし、一族の会合に出たり魑魅魍魎退治が出来なくなる。
それは嫌だし、何を今さらとも思う。
「なんとかならないのか?さすがに、長期休みにならないと能明に会えないのは嫌だぞ」
「嬉しいことを言ってくれるね。……ごほん。寮については入らないでいいと学校側と調整してくれることになった。
幸い転移の魔方陣を設置すれば、通学も可能だからね」
あ、そうか。うちの場合は、転移の魔方陣があるから寮に入らなくても通学できるのか。
それならまだマシだなとも思うけど、魔習院にそのまま通うと思っていただけに、ちょっと心理的には複雑だ。
「あ、魔習院の方も籍は置いておけることになった。流石に全部の授業は無理にしろ、ある程度の授業には出ても良いそうだ」
それは助かる。
一般魔法の授業については、魔習院での授業はためになるし、仲良くなった友達と授業を受けられなくなるのはつらい。
「そういう条件なら、まあいいかな。でもそうなると学費が二倍になって大変じゃないか?」
「何を言ってる。里美は、魔習院では既に特待生だろう。それに、淑美林の方は、扇谷家が全額出す。
芦屋家にとっては、転移の魔方陣設置及び維持以外のコストはないよ」
「あ、そうだったんだ。しかし、オレが特待生って、ちょっと恥ずかしい」
「成績優秀だからこそなんだから、胸を張りなさい。私も誇りに思っている」
そんなこんなで中学から淑美林学園に通うことになった。
原作では高校から通っている筈だし、そもそも全然状況が変わっている。
淑美林学園での生活がどうなるか不安だけど、それなりに準備はしたと自負できる状態ではあるし、ぶつかって行こうと思うぜ。




