第三話
ファソラシレミファソラー
地下鉄に乗り、討伐場所へ向かうオレと能明。
もう一人の人とは、駅で待ち合わせする予定になっていた。
今後の同行者についての結論は出してないけど、まずは顔合わせということで現場へ向かうことになった。
今日の現場は、お偉いさんの子息達が後継者としてふさわしいことを学ぶための学校がある街のガード下。
魑魅魍魎にしては、移動がほぼできないということで大したことがない相手ではあるそうだ。
ただ、移動する人達に悪戯を仕掛けていることで結構弊害が出ていた。
迂回するにはかなり回り道になっちゃうガード下だけに通る人は多いし、一方通行とはいえ車もかなりの頻度で通るとなると。
行ってみたらとにかく天井が低かった。
本当に車通るの?と思ったら、被害の多くは本来通れるはずの車がなぜか少し宙に浮いて天井に激突するというものだと聞いて納得したぜ。
ぎりぎりの高さしかない所を少し浮かされたら、すぐに被害出るだろうし。
タクシーの提灯が天井にぶつかった時には、割れて歩行者にも被害が行っているというからしゃれにならない。
魑魅魍魎が視覚できない人達からは、タクシーが自分の高さを意識しないで通ったせいと思われて風評被害まで広がっているとのことだから早期解決が望まれた。
そこで不思議に思った。
魔法が一般的な世界なんだから魑魅魍魎が一般人に見えないのがおかしいと。
「あれ?一般人には魑魅魍魎が見えないんですか?」
駅で合流したエキスパートの人に質問してみる。
今さら何をと思われるかもしれないけど、こういうことって大切だと思うし。
「正確には、見ようとしてみないと見えないというのが正しいかな。
誰でも見ようと思えば見られるんだ。目に魔力を集めて大気中の魔法物質と反応させれば簡単に見ることができる。
学校の授業でも習う話だから、思い至れば見ることはできる。
実際今回の話が出たのも、授業で習ったばかりの魔法の目を使っていた子供が気づいたことで、周りの大人達もやり方を思い出してみて確認したって話だしね」
成程。
オレは普段から無意識に見られるようにしていたけど、一般人はそこまでしていないということか。
確かに、多くはないとはいえ魔力を消費するんだし、わざわざ疲れることはしないというのも納得。
ガード下のメンテナンスをするという名目で一時封鎖をして退治が始まった。
……いやまあ、確かに事故が起こらないようにメンテナンスするのは確かなんだけど。
魑魅魍魎は、子供のような身体で爺さんみたいな顔をしたいかにも、餓鬼という感じの存在だった。
どうもその場所からはほとんど動けない地縛霊のような存在らしく、遠距離から魔法攻撃して倒すとのこと。
相手のリーチに入らなくて済むなら、その方が安全だし合理的だな。
眺めるだけで良いなら今回は楽だな。
急に後ろから抱き締められた。
この場にいるのはオレと能明とエキスパートの人。
エキスパートの人が前にいるということは必然的に抱き締めてきたのは能明。
「なんだ?」
「里美が怖がると思って、抱きしめてあげる」
いや、能明が震えているのを感じられるのは気のせいか?
オレは前世で見慣れているけど、いくら陰陽術の家の跡取りと言えど中学生には刺激が強いのかな?
強がっている所がかわいらしいし、不快じゃないので身を委ねる。
彼氏いない歴=前世と現世の年齢合計のオレでも、こんな感じに抱かれるのも悪くないと思うし。
もっと大人になったらこんなことしてくれることもないだろうし、子供の特権として大いに堪能しよう。
「こうやって、狭い場所で炎の魔法で燃やしつくす場合には、一酸化炭素等の有毒ガスが発生するし、酸素が足りなくなるから、
それらを調節するために空気を浄化する魔法も一緒に使うんだ。
今回は君達の為に、温度調節の魔法も使っている。
一度に複数のことをやらないといけない為に、一人が倒すことに専念してもう一人がサポートをするということが多いね」
おお確かに、オレ達もいるのにその生存を脅かすような状況にするのはまずいな。
ただ、神術を使えば直接浄化が出来るので、今回の配慮要らないと思ったのは言う必要ないか。
実際、エキスパートの人は一人ですべてをこなしているわけだしさ。
同行者を用意するメリットはわかるけど、今回のだけじゃ押しが弱いかな。
退治そのものは簡単に終わった。
ただこういう場で直接戦わないといけないとなると、身長高い人には不利だろうと思う。
自分が思ったように戦おうと思えば頭をぶつけることになるだろうし、そう言った対策の為に同行者がいる方が良いだろうなとは思う。
天井の線路を一時的に何とかしないといけないだろうし。
今回の場合は、上を電車が通る音がするぐらいだから壊すのは無理だろうけど、そう言ったことができる人員もいるだろう。
だから、同行者が必要だというのもわかりはするんだけどね。
理性でわかるからこそ悔しい。
今は、そんなことを忘れて能明の腕の中で癒されていたいかな。




