第一話
私は、扇谷 魔子になって、7年が経った女の子よ。
元々は、こことよく似た世界で普通の女の子をやっていたんだけどねえ。
気づいたらこうなっていたけど、それなりに楽しんでる。
元々の子がお金持ちの娘だったおかげで、私もそれを享受している。
幼稚園小学校クラスの勉強なんて前世の記憶があれば勉強なんてしなくても満点がとれる。
魔力(この世界魔法があるのよね)も膨大というスーパー少女っていいわよね。
それなりに旧家だったこともあって、とりまきもたくさんできたし、うちの学年を牛耳る一人として君臨しているの。
私に逆らうと、島から追い出されるという噂も流れているみたいだけど、実際にそんなことを私はやったことないわ。
ただ周りが判断してくれるだけ。
もっとも目障りな女もいる。
この学校は女子校だから、一部の先生や職員以外全部女の子なんだけど、名門であることだけをとりえに君臨している嫌な奴がいるのよね。
楠山家とかいう旧宮家の分家の木南家の清香って女。
魔力も多少はあって名門だから、小学校からの入学にすぎないのにあっという間にとりまきを集めて私と敵対してくれる。
所詮は、旧宮家のしかも分家なくせに生意気よ。
いつかはあの女、この島にいられなくしてやるわよ。
小学校の授業は簡単すぎると手を抜こうとしたけど、実際に授業を受けてみると割と勉強しがいがあった。
前世知識や幼児の頃に手に入れた知識があるから、基礎的なことは大体分かるつもりになっていた。
でも、人の記憶はいい加減で一度覚えたからって、すぐに正しく覚えいているとは限らないんだよな。
特に固有名詞系は、前世と微妙に名前が違うと混ぜるな危険になったり、前世知識とは逆になっていることもあった。
特に、源頼朝と義朝の親子の名前が逆とかないよと思ったっけ。
算数も魔法方程式の授業があるからか、数学と算数の明確な区別がなく、方程式や因数分解を小学校から習う。
63×57を計算するのに、(X+Y)(X-Y)=X(二乗)-Y(二乗)で、(60+3)(60-3)=3,600-9=3,591なんてのは、
ああ確かにその通りだなんて感心したっけ。
後は、魔方陣を作る授業がやたらとある。
儀式魔法や転移魔法で魔方陣を多用するからということもあるようだけど、純粋に魔方陣や数学的な研究が前世の世界よりも盛んだというのが大きい。
前世の世界じゃ、若者の理系離れが問題視されていたけど、現世の世界じゃ若者の文系離れが問題になっているとのこと。
オレ、前世で理学部に通っていてよかったよ。
体育の授業も興味深い。
補助魔法を使った運動と使わない運動を比較することをメインとする授業になっていて、魔法が一般的な世界でありながら、敢えて魔法なしでのスポーツが重視されている。
勿論補助魔法を使った動きもしっかり身につけられはするけど、元々の体力があれば補助魔法の効果は大きくなるということをみっちり身体に叩き込まれた。
私学の魔習院が特殊なのかもしれないけど、正直有意義な授業が多い。
赤ん坊時代からの先行チートは健在だけど、サボっていたらすぐに抜かれるなという危機感を持てるレベルには、周りのみんなもレベル高い。
そういうこともあって、割と友達も増えた。
「里美、今日授業終わったら修行しようぜ」
「良いよ。早く行こう」
声をかけてきたそのうちの一人が、二条健一君。
魔力もなかなか強いし、魔力を使わない運動神経なら、オレも最近では並ばれていると感じるようになった男の子。
でも性別の違いを感じさせない気持ちいい相手だ。
修行と言っても、木刀で叩きあったり同じ部屋で座禅するといったレベルなんだけどね。
「頑張ってますね」
修行をしていたら、入口に兄の能明が来ていた。
中学生になったこともあって身長も伸び、そろそろ立派になってきている能明。
顔もイケメン顔だし、さぞかし女の子にモテてるんだろうなって思ってる。
小さい頃の能明を知っているだけに、大きく成長したなとつい、優しい目で見てしまう。
「今日もその子とですか。芦屋屋敷で一人でやった方が効率いいでしょうに」
なぜか、能明は健一と一緒にいると口が悪くなる。
思わず、
「いや、健一と一緒だからこそできることもあるし、せっかく誘ってくれたんだからいいじゃん」
反論してしまう。
ううん、我ながら大人らしくないな。
健一は健一で、
「ほらほら、邪魔ものはどこか行って」
なんて言ってくるし。
この二人、なんで仲が悪いんだろう。
特に能明は、小学生相手に中学生が大人げないぞ。
二人の木がすむまで口論しているのを眺めていた。
そんなある日のことだった。




