第二話
「うわああん」
「悪いのは、あなたなんだからね。私は悪くないの」
「……いや、それはない」
オレは戦場にいた。
世間的には、名家の子女が通う幼稚園なんだろうが、子供は子供。
そんなに大差がある訳じゃない。
今も、積み木で建物を作って遊んでいた子から、基礎部分に使っていた積み木を自分が使いたいからと無造作にとって崩した女の子がいて、騒動が起きていた。
女の子は、使いたい積み木があったからとっただけで、悪いのは先に使っていた子だと主張して譲らない。
誰が見ても、悪いのは……だけど、ここがややっこしいのは、親の権力が子供同士の関係に影響することだ。
先生達も、社会に出たら否応なく経験するのだから、慣れるためにもと言って放任している。
単に、親の報復が怖いだけじゃとも思うが、そういうのが嫌なら、この学園にあわないので転校勧告出されると言うから、徹底してはいる。
でまあ、騒動を起こしている女の子が、オレの依頼対象のお嬢様、木南清香ご令嬢だったりするんだな、これが。
わがままなことを純粋と表現するとはなかなかだなと思えたのは、最初のうちだけ。
すぐに振り回され、木南家のお付きの人もお嬢様の言うことが絶対正しいで通すために、結果として、オレが謝罪に動く羽目になった。
「清香お嬢様にも悪気があるわけではないのです。申し訳ございませんが、今回は許していただけませんでしょうか。
私からも清香お嬢様には、なぜトラブルになったのかをお伝えいたします」
五歳の女の子がやることじゃないよ。
それでも、オレが謝罪に赴くだけでもちょっとは違うらしく、
「貴女も大変ね。芦屋家の御嬢さんであるのに、木南のご令嬢の世話もしないといけないなんて。貴女に免じて、今回は水に流してあげる」
なんて言ってもらえることが多い。
最近じゃ、謝りに行くとオレ用にお菓子が用意されているという状況。
謝りに行っているのに接待されるって、複雑な気分だ。
正直、旧宮家に連なると言っても、楠山宮家自体そこまで名門じゃないし、しかも木南家はその分家。
第一、旧宮家自身、先祖が皇族だったというだけで制度的な存在じゃないわけだし。
伝統や尊王を重んじる人ならともかく、実際の影響力は大したことないわけだ。
勿論、送迎にお付きの人が来るぐらいだから、それなりに裕福ではあるんだけど。
オレ自身、予言の話がなければ、さっさと放りだしていた可能性が高いな。
魔法の才能は、他の園児と比較すればある方ではあるけど、加減というものを根本的にわかっていないようだから、結構危険だ。
実例を挙げれば、食事前に手を洗おうとして空中に水を召喚して、食堂を水没させたなんてことがある。
それ以前に、食堂で水を召喚するなというのはあるんだけど、水没させるほどの水量は手を洗うのには、絶対に必要ない。
何とか、オレが水を全部排除して床や壁は乾燥はさせたけど、他の園児や先生達への被害はどうにもならない。
先生達は苦笑いしただけで、叱りつけてはこなかったけど、オレから一人一人謝ってまわることに。
流石に怒り心頭な親もいて、貴女が謝りに来たところで意味がないから本人連れて来いと騒がれたりした。
それが出来れば、オレが代わりに謝ることもないわけで、前途多難だ。
晴明に頼んで、芦屋家の便宜を図ってもらうことで解決したけどさ。
晴明も宮内庁通じて改善すべきと提案したようだけど、目に見える効果は出てないのがなんとも。
依頼を出してきた政府側の窓口の人は、オレと晴明相手に土下座してきたけどね。
年齢の割に髪の毛が白くて薄くなっているのは……苦労しているのはオレだけじゃないんだなって、実感したよ。
そんなトラブルだらけの日々に慣れてきた頃に、次なる予言が下った。




