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淑美林学園の騒動  作者: 三浦安針
第一章
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第九話

 あの後、トントン拍子に話は進んだ。

養子にするとなれば、魔法のことは黙っていてくれたみたいで、占星術で占った結果なんて言う、陰陽術の名家以外が言ったら、即帰れ!な理由を名目にしてくれたようだ。

扇谷の家は、大喜びで追い出してくれた。

さすがに本人がいる前で使ってた服や家具を燃やすのは、どうなんだろう、だったけど。

養子や嫁に出すときは、帰ってこないようにとの意味を込めて燃やす習わしだなんていってたけど、芦屋の迎えに来た人もドン引きしていた。


 今日から現世のオレは、扇谷里美から芦屋里美になる。

ゲームにはなかった展開だけど、ここは現実世界だ。

不安はあるけど、オレと里美が幸せになるためには、ゲームの展開そのままじゃダメなんだ。

そう言い聞かせて、不安をおさえつけるオレ。

要は、この選択に自信がないけど、選択してしまった以上やるしかないと言うのが現状なんだよな。

その意味では、服を燃やしてくれてありがとうとお礼を言うべきなのかもしれない。


 そんなことを考えていると、芦屋家の東京玄関に着いた。

屋敷は京都にあるけど、転移の魔方陣ですぐに移動可能なので、玄関は日本各地に分かれているんだとか。

魔法のある世界らしいと言えばそこまでだけど、玄関だけで、建て売り住宅一軒分の広さがあることに圧倒されてしまう。

実際、用件によっては、玄関で会って済ませてしまうこともあるとか。


 そのまま屋敷にひとっとび。

リニア新幹線が京都を通らなくても、関係ないぜ。


「お嬢様、お帰りなさいませ」

 いきなり執事風の老人に声を掛けられて、面食らうオレ。

まあ、確かに今日からはこの家に帰ることになるんだろうけど、最初はいらっしゃいじゃないのかな?

でも、お帰りと言ってもらえたことは嬉しかった。

現世になってから、始めて言われたことでもあるし。

……これまで、勝手に出ていただけで、出かけていたことも認識されてなかったとは思うけどさ。


「えっと、よろしくお願いすると言った方がいいのかな?うんと、どう呼べばいいんだろう」

「お嬢様のお好きにされるのがよろしいかと。申し遅れました、芦屋家執事の剣崎義昌と申します。お見知りおきを」

「じゃあ、執事さんで良いのかな?」

「どうぞ、ご随意に」


 ううん、執事というのは慣れないから困るな。

扇谷にも執事はいたんだろうけど、オレが会うことなんてなかったし。


 そして、応接間らしき部屋に連れて行かれる。

そこには、オレを養女にすると言いだした晴明とその息子らしい子供がいた。

子供は、年齢的にはオレより少し上になるのかな?

中身の年齢的には、かわいい少年としか思えないけど。


「今日から君は、芦屋家の子供だ。扇谷で色々あったかもしれないが、芦屋では私の娘として、過ごしてほしい。

 ここにいるのが、私の息子の能明、5歳だ。仲良くしてくれると嬉しい」

成るほど、能明がオレの兄になるわけか。

「里美です。よろしく」

一応初対面ということで、猫を被ってみる。

「能明だよ、よろしくね」

 なぜか顔を真っ赤にしながら、自己紹介してくる能明。

まあ、これまで妹がいなかったんなら、そんな反応だろうと思うけど、新鮮で良いな。


 その後食事の場で、

「子供に食事を与えるのは、胃に直接魔法で送り込むのが正式なものじゃないのか」

 なんて呟いて、芦屋の人達を混乱させるなんて言うアクシデントがあったものの、概ね平和裏に芦屋家の一日目が終了した。

家族の団らんなんて現世では始めてだっただけに、心温まって涙が出てきた。

そっか、オレも家族のぬくもりを求めていたんだな。

それを与えてくれた晴明のおっさんをお父様と呼んであげても良いかもしれないと思いながら、

久しぶりに気持ちの良い眠りに落ちたオレだった。

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