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この作品には 〔残酷描写〕が含まれています。
苦手な方はご注意ください。

廃人Aの穏やかな日々

作者: ひまなひと

 大概の人にはどうして捨てることのできない掛け替えのない大切なものがある。

 家族、恋人、親友、仕事、金、……一般の人にはこの辺があてはまるだろうか?

 しかし中にはこういったものをあまり大事に思えない奴もいる。オレもそういう人種の一人だ。彼らの大切なものは私にとっては重い枷以外の何物でもない。特に家族ってやつは難儀なもので、己が生まれてきた以上、必ず産んだやつがいて、少なくともそいつが死なない限りは家族あるいは、血縁の者が居るということになる。

 私の家族は実に“いい人”である。これは皮肉ではない。客観的に言って、彼らは大切にするべき素晴らしい人達である。だから余計に性質が悪い。いやな奴らだったらどうでもいいと捨ておけるのに。

 なんで彼らからオレのような“異物”ともいえる人種が生まれるのだろうか?

 フッ、ままならないものである。

 今だってそうさ。こうしてオレはこんなことをしているのだから。

 

 今オレはランニングをしている。前を走っている奴の日課だからだ。30メートルくらい前にいるだろうか。まったく部活が終わった後だというのによくやるものである。

 さすが運動部だけあってあいつは結構速い。しばらく走ったところでやっと目的の区間についた。この林道につくのを待っていたのだ。オレは一気に距離を詰めていった。あいつもそろそろ気づくだろうか?

 案の定あいつはオレが追いついたところで振り返ってこっちを見たので、やつの首を抑えつけた。そこでオレはやつの顔めがけて殴りかかった。

 相手が反応するように加減して打ち込んだのがよかったようだ。やつが顔を腕でガードしようとして空いた鳩尾に、本命をぶち込んで相手の行動力を奪った。

 その後、オレは後ろに回り込んで首を絞めあげた。できれば素手でと思ったが、相手の抵抗も結構強く、体重も重いので、振り切られる恐れがあった。しかしこちらとしては逃げられる訳にはいかない。

 

 振り切られてしまう前に片付ける必要があったので、オレは腰に仕込んであったナイフを取り出し心臓めがけて思い切り突き刺した。骨の合間をくぐって研いだ金属片がこいつの体に入り込み、命の灯をかき消す手ごたえを確かに感じた後で、ナイフを引きぬき、脈を探り、こいつの鼓動が止まっているのを確認した。その後で、着ていたジャージとと手袋をリュックに入れ、ナイフの血糊を拭き取り、近くに人の気配がないのを確認してから、走ってその場を後にした。

 

 嫌なものだと思いつつも、この胸のどこかには確かな充足にも似た感情が1ミリグラムほど混じっているのを感じる。だからオレは“異物”なのだ。

「まったく。難儀なもんだぜ」

 苦笑いをしつつ、オレは走るペースを上げた。




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