表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
6/30

口裂け 5

 翌朝の教室。霊禍れいかは珍しく時間に余裕を持って登校してきた。わたるの隣に座り、昨日の呪物を机の上に乱暴に置いた。


「コイツはひでぇ呪物だよ。マジでシャレにならない」


「そんなに?」


「外側の紋章はほんの一部。内側を覗いてみろ」


 亘は言われるがままに、箱の中を覗いた。


 ──一瞬(いっしゅん)、言葉を失った。


 隅から隅までビッシリと刻み込まれた、おびただしい数の呪文と紋章。最奥の五芒星を中心に、無秩序な形で並んでいる。一つ一つの文字の大きさは針の穴よりも小さく、それなのに重厚な存在感を放っている。


 本能が警告する。これ以上この空間を覗いてはならない。その拒否感は、難解な専門書を開いたときのそれに似ていた。だけれども、それ以上に何か、説明のつかない生理的な嫌悪感も覚えた。


 知的拒絶と本能的拒絶の板挟みに耐えきれず、亘はすぐさま呪物の口を下向きにして机に置いた。


「これ、まさか解読を⋯⋯?」


「あたりめーだろ。ざっくりとだけど。五時間くらいかけて」


「また徹夜⋯⋯?」


「完徹じゃねーけどな。どっちにせよ、お姉ちゃんが夜中に泣き始めて寝れなかったから、別にいいんだ。

 ──ってかそんなのどうでもよくて、本題は呪物の効果だっての」


 霊禍は呪物をランドセルに放り込み、椅子に深く座り直した。


「この呪物の効果は、『使用者が強く望んだ幽霊を召喚する』ことだ」


 強く望む。亘はその条件に聞き馴染みがなかった。


「理由は知らんが、この呪物を埋めたやつは、口裂け女を呼び出したくてたまらないらしい。そういう強い情熱が、この薄気味悪い箱の原動力だ」


「ってことは、犯人は口裂け女マニア?」


「そんなマニアがいるのか知らねーけど、まぁそうなんじゃねーの?」


「どうやって探そうかな⋯⋯」


「その辺の算段はもうついてる。その呪物、一個だけで作動してるわけじゃねーからな」


「え?」


「これと同じものが、他に四つ。合計五つでこの召喚は完成する。そういう前提の構造になってんだよ。ちなみに今持ってるのは一つ目だな」


「いやいやいやいや、冗談だろ。もう既に一般人に見えるレベルになってるのに、ここからさらに進化するってこと? だとしたら、召喚が終わる頃には、僕たちの手に負えないレベルに⋯⋯」


「残念ながら、そういうことらしいな」


 亘は黙り込んだ。そうしているうちに、教室に先生が入ってきて、朝の会を始めた。


「亘、そんなビビんなよ。見てらんねーから」


「でも、口裂け女が完成したら、どうしようもなくなる⋯⋯!」


「⋯⋯ひとつだけ解決策がある。たった一つだけど、最も確実な解決策がな」


 亘は顔を上げた。霊禍のキメ顔が眩しい。


「今日中にブッ殺す」

要するに口裂け女は呪物五個で完全体になり、そうなると強すぎてどうしようもないんです。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ