第七章 ユキ——五歳の冬
五歳の冬、レンが熱を出した。
三十九度。医療センターに連れて行き、診察を受けた。治療費は無料だ。薬代も無料。それは最低保障の中に含まれる。
しかし問題は、ユキの仕事だった。
ユキは事務補助の仕事をしている。持ち点が中程度なくても続けられる仕事だが、休むと評価点が下がる。評価点が下がると、持ち点も下がる可能性がある。持ち点が下がると、クレジットが減り、来年のカリキュラム費用が削れなくなる。
三日間、ユキは仕事を休んだ。
レンの熱が下がるまで、ずっとそばにいた。
熱が高い夜、レンは「ユキ」と呼んだ。
「なに」
「いてくれる?」
「いるよ」
「ずっと?」
「今夜はずっといるよ」
「今夜だけ?」
ユキは少し黙った。
「今夜はずっといる。それだけ今は考えよう」
レンは目を閉じた。ユキは手を握ったままでいた。
夜中、レンが寝入った後で、ユキは端末を開いた。
評価点の通知が来ていた。今週の仕事の評価——平均以下。休んだからだ。
それを確認して、端末を閉じた。
暗い部屋の中で、ユキはレンの寝顔を見た。
熱はまだ少し高かった。でも呼吸は落ち着いていた。
レンの素体スコアは、上位二パーセントだ。その可能性を育てるために、ユキはカリキュラムを選び、ログを取り、クレジットを計算し続けてきた。
しかし今夜は、そういうことを考えていなかった。
ただ、この子が元気になってほしいと思っていた。
その二つは、別のことだ。
ユキはそれに気づいていた。そして気づいていることを、どう扱えばいいかわからなかった。




