第十章 レン——六歳の春
六歳になったレンには、少しだけ世界が広くなっていた。
公民館での集団活動に参加するようになり、同じ年頃の子どもたちと接する時間が増えた。
その中に、イツキという子がいた。
イツキは持ち点が高い家の子だった——正確にはまだ試験前だから「持ち点」はないのだが、生みの親の持ち点が高いということを、イツキ自身が話していた。「うちは評価点がたくさんもらえる」と、当然のことのように言った。
レンはその言葉の意味が、よくわからなかった。
「評価点がたくさんもらえる、ってどういうこと」
「持ち点が高い人が、たくさん評価点をくれる。うちのお父さんはいっぱいもらってる。だから俺もそのうちもらえる」
「もらえるって、なんで?」
「評価点は、つながってるんだよ。高い人が高い人を評価して、評価点が増えていく。俺のお父さんがよく言ってる」
レンはその説明を聞いて、何かが引っかかった。
「でもそれって、最初から持ち点が高い人しか、ずっと高くならないってこと?」
イツキは少し首をかしげた。
「そうじゃない人もいると思うけど」
「でも、たくさんもらえる人は、ずっとたくさんもらえるってこと?」
「……そうかもしれない」
レンはその会話を、夜ソラに話した。
「ソラ、こういうことってほんとにある?」
「評価点の流れ方には、そういう傾向があります。持ち点の高い人は、持ち点上限が高いので、より大きな評価点を贈ることができる。そういう人から評価を受けた人は、得点が上がりやすい」
「じゃあ、最初から持ち点が低い人は、ずっと低いってこと?」
「必ずしもそうとは言えませんが——傾向として、持ち点が上がりにくい構造はあります」
「それって、おかしくない?」
「おかしいかどうかは、何を基準にするかによって変わります」
レンはしばらく考えた。
「ユキの持ち点は低い」
「はい」
「ユキが努力してないからじゃない」
「……その判断は、私にはできません。ただ」
「ただ?」
「持ち点が上がりにくい状況に、いることは確かです」
レンはその夜、ユキが台所で夕食の準備をしているのを見ていた。
ユキはエプロンをつけて、何かを切っている。端末を横に置いて、ときどき何かを確認しながら。
あれはカリキュラムのログを確認しているのかもしれない、とレンは思った。いつもそうしているから。
なんで、とレンは思った。
なんでユキはそんなに頑張っているのに、持ち点は上がらないんだろう。




