まーつりー!
今日は待ちに待った、祭りの日。
俺の、勝手に決めた、晴れの舞台。
ケッパレよりも、ハレがいい。
天気も晴れるし、人も飾って美しい!
甚平、浴衣に、下駄に、日傘!
いやぁ、夏!って感じじゃん!
ワクワクしちゃうね、俺好み!
こんな日は、誰も呼んでないのに、家を飛び出したくなる。
そう、今日の俺は完璧なんだ。
必殺技も仕込んだし、部屋も珍しく掃除して、俺自身もピカピカに輝いている。
これで、祭りが来たと聞きゃ、行くより他にないってもんよ。
いやぁ、ワクワクしてくらぁ。
別に俺の舞台はないけどさ。
誰かの舞台はあるんだろう?
踊って歌っていいんだろう?
これこそ、俺のスーパータイム!
やっぱ、夏だぜ! スペシャルタイム!
……ちょいとイタズラも仕込んできたし。
仕込みが表に出るまでは、どのくらい?
俺は勝手に思ってる。
俺のファンはきっといる。
俺の思わぬようなとこにいる。
例えば、知らない隣の人や、街ですれ違うイカした誰か。
名前も姿も知らないけれど、それでも、おんなじものを見て、『すげぇ』と思うその心。
それがあるなら、友達だろう?
……友だちだって、思わせて欲しい。
祭りが終われば、ただの人。
祭りがなけりゃ、社会の底辺。
頼むよ、今回、この場だけ。
祭り限りの友でいい。
それで俺は充分だ。
それで俺は、幸せだ。
何にもないよな人生で。
良かった時は、祭りだけ。
だから、俺は祭りが好きで。
誰でも彼でも浮かれて踊る。
猫も杓子も犬まで踊る。
それが、毎日あれば、と思ってる。
そうすりゃ、余計なことはご破産で、楽しいことだけ選んでいける。
そうじゃあ、ないかい、皆の衆?
「踊る準備はいいかしら?」
カシラは、笑って言うんだぜ。
「踊るの苦手。僕はヤダ」
だから、俺は言い募る。
「あんたの踊りが見たいんだ!」
カシラが折れてくれるまで。