表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
『農奴たちの盆地国家』~人頭税が高いので独立しました~  作者: 塩野さち
第二章 男爵領

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

22/23

第22話 300銀貨(ソル)の衝撃

【商人ルギン26歳視点】


『ヴァルディス歴311年、5月15日、夕刻、晴れ』


 夕刻になって、アルベリア村のカブ祭りは終わった。


 ふう、しかし、この村は春から祭りとは贅沢をする村だぜ……。


「どうです? ルギンさんにゴルバさん。良かったら館で残りのカブを食べていきませんか?」


 リク男爵が、慣れない様子でお辞儀をして誘ってくる。きっと貴族のお辞儀に慣れていないのだろう。


・背筋を伸ばし、手は胸の前か腰に添える。

・上半身を15~30度前傾させる。

・同時に相手の目を軽く見て、目線を一瞬下げる。

・「感謝」と「余裕」の間合いを保つのが上流流儀。


 とまあ、俺も知識でしか知らないが、リク男爵はぎこちないながらも、これらの所作を行っている。


 俺は平民なので、上半身を45度ほど前傾させた。


「……お受けいたします」


 チラッと横を見ると、ゴルバのヤツのほうがうまくお辞儀をしていた。まあ、コイツは武器販売免許を持っているくらいだから、貴族と付き合いがあるのだろう。


 俺とゴルバは、館の会議室兼食堂のような部屋に案内された。


 部屋には、リク男爵以外に六人の少年少女が座っていた。


 それぞれが、カイ、ディノ、マリル、サラ、ユナ、エリクと名乗る。この少年少女たちは、どうやら村の若き幹部連のようだ。おそらく、村の有力者でリク男爵の側近なのだろう。


 俺は末席につくと、祭りの感想を述べることにしようと思案をめぐらせた。


(なにせ、これだけの祭りだ。費用が相当かかったはずだ。褒めたたえるネタとしてはいいかな?)


「リク男爵とみなさま。これだけの祭りをされるとは、正直、アルベリアの力を甘く見ておりました。おそらく300銀貨(ソル)はかかるでしょう!」


「えっ、ええええ! 祭りに300ソルって、銀貨(ぎんか)300枚のこと? そんなにすごいことを僕たちしちゃったの? お金なんかかかってないよ!」


 リク男爵が目を見開き、心底驚いているように見える。


(あちゃ~、これは自分たちのしでかした事が分かってないな……少し教えてやるか)


「失礼ながら、リク男爵は数字のほうは分かりますか?」


「ええ、いま勉強しているところですが多少なら……」


 ほかの6人も、うんうんと頷いている。どうやら、話すのはリク男爵に任せているらしい。


 俺は祭りにかかった経費である300銀貨(ソル)について内訳を説明することにした。


 まあ、おおざっぱな費用として、一般的にはこれぐらいかかると説明する。



■銀貨300ソルの使い道イメージ(春の祭り予算)


・食材調達 カブ、肉、麦、酒、スパイスなど 120ソル

・職人依頼 調理人、大道芸人、音楽隊、踊り子など 80ソル

・催事設備 屋台・椅子・テント・たいまつ・飾り付け 40ソル

・警備・雑費 村人への臨時報酬や道具補修費など 30ソル

・予備費・贈答 訪問者対応、来賓(女騎士)用のおもてなし 30ソル


「祭りの費用は、合計すると300銀貨(ソル)になるってわけです。今回は大道芸人もいなかったし、調味料も塩以外は村の産品らしい。酒もあまり出てなかったですね。飾りつけも質素、あの女騎士のおもてなしも自然な感じでした。実際にはもっと安いでしょう。でも本格的にやれば、300銀貨(ソル)くらい必要です」


「これは……確かに大盤振る舞いだな」


 俺の横でゴルバがウンウンとうなっていた。


「つまり、300銀貨(ソル)あれば、いつでも祭りができるってことだね!」


「まあ、そういう言い方もできますね」


 リク男爵が明るい声を出し、俺は苦笑を隠しながら無難な返事をしておく。


 以前に俺が取引した猫耳少女が、ワゴンで食事を運んできた。


 運ばれてきたのはカブのスープであったが、溶き卵が入っており、なかなか美味しそうだ。これはこの前売ったニワトリが生んだ卵だろうか?


「リク男爵、炭の価格なども、食べながら説明してよろしいでしょうか?」


「う……うん、よろしく頼むよ」


 300銀貨(ソル)の衝撃は、この少年少女7人には大きかったらしい。まあでも、この村はそれだけのことをやったのだ。俺は素直に褒めたいと思う。


 卵入りのカブスープの香りが、会議室兼食堂にやさしく広がる。


 赤く染まる夕陽が窓辺に差し込み、この小さな村の春を、静かに讃えていた。


「とても面白い」★五つか四つを押してね!

「普通かなぁ?」★三つを押してね!

「あまりかな?」★二つか一つを押してね!

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ