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2018.01.01(Mon) 初詣

【社会人編 08 初詣】


 [2018年1月1日(月・元旦)]




 今が人生で一番自由な時間かもしれない。

 そう思って、就活も卒論も終えた央弥は本当に毎日毎日を大切に遊び倒していた。


 平日は辰真は仕事なので大学の友人たちと集まったりしてはいるようだが、まだ進路が決まりきっていないメンツもいるらしく、少々複雑なようでもある。


 そんな理由もあって、いつも年末年始と言えば友人たちと過ごしていた央弥だったが、今年はごく自然な運びでそっちに参加することなく、辰真と過ごす事ができた。


「……うわ、もう昼だよ」

「まじか」


 いつの間にか一緒になってリビングで寝てしまっていたふたりはのそのそと起き出して伸びをしたりテレビを付けたりする。


「初詣行く?」

「んー、いつも元旦に行く派なのか?」

「特にこだわりは無くて、なんとなく気の向いたタイミングでって感じかな」

「俺もそう」


 リビングの真ん中に立ったまま、テレビの新春特集をぼんやりと眺めている辰真に央弥は後ろから抱きついた。


「あけましておめでとう」

「日が変わった時にも言ったろ」

「何回でも言うよ、今年もよろしくって」

「ああ、こちらこそよろ……」


 逃げられないのを良いことにキスすると「寝起きなんだぞ」と怒られる。央弥がそのままふざけて服の中に手を突っ込むと流石に頭をペシリと叩かれた。


「辰真さぁん」

「昼間っからやめろ」

「だって初詣行かないなら他にする事ないじゃん」

「行くか。初詣」


 つれない態度だが央弥は気にしない。構ってもらえて嬉しいと言わんばかりにニコニコしている。

 行くかと言いつつふたりともだらだらと出掛ける準備になかなか取り掛からず、結局家を出たのは4時すぎだった。


「さむっ」

「だからマフラー巻いて来いって」


 辰真は仕方ないなと自分のマフラーを外そうとする。

 それを見て央弥は慌てた。


「いい!いい!」

「なんでだよ」

「こっちのセリフだよ!ちゃんとあったかくしてよ」

「お前こそ」

「いいから!」


 そういうのはヤダ。と言われて辰真はおとなしく自分の首にマフラーを巻き直した。


「寒かったら言えよ」

「手でも繋いでくれるの?」


 央弥の冗談を無視して辰真はさっさと歩き始めた。

 ふたりは特に信心深いわけでもなかったので、近所にある小さなお寺へ行くことにした。


 近隣住民しか来ないであろう小さなお寺で、夕方ということもあり参拝者はふたりだけだった。


「5円あるか?」

「ある」


 カラカラと音を立てながら賽銭を投げ込み、ふたりは互いに口を閉じてお祈りをする。


 ーー央弥が危ない事に巻き込まれませんように。


 ーー辰真さんがもう怖がらなくてすみますように。


 ふたりは大体こんな事を考えていた。

 本気でご利益があるかなど仏頼みに期待ばかりするわけではないが、そんな日々を作っていけるように頑張ろう…と自分に言い聞かせるような気持ちだった。


「さて、帰るか。寒いし」

「帰ったら温かいもの作るよ」

「粕汁がいいな」

「おっけ、買い物して帰ろ」


 具沢山にするね。と言って央弥が笑う。辰真はその後を歩きながら「結構、幸せだな」なんて思った。



【初詣 完】

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