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2018.02 某日 感染

【小話:感染】


 [2018年2月某日]




「辰真さん、ストップ」

「え」


 服でも買いに行こうと連れ立って来たショッピングモールでスマホの通知を確認しながら歩いていると突然、隣を歩いていた央弥に少し乱暴に肩を掴まれた。


「ぶつかっちゃうよ」


 そう言われても障害物なんかない。

 一瞬とはいえスマホに気を取られたことを危ないと思われたのだろうか。


「……?ああ、ちゃんと気をつける」


 ポケットにスマホを仕舞うと央弥は一瞬変な顔をした。


「うん、そうして」

「あ……もしかして、いま何かいたか?」


 こいつは俺が怖がると知ってから最近、俺が気付いていない時はこうしてはぐらかしている感じがする。


 それも一度や二度じゃない。

 ハッキリと言及したことはなかったが、絶対にそうだ。


「そんなんじゃないってば」

「嘘をつくな」

「怖い顔しないでよ」


 気づかなかったならそれが一番じゃん、という央弥に複雑な気持ちになる。

 今まではそうだった。見ずに済むならそれで…。


「でもお前は首をつっこむだろ」

「最近はしてないって!」

「信用ない」

「過去の行いかぁ」

「悔い改めろよ」


 信用してほしかったら危ない事に首をつっこまない姿を見せ続けろと言えば央弥はニコニコ頷く。

 本当に分かってんだか。


「辰真さんがずっと監視してくれるなら、ちょっとくらい心配させるのもありかも」

「ばか、怒るぞ」


 そう話しながら歩き始めるとさりげなく位置を交代させられた。本当にさりげなくて、普段なら気付かなかったと思う。


 俺は立ち止まって振り返った。


 ――何もいない。


 いや違う。俺が視えてないんだ。

 その事に気がついた時、背筋がゾッとした。


「辰真さん、早く行こ」

「あそこ、まだなにかいるのか」

「気にしなくていいから行こ」


 央弥に腕を引かれて無理やり歩かされる。


「危ないってば」

「なんで」

「気付かないのが一番の対処法なんでしょ」

「なんでお前には視えてる!」

「そんなの知らないよ」


 周囲の視線も気にせず声を上げてしまった。


「お前が危ない事に首を突っ込んでても、気付けない…」

「危ない事はしないってば」


 困ったような顔で振り返る央弥に何も言えない。

 信用してないわけじゃない。でも…。


「大丈夫だよ。約束するから」


 前に央弥が"視えないモンの方が怖い"と言った意味が今ならわかる。たとえ視えなくても、そこに確かに"いる"のなら、視えた方がマシだ。


「辰真さんはもう怖がらなくていいよ」


 視えないものはそのままでいい、という央弥にヤキモキする。俺は央弥の言う約束を信じるしかない。


「……約束は守れよ」

「うん」


 何かあったら隠すなよ、とも付け足すと微妙な反応が返ってきたので肩を殴っておいた。



【感染 完】

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