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2017.06.19(Mon) 就活 1/2

【社会人編 02 就活】


 [2017年6月19日(月)]




「何やってんだお前は」

 約束の時間に遅れてきた上に、"良くないもの"に遭遇してきた空気を隠しもせず纏っている央弥に対して辰真は呆れつつパッパッとその肩を手のひらで弾いた。

 ほんの気休めだが、肩について来た"悪い気"くらいはこれでスッと消えたりするものだ。辰真と入れ替えで就活生となった央弥は、辰真と共に過ごす中で就活に関するアドバイスや体験談を聞かせてもらう事で、2人で会う時間を有効利用していた。

「だって気になっちゃうから」

「気をつけろよ」

 央弥の怖いもの知らずは今も健在で、就活に伴い行動範囲が広がる事によって見知らぬものに遭遇する事も増えた。辰真はそれが心配で妙な胸騒ぎを感じたが、子供のように言い聞かせて聞くような男ではないとよく知っている。

「お前、俺がいなくてもすっかり見えるようになったな」

「あ、確かに…そういえば」

 霊が見える事は、危険を回避できるという事でもある。しかし央弥のような危機管理能力の無い人間にとっては好奇心をいたずらに刺激するだけで良い事などない。

 辰真の強い霊感体質に影響されて二人で居る時は当たり前に視えるようになっていた央弥が、自身も取り憑かれたりと濃い接触を経験する事でより鋭い感覚を得てしまったらしい。

 気をつけるようにと繰り返し注意されてもどこ吹く風で、むしろ嬉しそうに怪異に首を突っ込み始める始末だ。

 多趣味で人当たりの良い央弥はジャンルにこだわらず気になる企業にどんどんESを提出してはあちこちに飛び回り面接を受けに行っている。

 既にいくつかの会社からは内々定が出ている状況だが、まだ就活を続けている理由は勤務地だった。


 央弥は、就職を機に辰真との同棲の話を切り出すつもりでいる。

 了承されたわけでもないのに気が早いかもしれないが、ゆくゆくは2人で暮らすことを考えると、ちょうど良い勤務地にある会社を選びたかった。騒がしくなく、生活しやすく、交通も便利で、辰真の職場から最低でも1時間以内の駅となると限られてくる。

 そして、その駅から1時間以内で通勤できる辺りで探したいのだ。もちろん本音を言えば、1時間と言わず近ければ近いほど嬉しい。

 通勤は毎日の事なのだから、少しでもその時間を減らしたいのは当然だった。しかし都内で仕事を探すとなると、贅沢ばかりも言っていられない。

「今日は?」

「品川の方で面接」

 辰真の部屋に泊まった央弥は朝食に出された菓子パンを寝ぼけながら口に詰め込む。

「ゆっくり食え」

 じゃあ俺は仕事だから、とジャケットを羽織って辰真は玄関に向かった。

「面接頑張ってな」

「あんがと」

 そんな央弥の気持ちを知ってか知らずか、以前よりは仕事に余裕の出てきた表情で柔らかく微笑み辰真は扉を閉じた。



 ーーー



「はあ…だめだ、この会社も……」

 隣で集団面接の開始を待っている男が何やらぶつぶつと呟いて、憎々しげに舌打ちをする。央弥は一体なんだと思ったがすぐに面接官に入室を促されて、声をかける暇もなく立ち上がった。

 面接中も男は落ち着かない様子で、面接官に訝しんだ目で見られていたが反抗的な態度を取り、央弥は「何をしに来たんだこいつは…」と呆れた。




【就活 1】

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