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2018.01 某日 駅のホーム

【未来の話:駅のホーム】


 [2018年1月某日]




「っと…」

 大学からの帰り道、唐突に足元がフラついて、央弥は思わず声を漏らした。ここは駅のホームだ。落ちたら冗談では済まない。

 ――またか。

 実は、ホームの端に引き寄せられるような感覚になるのはこれが初めてではない。この駅にはまだホーム柵も設置されていないし、3度目くらいから警戒して、ホームの中央で待つようにしているが、それでもフラリと妙な目眩を感じる事がある。

 普通、こういった場合は電車に飛び込まされそうなものだが、それは電車のタイミングとは関係ない。

 そしてこの駅だけなのだ。ホームから落とされる、と考えると命に関わる大事件なハズ。しかしどうにも敵意や悪意を感じないのだ。

 だから、ふとした瞬間につい引き寄せられてしまう。

「……」

 ――目的は、オレを傷つける事じゃない…?

 そう思って、央弥は電車が来ないタイミングを見計らいつつホームの端まで歩いて来た。その間も、決して乱暴ではなく柔らかい感覚で導かれているのを感じる。

 まるで小さな子供にでも手を引かれているかのようだ。

「…何かあんのか?この下に…」

「おい、馬鹿!!」

「ぅわっ!」

 ホームから身を乗り出そうとした瞬間、後ろから腕を痛いくらいの力で引かれて転がった。

「何してんだ!!」

「いってぇ…た、辰真さん?」

「何考えてんだよっ…」

「いや、な…何って…そんな」

 仕事帰りなのか、スーツ姿の辰真に殴られそうな勢いで怒鳴られてビックリする。周囲の人々の視線が痛い。

 弁明しようとしたが、たしかにどう考えてもホームからフラフラと飛び降りようしたと思われて仕方がない事をしたなと央弥は口を閉じた。

「…ごめん、ありがと。心配しないで」

 驚かせてしまったなと反省しつつ、立ち上がろうとした央弥は視界の端で何かが落ちるのを見た。

「あっ」

「ん?」

 ガッと鈍い音がして、それはホーム下にまで落ちていってしまった。

「辰真さんのスマホが」

「あ?」

 そう言われてズボンのポケットを漁った辰真は盛大にため息をつく。

「絶対に割れたな…」

「ごめん、弁償するから!駅員さん呼んでくる!」



「こちらですね、あと…」

 これは違います…よね?と、辰真のスマホと一緒に駅員がホーム下から拾い上げたのは一体の人形だった。古いが、それほど汚れてはいない。

 辰真は人形と目が合いかけて思わず後ずさったが、スッとその傍から手が伸びた。

「あー…俺の…ではないんですけど…」

 心当たりならある。央弥は躊躇いなくそれを受け取り優しく抱いて、駅員に礼を告げその背中を見送った後、人形の供養について調べ始めるのであった。



【駅のホーム 完】

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