閑話休題ー創作過程:ヘメロカリス版
今回は閑話休題として、ふたりで進めていたリレー詩集の創作過程をご披露しちゃいます。
恐らく、私は詩のリレーは、香月よう子さまとしかできなかった。
そして題材となる花々をここまで、第三集まで集めてこられたのは(そのことだけはー笑)、私の貢献度かな、と自負しています。
「もう何も書けそうにない」と悩むよう子さまの心に溢れていた詩情を、何とか言葉として引き出すことができたのは、私が取り囲まれているお花たちのお陰に他なりません。
第三集にもなると、前作前々作と花の名前が被ってしまうことと、どんどん日本で馴染みのない花、香月よう子さまがご存知ない花が増えることが私の懸念でした。
ということで、私のリレー詩執筆第一歩は、写真を集めること。
通勤路や職場やあちこちで、綺麗な花を見るとスマホで激写。
それを暇を見てみてみんに上げておく。
そんなことをしていると、よう子さまから、「そろそろ、詩の冒頭投げて~」とメッセージが届きます。
はい、第二集までは、よう子さま書き出しもありますが、この第三集からは全て、私、陸なるみ書き出しです。
第一連、3行から5行程度を書いて、みてみんの写真コードと、知らせたいお花の説明をつけて、下記のように(*****の間)、よう子さまにメッセしてました。
ご覧の通り、冒頭はどうしてもそのお花の特性やまつわる話などになりますから、ニュートラルだし、たまにめっちゃ硬い陸なるみ丸出し!です。
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ヘメロカリス:
忘れたいことがあったら
男はお酒を飲んで女は泣くんだって聞いたけど
万葉の昔から「忘れ草」っていう素敵な花があるんだよ
憂いも悲恋も忘れられるって
https://31358.mitemin.net/i866898/
写真は園芸品種です。忘れ草そのものの日本名は、ヤブカンゾウという名前。
ニッコウキスゲやユウスゲの仲間。
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さて、私は全く気楽に冒頭を投げるだけ投げて、よう子さまがどう料理してくるのか、ワクワクしながら待つこと数日。
そしていつでも、
うっそーーーー、そう来たかーーーー!
と、叫ぶことになるのでした。
大抵、花言葉をきちんとチェックして、書いてきてくれてます。
だから、彼女が知らないお花でもイメージがぶれない。
このヘメロカリスの場合、「一夜の恋」が花言葉に当たるのですが、これは、この花が「一日花」、一度咲いたらその日のうちにしぼんで、翌日には次の花が咲く、という性質があるから。
その上、よう子さまの言葉、「胸の奥底に響く」が「とくん」と動悸がするようで。
続きは考えるまでもなく、するすると出て来ました。
ヘメロカリス:
(陸)
忘れたいことがあったら
男はお酒を飲んで女は泣くんだって聞いたけど
万葉の昔から「忘れ草」っていう素敵な花があるんだよ
憂いも悲恋も忘れられるって
(よう子)
悲しみを忘れて
憂いも忘れる
そんな一夜の恋に限って
何故か胸の奥底に響くかのように
(陸)
身体から去ってくれない
一夜を千夜にしたいと奥底で疼く
悲しみのない恋はない
憂いを纏わぬ愛もない
ーー「一夜」限りじゃ嫌だとアラビアンナイトを想起して、女の「奥底」というなら「胸」だけじゃなかろうと少々過激にしておいて、下記一行で伏線回収のほうへ誘導して、よう子さまへお返ししましたーー
(陸)
だから敢えて「忘れ草」があるんだね
(よう子)
あなたを忘れようとしても
忘れられない
決して忘れたくはない
そんな哀しい女を慰める為に……
三点リーダーで余韻残して終えるのはよう子さまの大得意なので、これが付いてきたら着地成功!
辛い恋も一夜限りも忘れられない、忘れたくないのが女だと、しっかり締めてくださいました。
さらりと終了させた感を持たせながら、実は、全体をみなおして、連の区切りを変えたり、行を入れ替えたりして、ブラッシュアップしてくださるのがよう子さま。
今作で凄い!と思ったのは、私の行「身体から去ってくれない」「一夜を千夜にしたいと奥底で疼く」を上の連に繋ぎ、
「悲しみのない恋はない」
「憂いを纏わぬ愛もない」
の二行だけで独立の連にしたこと。
このふたつのメッセージがずんっと目立つようになりました。
そのくせ、いつも、「タイトルお願い~なるみんのほうが題付けるのうまい~」と言われるので、おだてられた私が、よう子さまの最終行から「哀しい女」という言葉を拝借して、「哀しい女の特効薬」と名付けました。
タイトルにOKもらって、完成!!です。
この詩を書いている間に書いてくれたよう子さまのコメントをご披露しちゃえ。
「詩の方。
これでいいかな?
毎回、自信がなくて;
なるみんがいつも上手に繋いでくれるから、助かってます。
いつも本当にありがとう。
ところで、第三集になってから、明らかに詩のカラーが違うよね。
テーマに沿っていて良いと思う。
この路線、好きだな」
自信がないだとーーーー!!
私は実物の花を見て書いているし、その花についての情報量の蓄積があるのでイメージも湧きやすいのですが、写真と花言葉だけを頼りに、付いてきてくれるどころか、テーマを深めてくれるよう子さまには脱帽だってーの!
「この路線」とは、大人の、身体を無視しない恋愛の路線、なのですが、よう子さまが書くと品が下がらない~お見事としかいいようがありません。
このリレー詩集第三弾、今後ともお付き合いいただけましたら幸いです。