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カモミール:もう戻らない君の残像
野原に開く白い笑顔は
春は元気なデイジー
秋は風に吹かれて頼りない
細い茎、薄い花びら、もじゃもじゃの葉
デージーのあどけなさから大人びて
君はきっとカモミールのなよやかさ
清楚に髪を靡かせて
僕の前に立ってほしい
ああ、そう望むけれど
君はもう僕の許にはいない……
あの幼い日
僕の腕をすり抜けて野原を駆け
君は二度と戻らなかったのだから
カモミールティーが誘う眠りの中でだけ
会える君
掴めそうで掴めない影
君の止まってしまった刻が
夢の中でだけ大人びて
僕の身体を困らせる
欲しいのは君だけなんだと
君と遊んだあの幼い日
野原を駆けて行った君にもう一度
もう一度でいいから会いたいんだ
欲しいのは君だけ
幼かった日のあどけない君も
いつか大人びて美しくなるはずだった君も
ただ君一人
僕をおいて逝ってしまった君一人だけ……




