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第十四話 「お前の方が強い」

「で? てめーらはここで何してる?」


銀色の髪が逆立っている。

魔備を付けた男。

この集団の先頭に立つ男が、そのドスの効いた声を放つ。


「私たちは」

「オメーには聞いてねぇよ女。お前だよお前」


先生の声を遮って、銀髪の男が俺に視線を向けてくる。

今すぐにでも殺しにかかってきそうな恐ろしい目。


一瞬体が強張る。


「…俺たちは、ポルーン街まで行きたくて…」

「あ? 声が小せえよ。なんだぁ?」


銀髪の男が、乗っていた鉄の塊から降りる。

脚から跨ぐ形の乗り物。

目の前にいる集団全員が、その鉄の塊の乗り物を跨いでいる。


普通の乗り物ではない。


先生は()()を、魔備装甲とか言ってた。


そんな鉄の塊から離れ、銀髪の男が、目の前まで迫ってくる。

俺より背が高く、体も大きい。

それに威圧的で、目も合わせられないほどのオーラがある。


「お前…」

「…何…?」


目の前に来た時だ。

突然、その男の瞳が七色に光出す。


顔も相まって、恐い。


すると、後ろにいた集団が騒ぎ出す。


「出た! リーダーの『()()』!」

「リーダー! そいつらやっちまえよ!」

「で、どうなのガウス?」

「殺すかああ!?」


全然それぞれ、騒ぎ立てる。

この銀髪の男の瞳の色が変わった瞬間に。


瞳の色が突然変わる。

普通に人間としてあり得ないその現象。何を意味しているのか今の俺なら理解できる。


この男は何らかの魔術を使っているのだ。

誰かがその魔術を、『()()』と呼んでいた。


どういった魔術だろうか。



「黙れお前ら」


だが、騒ぎ立てていた集団が、その一言で一気に静まり返る。

発したのは目の前にいる銀髪の男だ。


鶴の一声。まさしくリーダーの威厳だ。


銀髪の男は、その目でまず先生の方を向いた。

三秒くらいだろう。沈黙が続いた。


「女…。強いな。何者だ?」


銀髪の男が呟く。

先生は、首を傾げながら、微笑んでいた。


「…さぁーね」


そんな先生の反応に、銀髪の男は見向きもせず、俺に目線を合わせてくる。

また、三秒くらい沈黙が続いた。


一体何の時間だろうか。


そう疑問が浮かんだ時だ、男の表情が見る見る険しくなる。

眉間に皺を寄せ、歯が食いしばったような顔。


「お前…マジで何者だ?」

「…は?」


俺が反応すると同時に、男が一歩下がる。

何かに警戒したような、そんな様子だ。


後ろにいた集団も、さっきの騒々しい雰囲気から、一気に暗い雰囲気へと切り替わる。


「もう一度聞くぞ。何者で、ここで何してるんだ?」


銀髪の男の手は、背中の剣まで届いている。

状況が理解できていない俺を置いて、なんだか戦闘体勢だ。


流石に俺も焦った。


「え、えと、俺はナナシって言って、この人の生徒で…。今はヒッチハイクしてて…」

「ヒッチハイク?」

「え、ああ、そう。ポルーン街まで行きたくて」

「どうしてだ?」

「ラインハイって首都まで行かないと…えと…」


「ナナシくん。知らない人に簡単に色々と明かさない。この前、私が教えたでしょ?」


と、ここで助け舟。

先生が横から割入って会話へ参入。


だが、銀髪の男は不服そうな顔をした。


「女、お前には話してねぇぞ。俺はこいつに聞いている」

「彼は私の生徒だからね。まずは私から話通さなきゃ」


「生徒? …お前がか?」


銀髪の男がこちらを向いてきたので、俺は首を縦に振った。


「…俺としたことが、見誤ったのか? てっきりお前が『リーダー』かと」


男が向けた視線の先は俺だ。


俺がリーダー?

俺が先生よりも上の立場であると思ったのだろうか?


そんなことあるわけないのに。


「じゃあ、てめーに聞くぞ女。何者で、ここで何してる?」

「私はミィ。彼が言った通り、ヒッチハイクしてただけだけど?」


澄まし顔の先生に、銀髪の男はまた不服な顔をする。


「それだけじゃねぇだろ? お前は何者で、ここで何してんだ?」

「しつこいなぁ。言った通りのことだけだよ?」

「じゃあなんで魔備を」


銀髪の男がそう言いかけた時だ。

後ろから、誰かが銀髪の男の頭をペチンと叩く。


「もういいよガウス。よく見て。彼らまだ子供でしょ、虐めないの」


その言葉に銀髪の男は動きを止める。

彼を止めたのは、彼と背丈は一緒くらいの、威厳のある女だ。

髪は黒色で長い。後ろで結んでいる。

優しそうな目つきをしながら、体には同じように魔備を装備し、腰には長い剣が携わっている。


「邪魔すんなセリア。こいつらは魔備を持ってる。危険だぞ」

「貴方はどんな人にでも噛みつきすぎ。子供なんだから、優しくしないと」

「優しくできる相手じゃねえ。『慧眼』を使った。だから」

「その魔術で人の考えや性格まで読み取れた? 私の直感で大丈夫って言ってる。信じて」

「あのなぁ、お前は誰にでも」


誰にでも、のところでセリアと呼ばれる女性に、口を塞がれた。

銀髪の男が頬を鷲掴みにされてモゴモゴ言っている。


集団からリーダーと呼ばれていたから、てっきりこの銀髪の彼がこいつらのボスだと思っていた。

だが、それ以上に、この女の人は威厳を持って話している。


只者ではない。


「突然ごめんね、二人とも。こいつは仲間想いなのはいいんだけど、ちょっと警戒しすぎちゃう性格なの。二人はポルーン街まで行きたいんだよね? 乗ってく?」


しかも、なんて優しい人なんだろうか。

男を片腕で制圧しながら、俺たちのことまで気にかけてくれている。


ここにきてようやく、心の優しい人と巡り会えた。


「え、いいんですか? じゃあお言葉に甘えちゃいます!」


先生は、やっと解放された!と言わんばかりの清々しい表情で、すぐに返答を返していた。


状況は理解できていないが、とりあえずヒッチハイクの交渉は成功した。





——————





俺たち二人は、セリアという女の人の魔備装甲と、ガウスという銀髪の男の魔備装甲にそれぞれ乗せてもらっている。

先生はセリア。俺はガウスだ。

先生の方はなんだか和気藹々としているが、こっちの雰囲気は最悪だ。



魔備装甲とは、魔石を媒体に作成された、魔術的技術の元で誕生した乗り物だ。

形は様々で、あらゆる衝撃や攻撃に耐え抜く防御性を誇っている。

よく、軍が使うような、戦闘に特化した乗り物らしい。


彼らが乗るのは二輪車型の魔備装甲。

彼らはこぞって、『バイク』と呼んでいた。


そのバイクは、外付けで人が一人乗れるサイズの小型車をくっつけることが出来る。

俺たちはそこに乗らせてもらっている。


速度はかなり速い。

彼らは、陽気に、緩く運転してる様子だったが、普通の自動車よりもスピードが出ている。

それに何かと音も大きい。

エンジン音だったり、タイヤが地面を擦る音だったり、乗る人がうるさかったり。

音楽を爆音でかけている奴もいる。


こいつら自身がうるさいのだ。


多分、公共の場のルールを全て無視している。

これが、『ギャング』というものらしい。




ガウスというこの男は、この集団のリーダーを務めているらしい。

横から見ても、やはり怖い。

色んな修羅場を抜けてきたような圧倒的な威圧感がある。


そんな男がやっと口を開いた。


「お前、名前なんだっけ?」


それは、彼らの乗り物に乗せてもらってから、数十分経った後のことだ。


ガウスは俺たちを乗せることに抵抗感を持っていた。

だが、セリアが強引にガウスを言いくるめていた。

その間、集団は何も言ってこなかった。

彼ら二人には口出しできないのだろう。


結局、下手な真似はしないように釘を打たれ、

出来るだけガウスとセリアの二人の側にいることを条件に、乗せてもらうこととなった。


渋々乗せてくれたガウス。だが、やっぱり嫌だったのだろう。

数十分間は何も話してくれなかった。


俺が、「乗せていただきありがとうございます」と丁寧に挨拶した時も、無視を決め込んでいた。


だから、ガウスが口を開いてくれてなんだか嬉しかった。

ようやく、重い肩の荷が下りた気分だ。


「ナナシです。よろしくお願いします」

「ナナシ…。変な名前だな」


それに関しては俺もそう思う。

名前がないからナナシ。先生が適当に決めた名だ。


後から変えることもできたのだが、そうする暇さえなく働いていた。

いつの間にか定着している。


「ガウス、さんは、この集団のリーダーなんですか?」

「ガウスでいい。敬語もいらねぇ。そうだ。俺がこの『ガイア』のリーダーだ」


どうやらこの集団の名は、『ガイア』というらしい。


「『ガイア』は何をする集団な…んだ? 何かと戦ったり?」


なんですか?と聞きそうになって慌てて直した。

そういえば先生と話すことが日常生活で一番多いため、自然と敬語が自分に定着していた。

おかげで、どうやって人と話すのかを少し躊躇ってしまう自分がいる。


そんな俺に、横目だけ向けながら、ガウスは話す。


「俺たち『ガイア』は、村や街からあぶれた連中のための居場所だ。別に特定の目的や目標があるわけじゃねえ。そりゃ邪魔な奴がいたら戦うけどな」

「…俺たちも邪魔な奴に見えたってこと?」


俺たちはただヒッチハイクしてただけだ。

でも、ガウスは一度戦闘体勢を取っていた。

俺たちを邪魔な奴と認識したということだ。


少し理不尽だ。


「…俺は『()()()()』を一個持ってる。お前らも聞いてただろうが、『慧眼』っつう、人の魔術や戦闘能力を分析できる魔術だ。俺は大抵それで判断してる。だからだよ」


『創造魔術』。初めて聞く名前だ。

俺の知識不足が出た。

後で先生に聞いておこう。


それよりも、あの七色の瞳は、やはり魔術を使っているせいだった。

しかも、俺たちを分析していたなんて。


魔術というのは相変わらず凄いな。


でも、そうなるとまた疑問だ。


「その魔術には間違いはないのか? 俺をリーダーって勘違いしたり、俺を見て警戒したのはなんで?」


そう。こいつは間違えている。

先生よりも、俺に警戒を向けていた。


魔術にも間違いがあるのだろうか。


でも、ガウスは顔をこちらに向けて、とぼけた表情をしていた。

「何を言ってるんだ」みたいな顔をしながら俺を見てくる。


「間違い? あるわけねぇだろ」

「じゃあなんで…」


「なんでってそりゃあ…」


ガウスは当たり前のように言う。


「お前の方が強かったからだよ」



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