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第十三話 「ヒッチハイク」

野宿をしてから二日経った。


俺はとある場所で、大きな紙に、「ポルーン街まで!!」と書かれたものを掲げている。


その目の前を、信じられない速度で通り過ぎて行く大きな鉄の塊。


今ので丁度()()()だ。



俺たちが今やっているのは、()()()()()()という行為。

通りすがりの車に乗せてもらうためにやっている。




俺たちが今いるのは、()()()大きな道の脇。

カイラル荒野に()()存在する、ポルーン街へ行くための、複数の街を経由した大きく長い道路だ。


乗り物が通れるように整備された大きな道。

その距離はなんと数百キロ。


真っ直ぐに伸びて行くその道は、先を見通してもゴールは見えない。



先生は、ポルーン街へ行くまでに、なるべくお金は節約しようと考えているようだ。

道中、有料で目的地まで運んでくれる妙な機械もあった。

村か街で、簡易的な移動手段を購入することも出来ただろう。


だが先生は、「節約しよう!」断固としてこういった考えだった。


どうやら先生にはお金がない。

持ってきたお金は、レイルバット復興へ全てつぎ込んだし、その上で失敗した。

なので、手元にはほんの少しの残金しか残っていない。

もちろん、俺は一文なし。


ポルーン街まで歩く手段もある。

だが、この道路の果てしなさを見れば分かる。

まだまだ先は長い。


そこで先生と俺はヒッチハイクという手段を選んだ。


誰かに乗せて貰えばタダで済む。

それに、この道を通る人々の目的地は同じはずだ。


優しい人がいれば乗せてくれる。そう思っていた。


だが、現実は甘くない。

十台過ぎてもなかなか捕まらない。

それに、数分に一台通れば良い方の交通量。

車通りも少なく、中々厳しい状況だ。



「今通り過ぎた自動車は、どこ産だろうね。なかなか大きかったね。私たち二人くらい余裕で入りそうだったのに」


中々止まらない車に、先生は少し苛立ちを見せている。

対して俺は、初めて見る自動車、車というものに、目を輝かせている。


ガソリンで動いている機械。

魔術的技術は一切用いられてなく、あくまで人間の科学技術の発展によって生まれたものだ。


物凄いスピードだ。

先生が、『加速』の魔術を使っている時より数倍速く見える。


あれこそ文明の利器だ。


「あ、また来ましたよ! 次は赤色ですね」

「と、止まってよ〜」


先生の懇願にも容赦ない。

赤色の車が、目の前を物凄いスピードで通り過ぎる。


先生は掲げた紙を下げて、ため息を吐いた。


「…面倒臭くなってきたよ…」

「え、まだもうちょっと頑張りましょうよ」


まだ一時間も経っていないだろう。

先生が飽きてしまった。


そういえば忘れていたが、先生はめんどくさがり屋だった。

こんな、全く同じ意味のない作業に、苦言を呈さないわけない。


「ほ、ほら、歩いて行く方が絶対面倒臭いし、頑張ってヒッチハイクしましょ!」

「うーん。じゃあ、ナナシくん頑張ってよ」


先生はその場にへなへな座り込んでしまった。

まだ全然時間が経っていないのに。


だが、別に俺は先生を責めない。


何故ならこれが先生の性格だと俺自身も理解してるし、先生には()()()()で色々感謝している。

先生はこの数日間、俺に色々な配慮をしてくれた。


俺が初めて目にするものには、事細かく説明してくれるし、魔物も中心的に倒してくれる。

魔術の基本的な使い方や、戦闘における大事なこともしっかり教えてくれた。


世界の常識や、人とのコミュニケーション。

礼儀作法や、物の売買に対する教え。


物の使い方から、感情表現のコツまで。


至る所で俺をサポートしてくれる。


おかげで、前よりかは人間らしく振る舞えている自分がいる。

全部先生のおかげだ。


「生徒へ教えるのは先生の基本だからね」


そう可愛らしく胸を張る先生に、俺はだいぶ甘えてきたと思う。


だからこそ、こういう時は助け合いなのだ。


先生が疲れたなら俺が頑張るし、先生が飽きたなら俺が精一杯する。


二人で旅をするというのは、助け合いが一番重要なのだ。

レイルバットを出る際、先生が最初に教えてくれた教訓だ。



——————-



それから数時間が経過した。

最初の時点から、もう三十二台目が通過し切ったタイミングだ。


同じように通り過ぎて行く車を、ただ呆然と眺めていた。


「どうしてこんなに止まってくれないんですかね?」


流石に、もう車も見飽きたし、そろそろ疲労も見えてくる。


地面にシートを敷いて、大の字で寝転がっている先生に問いかける。


「うーん、魔備を装備してるし、何者なのかもはっきりしない奴をそう簡単に車には乗せないよね」

「怪しく見えるってことですか?」

「見た目でどうこうっていうより、見ず知らずの人をすぐには信頼できない、ってことでしょ」


まぁ、レイルバットの現状を目の当たりにした俺からすれば理解は出来る話だ。

誰もがその日を生きるのに必死で、人に構う余裕なんてなかった。

街ごとに格差が広がっていて、人それぞれの生活感の違いに、多少の妬みや恨みの感情もあるだろう。


色んな街を経由したこの道を通る人々は知っているのだ。

この街の人間は貧しくて信頼できない。この街の人々は信頼できる。

そういった差別的な考えや、暮らしの違いで他人に信頼を抱けない。

だからこそ、道端にいる誰かも知らない人間なんてすぐには信頼して乗せること出来ないのだ。


人は簡単には信じれない。

要はそういうことだ。


でもそれって、世界の常識ではあると思う。

おかしなことでもない。


フランみたいなお人好しがいない限り、俺たちは救われない。


「このままだと一日中ここに居座ることになるよー。どうしようー」


ジタバタと暴れる先生。

さながら子供みたいだな。

時々先生はこんな感じで暴れ出す。

別に嫌な感じではない、いつも自分より大人に感じる彼女が見える子供らしい一面。

可愛らしいと思う。


そんなことを考えていた最中だ。



突然、地面を削るような爆音が段々と近づいてくる。



ガガガッがガガ

バキバキバキバキ


複数の爆音だ。

地面を伝って、振動音がここにまで届く。


車、ではない。

それより少しだけ大きい鉄の塊。

それが数十台、無造作に縦に並びながら道路を走ってくる。


「…魔備装甲。うーん、ここら辺のギャングかな?」


さっきまで大の字で寝転がっていた先生がいつの間にか起きている。

警戒しているような、どこか高揚しているような表情だ。



集団が、物凄いスピードで押し寄せる。


数十人はいる。全員が大きな鉄の塊に乗っている。


背中に大剣を背負っている男。剣を腰に携えた男。

大きなハンマーのようなものを掲げている女。

その他諸々。


凄まじい集団だ。

全員が武装をして、大きな鉄の塊に乗り、爆音を奏でている。


これが『ギャング』か。




ギャングと呼ばれた連中が、通り過ぎずに少し前で止まる。


鉄の塊が、やっと止まったのだ。


その集団の先頭にいる男が声を上げる。


「おい、てめーら、何してる?」


ドスの効いたパンチのある声だ。

見た目もいかつい。

銀色の刺々しい髪型が、余計威圧感を出している。


それに、魔備を装備している。おかげで、全身がメカメカしい。

背中には大きな剣もぶら下がっている。


ひと目見れば、すぐにこの集団の長だと分かるような、圧倒的なオーラもある。


だが、明らかにまともな人間ではない。


通りすがりの人が彼らを見たら、泣いて逃げ出すだろう。

多分、大抵の人が彼らを警戒するに決まっている。


俺も普段なら警戒している。

実際、今この状況に少しだけ恐怖を覚えている。


だが、先生の反応はそこまで大きくない。

別に特別警戒しているわけでも、戦闘状態になっているわけでもない。

なので、大丈夫かなと、俺も少し安心している。


とりあえずギャングってなんだろうか。



そんな中、先生がボソリと呟いた。


「…もう、こいつらでいっか」


何が良いのだろう?

そう疑問が浮かんだのも束の間。そういえば俺たちの目的はヒッチハイクだ。


目の前で乗り物が止まった。つまり、

ヒッチハイク成功だ。





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