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7本目×スペシャルデラックス定食

レポート報告が無事に終了し、福井さんと伊原さんに見送られる。


「本日はありがとうございました!失礼いたします!」


エレベーターのドアが閉まるまでお辞儀をする。

ドアが閉まって下り始めたのを確認してから顔を上げる。

俺が顔を上げたのを確認し、本田さんも顔を上げる。


「お疲れ!初めての訪問はどうだった?」

「緊張しました!」

「レポート報告の流れは分かった?」

「報告してる内容は分からなかったですけど、”こんな感じかー”というのだけは分かりました!」

「初回はそれで十分かな。ランチしながら反省会しようか!」

「お腹すきましたー」

「今日は頑張ったから、特別にご馳走してあげよう!」

「いぇーい!ありがとうございます!」




駅に戻る途中で洋食屋さんを見つけ、ここでランチを食べることにした。

下町ならではのレトロな雰囲気のある洋食屋さんだ。


「何にするか決まった?」

「真中さんは何にするんですか?」

「エビフライ定食にする」

「こういう時、後輩は先輩より安いメニューを選ぶんですよ!知ってました?なので、私はオムライスで!」

「別に気にしなくていいよ。好きなの頼んで!」

「オムライスが好きなのでオムライスでいいです!」


店員さんを呼び、メニューを注文する。


「ご注文をお伺いします」

「えーと、このエビフライ定食を1つと、本当にオムライスでいいの?」

「スペシャルデラックス定食で!」

「以上でよろしいですか?」

「はい。お願いします」


メニュー表を畳んで店員さんに渡す。

着席時に出されたお冷を飲んでいると、本田さんがいたずらっぽくニヤニヤしながらこちらを見ている。


「ビックリしました?ちゃんと自分で払います!」

「別にいいよ。ただ、オムライスは何だったの?」

「あれはフリです!引っかかりました?」

「え?引っかかったとかあるの?どういうこと?」

「安いオムライスを頼む良い後輩とみせかけて、いきなり1番高いメニューを頼むというパターンです!」

「えっ?言ってる意味が全く分からないけど、スペシャルデラックス定食は本当に食べたかったの?」

「そ、それは…、オチのために頼んだと言いますか…」

「えっ?スペシャルデラックス定食はオチなの?全然分からんけど、ちゃんと食べろよ!」


恐らく間違っているであろう本田さんのフリとオチの理論に付き合っていると、店員さんがエビフライ定食とスペシャルデラックス定食を運んできた。

スペシャルデラックス定食は、エビフライ2本、カニクリームコロッケ2個、とんかつ1枚、から揚げ3個と、大量の揚げ物が盛り付けられている。

30代の俺は見ているだけで胸やけがしてくる…。

本田さんは何も言わずに、虚ろな瞳で大量の揚げ物を見つめている。


「全部食べろよ!」

「そ、そっちのエビフライ定食と交換しませんか?」

「そんな大量の揚げ物、食べれるか!まだ若いから食べれるだろ!」

「年齢のこと言うのはセクハラです!」

「早く食べろ!」


本田さんが大量の揚げ物をモシャモシャと食べ始める。

ランチを食べながら、クライアント訪問の振り返りをしておこう。

特に本田さんの緊張し過ぎるところは問題だ。

初めてのクライアント訪問だったので仕方がないのかもしれないが、毎回、悪魔に取りつかれたように緊張されると面倒くさ過ぎる…。


「クライアント先に着いたとき、めちゃくちゃ緊張してたね」

「そ、そうですね…。緊張しやすくて…」

「人前で話すのが苦手とは聞いてたけど、それ以外にも緊張しやすい状況とかあるの?」

「そうですね…、人前で話すのもそうなんですけど、ちゃんとしなきゃいけないって状況になると緊張しますね…。普段がふざけているので…」


どうやら本田さん自身も、ふざけた性格をしていると自覚しているようだ。

シュンとしてうつむく本田さんは小さな子供のようで、何とかしてあげたいという気持ちになった。


「緊張するのは準備不足もあるかもね。会社に着くまで何も考えてなかっただろ?前日に今日のシミュレーションとかした?」

「全く何も考えてないです!」

「次の訪問からはシミュレーションしてみようか!まだ、しばらくは名刺交換と議事録だけだけど、それでも毎回シミュレーションしてみよう!」

「やってみます!」

「しっかりと準備をしておけば、緊張しなくなるとは言わないけど、ちょっとはマシになると思うよ!」

「なるほど!そんな気がしてきました!頑張ります!」


シュンとしていた本田さんがもう元気になっている。

切り替えが早いのも本田さんの長所の一つだ。




「ありがとうございました!またお越しください!」

「ご馳走さまでした」


ランチを食べ終え、レジで会計を済ませる。

本田さんは半泣きになりながらも、スペシャルデラックス定食を完食していた。

やっぱり若さは凄い。可能性に満ちている。

店から出ると、本田さんが千円札を差し出してきた。


「何?」

「なけなしの千円です…。1番高いのを頼んだので!」

「いや、いいよ。今日は奢るよ」

「なけなしの千円はいらないですか?」

「いらん!そもそも足りてないし!」

「えへへ。ありがとうございます!ご馳走さまでーす!」


今日はもう予定はないので帰社しよう。

お読みいただき、ありがとうございます!

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