4本目×レポート作成
「真中くん、たばこ行きましょう!」
朝のミーティングが終わり、小山さんにたばこに誘われる。
会社の入っているビルが全面禁煙になったので、ビルの外にある簡易的な喫煙所まで行かないといけない。
「本田さん、どう?」
「まだ1日しか見てないので、何とも言えないですね」
「2人で楽しそうにしてるの見たけど?」
「明るくて話しやすいってのはありますね。ただ、ちょっとふざけた子ですけど」
「そうなんだ!しっかりしてて、気が強くて、プライドが高そうに見えるのに!」
「小山さんに本田さんの何が分かるんですか?」
「俺、営業だから第一印象で大体どんな人か分かるのよね!ガハハ」
「全部、外れてますよ!だから目標達成できないんですよ!」
「言いすぎだろ!ガハハ」
「事実なので!」
「いいなー。俺もあんな可愛い子の教育係になりたいなー。色々教育してあげるのに!」
「朝からこのおじさんは何を言ってるんですか?」
「可愛いと思わないの?」
「まー綺麗な顔してるとは思いますけど、職場にそういう感情は持ち込まないので」
「真中くん彼女いないから別によくない?長いこといないんだよね?」
「この会社に入ってからいないんで、もう4年くらいになりますね…」
今の会社に入ってからいないということにしているが、本当は社会人になってからずっと彼女がいない。
社会人になって、もう11年になる。
学生の頃は彼女もいたし、どちらかというとモテる方だった。
でも、社会人になって変わってしまった。
そして、年齢を重ねることで、状況はさらに悪化した。
10年以上も彼女がいないと言うと引かれそうなので、今の会社に入ってからいないと言うようにしている。
「よし!明日、訪問するクライアントのレポートを作ろうか」
「レポートってカッコいいですね!お願いします!」
今日は本田さんにレポートの作り方を教えることにした。
Webマーケティングのコンサルは、月に1度、前月の成果や今後の施策をまとめたレポートを作成し、クライアント先を訪問する。
レポートはクライアントの事業規模や、予算の大きさによって内容やボリュームに違いがある。
明日、訪問するクライアントは、広告の運用だけを任されていて、予算もそれほど大きくないので、作り方を教えるのにちょうどいい。
「レポートの内容はクライアントによって違うけど、広告の運用だけを任されてるところは成果報告と改善策、Webマーケティング全体を見てるところはサイト全体の解析とか広告以外の流入経路の分析が入ってくるかな」
「い、言ってることの半分も分かりません…」
「明日行くところは広告の運用だけで、規模も大きくないからここからやっていこう!」
「はい!頑張ります!」
「資料はパワーポとエクセールで作るけど大丈夫?」
「大丈夫です!というと嘘になりますね!」
「まー使えないの知ってるけど…」
「そうなんですよ!困ったやつですね!えへへ」
「他人事か!」
まさかパワーポやエクセールの使い方から教えないといけないとは…。
でも、不思議とイライラしたり、面倒くさくて嫌になったりすることはない。
明るくて、表情豊かで、少しふざけた本田さんのペースに巻き込まれている。
愛嬌があって人に好かれやすいという長所は、これから仕事をするうえで武器になる。
クライアントの前に出ても長所を活かせるようにサポートしてあげたい。
「まず、先月のレポートのファイルのコピーを作ります。やり方わかる?」
「コピーくらいはできますよ!…できました!」
「次はファイル名を今月に変えます。やり方わかる?」
「名前ぐらい変えれますよ!バカにしてます?」
「よく気づいたな!ファイルは開ける?」
「開けますよ!あの本田さんですよ?…ほら、できました!」
「よくできたな!」
「これで完成ですか?」
「そんな訳ないだろ!」
「ですよね!えへへ」
明日、訪問するクライアントのレポートが完成した。
一人でやれば2時間ほどで終わるのに、本田さんに説明しながらだと5時間もかかった。
本田さんにレポートの印刷を頼んだが、プリンターを使えているかも怪しい…。
「すみません。なぜか全部白黒になりました…」
やっぱり…。
でも、今日はもう教える気力がない…。
人に教えるのは、かなりエネルギーを使うことが分かった。
もう、俺のライフは0だ。
「分かった!俺がやっとくわ!」
「えっ、やり方を教えてくれないんですか?見捨てるんですか?」
「今日はもう疲れた!また今度ね!」
「ぶーぶー」
「ブーイングするな!」
「すみません!アメリカに留学していた時のクセで!」
「アメリカかぶれが!」
「えへへ」
「明日の訪問は一緒に行くから準備しといてね」
「場所はどこですか?」
「堺東」
「結構遠いですよね?ということは、お菓子いりますよね?」
「遠足か!」
明日は本田さんにとって初めてのクライアント訪問だが、本田さんには全く緊張感がない。
明日は同席してもらうだけなので、問題ないと言えば問題ないのだが…。
「このお菓子、食べたことあります?明日、買っていきましょう!」
本田さんがスマホの画面を見せてくるが、見る気にならないし、突っ込むのも面倒くさい…。
もう、俺のライフは0だ。
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