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3本目×デジタルネイティブ

「ほ、本田と申します!よろしくお願いします!」

「真中です。よろしくお願いします。隣の席が空いてるからここ使って」


本田さんの席をどうするか聞いていなかったが、隣の席が空いているのでここでいいだろう。


「ノートパソコンはもう貰った?」

「は、はい!あります!」

「置いてあるモニター使っていいから、ノートパソコンと繋いどいて」

「は、はい!」


席の準備をしてもらっている間に、何をやってもらうかを考えないと…。

でも、午前中は溜まっている仕事を片付けないといけないし…。

小山さんと下らない話をしている場合ではなかった。あの窓際め!


「あれ?んん?おかしいな…」


隣を見ると、本田さんがモニターとパソコンを繋ぐのに苦戦している。

ケーブルを差し込むだけなのに、そこから教えないといけないのか…。

あー、やっぱり面倒くさいな…。


「差すとこ違ってない?」

「えっ?違いますか?」

「こっちじゃない?」

「あー!ほんとだ!差さりました!」

「よかった。もしかして緊張してる?」

「少し…、してます。ちゃんとできるか不安で…」


自己紹介の時と同じように、本田さんの声が少し上ずっている。

大人っぽくて、しっかりして見えるが、不安そうな表情はまだ少し子供で、その表情を見て微笑ましく思った。

そういえば、俺も社会人になりたての頃は、年上の人とどう接すればいいのか、自分に仕事が務まるのか、色々と不安を抱えていたような気がする。

面倒くさいと自分のことしか考えていなかったけど、もっとちゃんと本田さんのことを見てあげよう。


「最初は上手くできなかったり、失敗するかもしれないけど、それを次に繋げようとしてくれれば怒ることはないよ。それに俺はフランクに接したいタイプだから、そんなに緊張しなくても大丈夫!」

「はい!ありがとうございます!」


うん。何だか凄く教育係っぽいな。

俺も何だかんだ経験を積んできているので、その気になれば新卒の1人や2人くらい立派な社会人に育てられるはず!


「パソコンの電源ってどうやって入れるんですか?」


えっ?そこから教えないといけないのか?


「で、電源はこのボタンかな…」

「ほんとだ!ありがとうございます!」


本田さんが嬉しそうにパチパチと拍手をしている。

アホなのだろうか…。

いやいや、そんな風に思ったらダメだ!

新卒だから分からなくて当たり前だ!きっとそうだ!

そういえば、最近の子はパソコンを使ったことがないと聞いたことがある。


「本田さんはパソコン苦手なの?」

「得意ではないですね」

「エクセールとかパワーポは使ったことある?」

「ワードーならあります!」

「ワードーは使わないかな…。大学で資料作ったりしなかったの?」

「私が紙に絵を書いて、それを友達に渡して作ってもらってました!」

「絵とは?」

「グラフみたいなのです!」


これはかなり大変になりそうだ…。

なぜ、グラフを手書きしていたやつが、IT系の会社に入ろうと思ったんだ?

いやいや、そんな風に思ったらダメだ!

最近の子はデジタルネイティブだから、グラフを手書きで作るのが逆に新鮮なんだ!

エモいってやつだ…。きっとそうだ…。




「そろそろお昼にしようか」

「はい!」

「うちの部署は自分のタイミングで昼休みを取っていいって聞いてる?」

「知らないです。新人研修の時は決まった時間に取っていたので」

「うちの部署は外出することも多いから、時間が決まってると取れなかったりするのよ。今から1時間、休憩取って」

「はい!真中さんは?」

「俺はまだ仕事があるから、もうちょっと後にするわ」


結局、午前中は本田さんに大まかな業務の流れを説明していたので、溜まっている仕事を全く片付けられていない。

本田さんが休憩に行っている間に全力で仕事を片付けて、午後からはWebマーケティングの基礎を説明しよう。




「戻りました!」

「よし!午後からはWebマーケティングの基本や勉強してほしいことを説明するね」

「いよいよ本番ですね!お願いします!」

「まだ全然本番ではないけどね。そういえば新人研修は何をやったの?マーケティングのこともやった?」

「新人研修は、名刺交換のやり方とか、電話の取り方とか、そういうのでした。マーケティングは、本を渡されて読むように言われてます」

「で、読んだの?」

「す、少しずつ、読んでます…」

「何ページ読んだ?」

「ひ、表紙…」


担当してまだ半日だけど、本田さんのことが少しずつ分かってきた。

人前が苦手なようだが、特に人見知りする訳ではなく、とても明るくて陽気だ。

そして、何だろう…、全体的に少しふざけている…。

部長が注意してと言っていたのは、恐らくこの”ふざけた性格”のことだろう。

でも、これくらいならそれほど問題ではない。




「今日はこれくらいにしとこうか」

「はい!」

「今日教えたことを簡単に要約して言ってみて」

「え、えーと…何とかの…ロジックツリーとか…何とかのファネル…とかですか?」

「CPCってどういう意味か覚えてる?」

「ひ、表示回数…ですか?」

「残念!平均クリック単価でした!この辺の用語は難しいから、少しずつ覚えていってね」

「横文字、苦手なんですよね…」

「あれ?外大じゃなかった?」

「そうですけど、また違うんですよ!これは英語を話せる人間にしか分からないですね!」

「生意気だな!」


この業界は横文字を多用する。

俺も最初は”日本語で言えよ!”とイライラした。

でも、この辺はやっているうちに覚えていくので問題ないだろう。


「神戸から通ってるんだっけ?」

「そうなんです!遠くて辛いです」

「電車でWebマーケティングの勉強できるね!」

「そ、そうですね!」

「嘘つきめ!絶対やらないだろ?」

「うん!」

「う、うん!?」

「あっ!はいでした!」

「神戸のどこ?」

「垂水って分かりますか?」

「遠いな!1時間以上かかりそう…。早く帰り!」

「はい!今日はありがとうございました!お先に失礼します!」

「気をつけてね!」

「うん!」


本田さんが笑顔で手を振りながら帰っていく。

教育係1日目。

俺はもう舐められているかもしれない…。

お読みいただき、ありがとうございます!

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