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20本目×占い

本田さんと2人でクライアント先を訪問し、会社の最寄り駅である大阪駅に戻ってきた。

時計を見ると、時刻は18時13分。

会社の定時である18時を過ぎている。


「駅まで戻ってきたけど、もう定時を過ぎてるし直帰にしようか」

「そうしましょう!この後、何か予定ありますか?」

「別にないけど?」

「なら、ここ行きませんか?」


本田さんはスマホを取り出し、画面をこちらに向けてきた。


“梅田で人気の占い・うらNOWゾー。大阪駅から徒歩5分”


う、占い…?

全く興味がないので、正直、行きたくない…。


「何で占い?」

「友達が当たるって言ってたんですよ!私も占ってほしくて」

「何で俺?」

「な、何でってことはないですけど、私、占いに行ったことなくて…。真中さんが付いてきてくれると心強いなと…」

「保護者か!」


先に予定は無いと言ってしまったので、どう断ればいいのか分からない。

でも、待てよ…。

もう、定時を過ぎているので、ここからは仕事ではなくプライベートだ。

ということは、”2人で占いに行く=デート”ってことじゃないか!


「べ、別に付いて行ってもいいよ!」

「本当ですか!やったー!」




当たると評判の”うらNOWゾー”に到着した。

店の壁やドアは濃い紫色で、黄色の文字で”占”と書かれている。

さらに、お札のようなものが大量に貼られている。


「めちゃくちゃ怪しいですね…」


行きたいと言い出した本田さんですら引いている。

初めての占いなのに、ここでいいのだろうか?


「どうする?やめとくか?」

「せっかく来たので行きます!占いってこういうもんですよ!た、たぶん…」


本田さんが恐る恐る紫色のドアを開ける。


“カァー、カァー、カァー”


ドアを開けた瞬間、カラスの鳴き声のドアアラームが鳴り響いた。

こんなドアアラーム、どこに売っているんだ?

店の中は、薄暗い照明に、円グラフのようなものが描かれた壁、テーブルの上には水晶やカードが並べられている。


「あら、いらっしゃい!」


店の奥から、チリチリパーマのショートカット、真っ赤な口紅、真珠のネックレス、ヒョウ柄のトップスという、”ザ・大阪のおばちゃん”が現れた。

店の雰囲気と完全にミスマッチだが、このおばちゃんが占い師なのだろうか。


「ほら!突っ立てないでそこ座り!」


おばちゃんに促され、テーブルの前にある椅子に腰掛ける。

すると、テーブルの向かいに、おばちゃんが座った。

やはりこのおばちゃんが占い師のようだ…。


「で、今日はどうしたん?相性占いか?」

「ち、違います!普通に占ってほしくて!」

「何や、違うんか!それにしてもあなたべっぴんさんやねー!おばちゃんの若い頃にそっくりや!アハハ!」

「あ、ありがとうございます…」

「あなた!名前は?」

「ほ、本田です…」

「下は?」

「舞香です」

「誕生日は何月?」

「じ、10月です…」

「何日や?」

「7日です」

「天秤座やな!」

「はい…」


おばちゃんが凄い勢いで、本田さんに質問をしていく。

本田さんはずっと圧倒されている。

初めての占いでこれはトラウマにならないだろうか…。


「で、あんたや!」

「えっ?」

「えっ?ちゃうねん!名前や!名前!」

「真中です…」

「下もや!」

「真中厚です…」

「何月生まれや?」

「2月…」

「何日かも言わんかい!」

「7日です…」

「水瓶座やないか!」


おばちゃんの勢いに圧倒され、”俺は付き添いです”と言いそびれてしまう。

それにしても、俺への当たりが強すぎないか?

もう、質問に答えてしまったので、俺も占ってもらうしかなさそうだ…。


「まず本田さん、あなたからね」

「はい…」

「あなた、めちゃくちゃ美人で、生まれた瞬間からチヤホヤされてきたやろ?」

「いえ、そんなことは…」

「謙遜はええねん!めちゃくちゃモテるけど、あなた自身は恋愛に疎すぎるかもね」

「は、はい…」

「恋愛感情っていうのがよく分からへん」

「そうですね…。実は今まで誰ともお付き合いしたことがなくて…」


えっ?えぇーーーー!!

そそ、そうだったのか…。

何かいきなり凄い話が出てきたぞ。

こ、これは、俺が聞いてもいいのか?

本田さんに彼氏がいないのは知っていた。

でも、これだけ美人で、性格も可愛くて、モデルまでやっていたような子だから、過去には超ハイスペックな男と付き合っていたのだろうと勝手に思っていた。

そして、そんな超ハイスペック男と比べたら、俺なんて勝ち目がないとコンプレックスを抱いていた。

何だ…、そうだったのか…。


「でも、最近、変わってきたんとちゃう?」

「そ、それは…」

「気になる人ができたやろ?もー、ええねー若い子は!」


えっ?えぇーーーー!!

誰だ?誰だ?誰だ?

めちゃくちゃ気になる…。

というか、本当にこれは俺が聞いてもいいやつなのか?


「で、次はあんたや!真中さんやったか?」

「は、はい!」


もっと本田さんの占いを聞きたいのに、おばちゃんは俺の占いを始めようとしている。


「あんたも意外とモテてきたんやな…。信じられへんわ!」

「はぁ?」


何だ?この失礼なババアは?

俺への当たりが強すぎるだろ…。


「でも20代に入ったくらい?から狂い始めたな!もう最近はサッパリやろ?アハハ!」

「そ、そうですね…。アハハ…」


ぐぬぬ…。

当たっているので言い返せない…。


「へぇー、あんたも最近、気になる人ができたやろ?生意気やな!」

「い、いやー、そ、そんなことは…」

「あっ!そういうことか!」


おばちゃんが何かに気づき、俺と本田さんを交互に目で確認する。

何が”そういうこと”なのだろうか?


「んー、まぁ良いんか…。せやな!大丈夫や!」

「あの…、何が大丈夫なんでしょうか?」


言っていることが、何も分からない…。

占いってこういう感じなのか?


「大丈夫や!そのうち分かるわ!」


えぇ…、めちゃくちゃ気になるんですが…。


「もう時間やな!2人で8,000円な!」


た、高い…。

占いの相場を知らないが、まだ10分くらいしか話をしていないぞ…。


「私、払いますね」


本田さんが鞄から財布を取り出そうとする。


「いいよ!俺が払うわ!俺も占ってもらったし…」

「いいです!いいです!付いてきてもらったので!」

「払うって言ってんねんから男に払わし!」


おばちゃんが本田さんを一喝する。

いや…、払うつもりだが、何だかモヤモヤする…。


「ありがとう!また来てな!」


お会計を済ませ、店の外に出る。

疲れた…。


「ありがとうございます。払ってもらって…」

「いいよ!で、どうだった?初めての占いは?」

「何か濃かったですね。でも、当たってたような気がします!」

「そう、なら良かったね!」

「あの…、へ、変ですかね…?誰とも、お、お付き合いしたことないのって…」

「べ、別にいいんじゃない?ほほ、本田さんが、つ、付き合いたいと思う人が現れるまで…。じ、自分のタイミングで、いいんじゃないかな…」


おばちゃんのキャラは濃かったが、本田さんのことをより知れたので、占いに付いてきてよかった。

付き合ったことがないことを、少し気にしている本田さんも可愛い。


「ありがとうございます!あっ、このこと誰にも言わないでくださいね!」

「言わないけど、俺は聞いてよかったの?」

「ま、真中さんはいいんです!というか…、知ってほしかったので…」

「ふ、ふーん…」


知ってほしかった?どういう意味だろう?

知ったことで、俺が勝手に抱いていたコンプレックスは無くなった。

でも、俺に知られても構わないというのは、そもそも俺はそういう対象ではないということか?

うぅ…、そう意味だったらどうしよう…。

もう一度、占いに行って相談してこようかな。

お読みいただき、ありがとうございます!

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